S&P 500月例レポート(2019年4月配信)<後編>
●注目点
・強気相場は2019年3月9日に10周年を迎え、S&P 500指数の過去最長の強気相場となりました(1990~2000年は113カ月)。S&P 500指数の10年間の上昇率は312%(年率15.24%)、配当込みのトータル・リターンは408%(年率17.68%)となりました。これは仮に10年前に1万ドル投資した場合、現時点では4万0,832ドルになる計算です。上昇率が最大だったのは一般消費財セクターで、配当込みのトータル・リターンは712%(同23.32%)、次いで情報技術セクターの615%(同21.76%)でした。パフォーマンス最下位はエネルギーセクターの102%でした(年率では7.31%と1桁にとどまる)。相場上昇に最も大きく貢献したのは予想通りAppleでS&P 500指数の上昇分の3.9%を占め、次いでMicrosoftが2.4%、JPMorgan Chaseが1.9%となりました。4番目は意外にもGeneral Electricの1.7%で、配当が同指数への寄与の多くを占めました。
・トランプ大統領がFRB理事候補に指名したスティーブン・ムーア氏はインタビューで、FRBはただちに政策を転換して0.5%利下げすべきであると述べました。
・166年の歴史を持つジーンズメーカーのLevi Strauss(LEVI)はIPO価格17ドル(仮条件は14~16ドル)、時価総額62億ドルで再上場を果たしました(1971年の上場後、1985年に非公開化)。
・配車サービス大手のLyftは、IPO価格を当初計画の62~68ドルから72ドルに引き上げて上場し、上場初日の終値は78.29ドル、時価総額260億ドルとなりました。報道によると、競合大手のUberは4月のIPOに向けて準備中で、時価総額1,200億ドルでの上場を目指しています。
●利回り、金利、コモディティ
・米国10年国債の利回りは2月末の2.72%から低下して2.41%で月を終えました(2018年末は2.69%、2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。
・英ポンドは2月末の1ポンド=1.3264ドルから1.3081ドルに下落し(同1.2754ドル、同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは2月末の1ユーロ=1.1369ドルから1.1220ドルに下落しました(同1.1461ドル、同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は2月末の1ドル=111.38円から110.82円に上昇し(同109.58円、同112.68円、同117.00円)、人民元は2月末の1ドル=6.6937元から6.7121元に下落しました(同6.8785元、同6.5030元、同6.9448元)。
・原油価格は2月末の1バレル=57.25ドルから上昇して60.20ドルで月を終えました(同45.81ドル、同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は2月末の1ガロン=2.471ドルから2.701ドルに上昇して月末を迎えました(同2.358ドル、同2.589ドル、同2.364ドル)。
・金価格は2月末の1トロイオンス=1,314.70ドルから1,296.90ドルに下落して月を終えました(同1,284.70ドル、同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。
・VIX恐怖指数は2月末の14.78から低下して13.71で月末を迎えました。月中の最高は18.33、最低は12.37でした(同25.42、同11.05、同14.04)。
●世界の株式市場
・1月の7.97%の大幅上昇(2018年12月は7.36%の大幅下落)を受けて、2月に2.59%の上昇となった後、3月は世界の株式市場にとって難しい月となりましたが、0.78%と若干ながら上昇を記録しました。米国市場が引き続きアウトパフォームし、米国市場の1.28%上昇を除外すると、グローバル市場は0.21%の上昇でした。年初来の3カ月間では、グローバル市場は11.62%の上昇となり、米国市場の13.47%上昇を除外すると、9.58%の上昇でした。過去1年間では、グローバル市場は0.23%下落し、米国の6.63%の上昇を除けば、7.19%の下落でした。より長期的な指標は米国がアウトパフォームしていることを引き続き示しており、過去2年間のグローバル市場は米国(19.14%上昇)を含めれば12.75%の上昇、米国を除くと6.13%の上昇、過去3年間では27.61%の上昇、米国(37.84%上昇)を除くと17.13%の上昇でした。
・3月にS&Pグローバル総合指数の時価総額は3,590億ドル増加しました(2月は1兆3,020億ドル増、1月は3兆7,680億ドル増)。米国以外の市場の時価総額は3月に1,750億ドル増加し(同4,330億ドル増、同1兆6,390億ドル増)、米国市場は1,840億ドル増加しました(同8,700億ドル増、同2兆1,290億ドル増)。
・3月のまとめ
○世界の株式市場は3月に0.78%上昇しました。米国市場は1.28%上昇し、米国を除く世界市場は0.21%上昇しました。年初来の過去3カ月では世界市場は11.62%上昇、米国の13.47%の上昇を除くと、9.58%上昇しました。過去1年間でみると、世界市場は0.23%下落し、米国の6.63%上昇を除くと、7.19%の下落となりました。
○新興国市場は3月に1.56%上昇し、年初来の過去3カ月では10.06%上昇、過去1年間では8.37%の下落となりました。
○先進国市場は3月に0.69%上昇(米国を除くと0.17%下落)、年初来の過去3カ月間では11.80%の上昇(同9.43%上昇)、そして過去1年間では0.75%の上昇(同6.90%下落)となっています。
・11セクター中8セクターが上昇する中、セクター間のリターンのばらつきは拡大しました(2月は6セクターが上昇、1月は全11セクターが上昇、12月は全11セクターが下落)。パフォーマンスが最高のセクター(不動産セクター、3.80%上昇)と最低のセクター(金融セクター、2.58%下落)の騰落率の差は6.38%で(過去1年間の平均は6.83%)、2月の6.35%から小幅に拡大しました。年初来の騰落率の差は11.54%(2月は8.21%)でした。
・新興国市場は2月の0.60%上昇に続き3月も1.56%上昇しました(1月は7.72%の上昇)。年初来の過去3カ月間のパフォーマンスは10.06%の上昇、過去1年間では8.37%の下落となっています。過去2年間の騰落率は10.50%の上昇、過去3年間では27.33%の上昇となりました。
○3月は23市場のうち11市場が上昇しました。2月は10市場が上昇していました(1月は23市場全て)。上昇率が最も高かったのはインドで3月に10.39%上昇しました。年初来では6.48%上昇、過去1年間では2.13%上昇しています。新たに新興国市場指数に組み込まれたサウジアラビアが2番目で、3月は3.76%上昇、年初来は13.15%上昇、過去1年間では10.72%の上昇となりました。パフォーマンスが最低だったのはトルコで、3月は15.60%下落しました。年初来では3.11%の下落、過去1年間では42.31%の下落となっています。次いでパフォーマンスが振るわなかったのはチリで、3月は4.66%下落しました。年初来では4.19%上昇していますが、過去1年間では17.58%の下落となっています。
・先進国市場は3月に全体で0.69%上昇し、米国を除く先進国市場のパフォーマンスは0.17%の下落となりました。3月は25市場中13市場が上昇し、2月の22市場を下回りました(1月は25市場全てが上昇)。
○先進国市場は2月の2.48%上昇に続き3月も0.69%上昇しました(1月は8.00%上昇)。米国を除くと、先進国市場は3月に0.17%下落しました(2月は2.13%上昇、1月は7.33%上昇)。年初来の過去3カ月間のパフォーマンスは11.80%上昇(米国を除くと9.43%上昇)、過去1年間では0.75%の上昇となりました(同6.90%下落)。上昇率が最も高かったのはニュージーランドで3月に4.60%上昇し、年初来で12.89%上昇、過去1年間で8.44%の上昇となっています。第2位はベルギーで3月に3.21%上昇し、年初来では15.32%上昇しましたが、過去1年間では16.66%下落しています。パフォーマンスが最も悪かったのはルクセンブルグで3月は12.16%下落しました。年初来では4.82%下落、過去1年間では22.28%の下落となっています。次いで振るわなかったのがフィンランドで3月に3.62%下落しました。年初来では5.48%上昇していますが、過去1年間では10.73%下落しています。注目すべき点として、英国は0.42%上昇(年初来では11.33%上昇)、カナダは0.99%下落(同11.49%上昇)、ドイツは1.45%下落(同6.71%上昇)、日本は0.30%下落(同5.69%上昇)しました。
●S&P 500指数
S&P 500指数は3月も最高値更新に向けて上昇を続け、12月の大幅下落の後、3カ月連続での上昇となりました(楽観的になれなければ、ショートを推奨します)。同指数は1月に7.87%上昇して弱気相場から抜け出し、2月の2.97%上昇後、3月も1.79%とまずまずの上昇を記録しました。第1四半期の上昇率は13.07%となり、2018年第4四半期に付けた13.97%の大幅下落分を完全に取り戻すまであと0.9%に迫りました。こうしたことを背景に、バーでの会話も2018年12月の「弱気筋がやって来る」から、2019年3月は「一杯奢ろう」に反転しましたが、その変化は概ね市場の認識によるものでした。この間、S&P 500指数は日中ベースで一時20.21%下落し、公式の弱気相場(終値のみに基づく)まで僅かのところに達した後、今度は最高値更新まで3.29%の水準に戻しました。従来の市場の認識は、金利上昇、企業業績の悪化、経済成長の鈍化、貿易摩擦、さらに欧州が再び景気後退入りの可能性を背景に、市場は下落に向かっているというものでした。これに対して新たな見方は、金利は低位にとどまる、企業の増益率は受け入れ可能な1桁台後半が期待され、経済成長は3%程度(上振れより下振れの可能性が高い)を維持し、貿易問題は(最終的に)好感されないものの許容できる内容で合意し解決される――というものです。すなわち、市場を覆っていた不透明感は、景気は緩やかなペースながらも概ね上昇を維持するとの見方で一掃されました。3月の取引高はボラティリティと同様に拡大し、全般的な買い意欲が見られない中で選別色が強まりました。強気相場は10周年を迎え(2019年3月9日)、FOMCが2019年に利上げを行わないことを確認し(2020年に1回)、利下げへの政策転換(1回の利下げ)をめぐる議論がトランプ大統領によるFRB人事の意向を通じて表面化する中、その後も上昇を続けました。市場は概ね基調にある米国経済に注目し、米経済は依然として欧州よりも好調です(両者はなお密接に結びついています)。米中貿易協議は継続中で(3月末に北京で開催された閣僚級協議に続き、4月第1週にはワシントンで再開される予定)、市場では引き続き最終的に合意すると予想されています(ただし、輸出入の動向と今後予想される展開から、経済指標には多少の混乱が表れています)。第1四半期の上昇が昨年第4四半期の下落をほぼ打ち消し、経済が許容可能なペース(予想よりは緩やか)で推移していることから、市場は決算発表シーズンに備えつつあります。現時点で、第1四半期の利益予想は昨年末の水準から7.1%引き下げられ、前年比1%未満の増益が予想されることを背景に、未達に終わった場合には前年比で減益になることが見込まれます。市場は、第1四半期実績と2019年通期ガイダンスから、1桁台後半の増益率が続くとの見通しが裏付けられることを求めており、裏付けされれば現在のバリュエーションは正当化されます。裏付けされない場合には市場の認識は変化し、株式市場は第4四半期同様に下方圧力にさらされる恐れがあります。
S&P 500指数は2月終値の2,784.49から1.79%上昇し(配当込みのトータル・リターンはプラス1.94%)、2,834.40で3月を終えました。2月は2.97%の上昇でした(同プラス3.21%)。同指数は年初来(第1四半期)では13.07%(同プラス13.65%)上昇し、2018年9月20日の史上最高値まであと3.29%の水準に迫っています。過去1年間では7.33%上昇(同9.50%)しました。
ダウ平均は2月末の2万5,916.00ドルから0.05%上昇し(同プラス0.17%)、2万5,928.68ドルで3月を終えました。2月は3.57%の上昇(同プラス4.03%)でした。同指数は年初来では11.15%(同プラス11.81%)、過去1年間では7.57%(同プラス10.08%)上昇しています。
S&P 500指数の日中ボラティリティ(日中の高値と安値の差)は2月の0.69%から3月は0.92%に上昇し、年初来では0.97%となりました。同指標は、2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以降の最低、平均は1.43%)でした。出来高は2月の前月比4%減の後1%減少し(営業日数調整後)、前年同月比では1%増でした。1%以上変動した日数は増加し、2月の19営業日中2日(2日とも上昇)、1月の21営業日中6日(上昇が4日、下落が2日。そのうち3%の上昇が1日、2%の下落が1日)に対し、21営業日中3日(上昇が2日、下落が1日)となりました。
3月の月間の値幅(高値と安値の差)は2月の4.91%(1月は10.84%、12月は19.33%)から5.07%に拡大しましたが、1年平均の7.36%、10年平均の6.32%を下回りました。
セクター間のリターンのばらつきに変化はなく、1月、2月と11セクター全てが上昇したのに対し(12月は11セクター全てが下落)、3月は11セクター中9セクターが上昇しました。パフォーマンスが最高のセクター(情報技術、4.75%上昇)と最低のセクター(金融、2.75%下落)の騰落率の差は7.50%と、2月の5.87%(1月は7.99%)から拡大しました。この騰落率の差は年初来(第1四半期)では13.25%、2018年通年では25.19%でした。
3月に騰落率トップとなったのは、2月の6.63%上昇後(1月は6.88%上昇)4.75%上昇した情報技術セクターでした。同セクターは年初来でも19.37%上昇と騰落率トップで、大統領選以降では62.48%上昇(騰落率首位)しています。2位は4.48%上昇した不動産で、同セクターは年初来では16.64%上昇しています。消費関連セクターはS&P 500指数をアウトパフォームし、一般消費財が3.94%上昇(年初来では15.32%上昇)、生活必需品が3.67%上昇(同11.16%上昇)となりました。金融は低金利の長期化が利益率を損なうとの見方から、2.75%の下落で騰落率最下位となりました。同セクターは年初来では7.90%上昇しています(2018年は14.67%下落)。資本財・サービスは1.24%の下落(Boeingの13.31%安が主導)と低調でしたが、年初来では16.64%上昇しています。
値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差は再び縮小したものの、引き続き値上がり銘柄数が上回りました。3月の値上がり銘柄数は305銘柄(平均上昇率は4.28%)と、2月の382銘柄、1月の472銘柄(12月はわずか14銘柄)を下回り、そのうち20銘柄が10%以上上昇し(平均上昇率は12.77%、2月は123銘柄、1月は250銘柄)、25%以上上昇した銘柄はありませんでした(2月は2銘柄)。一方、値下がり銘柄数は200銘柄(平均下落率は4.86%)と、2月の123銘柄、1月の33銘柄(12月は491銘柄)から増加し、そのうち22銘柄(平均下落率は13.62%、2月の33銘柄から減少、1月は5銘柄)が10%以上下落しました。年初来では、460銘柄(平均上昇率は16.53%、2月は465銘柄)が上昇し、そのうち322銘柄(2月は324銘柄)が10%以上、78銘柄(同59銘柄)が25%以上上昇した一方、43銘柄(同40銘柄)が下落し、そのうち12銘柄(同9銘柄)が10%以上下落し、25%以上下落した銘柄はありませんでした(同ゼロ)。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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