【Alox分析】今年の倒産を予測する〔2019年〕

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最新投稿日時:2019/02/06 13:45 - 「【Alox分析】今年の倒産を予測する〔2019年〕」(みんかぶ株式コラム)

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【Alox分析】今年の倒産を予測する〔2019年〕

著者:塙 大輔
投稿:2019/02/06 13:45

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【Alox分析】今年の倒産を予測する〔2019年〕
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例年通り、2018年の倒産動向を振り返り、2019年の倒産について予測する。

【2018年の倒産件数(上場企業)】

倒産件数:1社〔2017年:2社〕 <前年比0.5倍>

直近10年間の上場企業の倒産件数と日経平均株価の推移は、下記の通りである。

『上場倒産件数と日経平均株価【大納会終値】の推移』
 

 
≪上場企業の倒産件数と大納会終値の棒グラフ≫
 

 
http://alox.jp/dcms_media/other/190118_kensuu.pdf

≪上場企業の倒産件数と大納会終値の折れ線グラフ≫
 

 
http://alox.jp/dcms_media/other/190118_relation.pdf

昨年の上場企業の倒産は、日本海洋掘削【東証1部】のみである。
倒産のカテゴリーには含まれないが、田淵電機【東証1部】が事業再生ADRを申請したことは付記しておく。

【2018年の倒産件数(全企業)】
倒産件数:8,235社    〔2017年:8,405社〕   <前年比0.98倍>
負債総額:1兆4,854億円 〔2017年:3兆1,676億円〕<前年比0.47倍>

全企業の倒産件数は、5年連続で10,000件以下である。
昨年と同様に、今年もほぼ前年と同じ件数であり、倒産件数は“底を打った”。

≪2009年~2018年倒産件数(全企業と上場企業)の棒グラフ≫
 

 
http://alox.jp/dcms_media/other/190118_stockkensuu.pdf

【今年は?】

上場企業、全企業の倒産件数は増加する。

【重大イベントカレンダー】

今年の政治経済にインパクトがあるイベントを列挙した。
このイベント情報等を踏まえて、倒産件数に影響のある要因を〔ネガティブ〕と〔ポジティブ〕に分けて、記載する。

時期   イベント
2月末日 米中の貿易戦争の「一時休戦」期限
3月29日 英国のEU離脱【Brexit】
4月30日 天皇退位
5月 1日 新天皇即位、元号改正
5月   欧州議会選挙
4月 1日 働き方改革関連法案の施行
4月   統一地方選
7月   参議院選挙
5月23日 欧州議会選挙
6月 7日 FIFA女子ワールドカップ
6月28日 G20in大阪
9月20日 ラグビーワールドカップ日本大会
10月 1日 消費税増税(8%→10%)
10月31日 ドラギECB総裁の任期終了

〔ネガティブ要因〕
(1)隠れ不良債権の顕在化

昨年の日本海洋掘削、今年のシベールのように、上場企業にさえ、銀行は支援する余力がなくなっている。

何が原因で、銀行の体力を削いでいるのであろうか?
つまり、収益を圧迫する要因は何か?

それは、不良債権の増加である。

一般社団法人全国地方銀行協会によると、不良債権処理額の増加により、地方銀行の経常利益は-26.4%(-1,752億円)となったという。
(参照元:一般社団法人全国地方銀行協会
地方銀行2018年度中間決算の概要(2018年12月12日公表)
https://www.chiginkyo.or.jp/app/contents.php?category_id=7#link47

それでは、なぜ不良債権が増えたのか?
それは、悪法として著名な中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)の影響だ。

本法の実施と同時に、金融庁の政策方針は転換された。

極端に言えば、借入金の返済の延期(リスケ)を依頼する企業を破綻懸念先へ格付変更する必要がなく、貸倒引当金を計上する必要がなくなったのである。

金融機関は、リスケの申し込みをほとんど受け入れた。
その実行率は90%以上である。

しかし、時代が変わった。
人口減少、少子高齢化、日本銀行のマイナス金利で体力は削がれ、金融機関の合従連衡が日常茶飯事となった。

そして、金融機関は融資先の選別を中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)の施行前の水準に戻しつつある。

その結果が日本海洋掘削であり、シベールの倒産である。

中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)を利用した企業は、約40万社と推計されている。
これらの企業は、延命しているだけであり、経営改善がなされるケースは極めて稀だ。

40万社の倒産予備軍は、キッカケがあれば、「ドバッ」と倒産する。
今年は、そのキッカケとなりうる事象に事欠かない。

(2)米中の新冷戦
2019年1月17日、日本電産は2019年3月期の業績予想の下方修正を発表した。
同日の会見において、日本電産の永守会長は、「これまでの長い経営経験でも見たことがないほどの落ち込みだ」と、売上が急減していることを明かした。

米中の貿易摩擦によって、中国経済はトランプ大統領によって「急ブレーキ」を踏まれた状態だ。

日本企業にも甚大な影響をもたらし、日本電産には直撃した。

米国は中国に対して、対米貿易黒字だけではなく、知的財産権の侵害、技術移転の強要に対する是正を求めている。

多くの米国人は、ペンス米副大統領が演説にある通り、中国のことを「50年近く米国をだまして技術や資金をもらい、覇権国の地位を奪おうとしていることに気付いた」と感じている。

これらの対中国政策は、米国において支持を得ており、この新冷戦は長引く。

日本でも、中国経済の急減速により、日本電産に限らず、2019年3月期の業績予想を下方修正する企業が出てくるだろう。

中国に部品を供給する日本の製造業への影響は、甚大である。

現役で伝説級の経営者と言うべき日本電産の永守会長は、2018年11月~12月の売上が3割落ちたのを踏まえ、「これがさらに落ち込めばリーマンショックの時と同じだと見る必要がある」と捉えている。

2月末日には、米中貿易戦争の「一時休戦」期限が切れる。
再度、米国が関税等の追加措置を実行すれば、中国は報復する。
この繰り返しが続くほどに、リーマンショック並の危機が訪れる可能性は飛躍的に高まるだろう。

(3)個別企業の経済活動における国家の関与
米国のトランプ大統領は、米国の国益のため、個別企業の経済活動への関与することに躊躇しない。

名指しで個別企業を攻撃することも多い。

ルノーの株主として有名なフランスは、
株主の立場から、民間企業の経営に直接関与している。

反グローバル化とともに、各国が露骨に自国の企業へ有利なルールや枠組み、政策を実行している。

日本政府は、「民間ことは民間で解決するという立場」を崩していないが、日産自動車の経営権争いのように、フランス政府が露骨なまでにルノーの経営に関与している中で、自国の自動車メーカーに対して何らアクションを起こさないことは、お人好しにも程がある。

米国の貿易赤字は、中国、メキシコ、日本がトップ3である。
米中はすでに冷戦であり、米国とメキシコも壁を構築する云々に端を発して関係が悪化した。

日本は、トランプ大統領からの攻撃はやや緩やかだが、自動車関係を中心に取引(ディール)を求められる可能性は高い。

トランプ大統領に長期的な観点はなく、極端な短期志向であるため、将来に禍根が残っても、一時的な成果を得ることを優先する。

そのため、日本がターゲットとなる場合は、確実に痛みを伴う。
自動車関連の貿易で、譲歩を求められる可能性は極めて高い。

(4)英国のEU離脱【Brexit】
最悪のシナリオは、英国がEUから「合意なき離脱」をすることだ。
さすがに、それは発生しないと思われるが、それを望む人も一部おり、否定はできない。

現状は、2018年11月に合意した内容について、英国・EU共に議会の承認を求めるステージである。

いずれにしろ、2019年3月30日の期限(期限延長の可能性もあり)に向けて予断を許さない状況であり、「合意なき離脱」が発生した場合は、マーケットの混乱は避けられない。

一方、EUはEUで試練を迎えている。
各国の強力な指導者の影響力が削がれており、まとまりを欠いている。

ドイツでは、メルケル首相が遅くとも2021年の任期満了で首相退任すると共に、キリスト教民主同盟の党首の辞任を表明した。

「EUの歴史に燦然と輝く巨星が落ちた」と表現しても、全く大袈裟には感じない指導者が退任することの影響は大きい。

さらに、フランスでは、燃料税の引き上げ政策の反発をキッカケにした反政府デモ「黄色いベスト運動」によって、マクロン大統領の支持率は急落している。

2019年5月には欧州議会選挙、10月にはドラギECB総裁の任期満了となる。
英国もEUも、安定という言葉とはほど遠い状況にある。

(5)消費税の増税
リーマンショック級の経済危機がない限り、2019年10月1日には消費税が8%から10%となる。

政府は「増税前の駆け込み需要とその反動」を可能な限り抑えるために、軽減税率、ポイント還元、プレミアム付き商品券、住宅購入支援、自動車購入支援などの経過措置を実施する予定である。

しかし、高額な製品・サービスの駆け込み需要は発生し、日用品のまとめ買いも起こるだろう。

百貨店やスーパーなど7月~9月にかけて、前年比数倍の売上となるが、増税後の10月以降は、反動によって前年割れとなるのが必定だ。

前回の消費増税では、個人消費が前年比年率17%も下落し、増税前の水準に戻るまでに4年の歳月を要している。

消費増税をキッカケにして大不況という可能性は、高い確率で起こり得るリスクである。

(6)手詰まりの日銀
前日銀総裁の白川方明氏は、下記のように述べている。

「日本経済が直面している最大の問題は、高齢化、人口減という事態に対する遅れであり、それが財政、社会保障、地域経済の持続可能性の問題として表れている。
決して一時的なものではない。

当時、日銀が最も求められたのはマネタリーベース(通貨共有量)の大幅な拡大であったが、たとえそれを行って一時的に圧力をかわしても、問題の解決につながらないだけでなく、金融政策が財政の状況によって規定されてしまう財政支配という新たな問題を抱え込むことを懸念した。」
(参照元:週刊エコノミスト『日本経済総予測2019』特別インタビュー 白川方明(前日銀総裁)P90」)

前日銀総裁の白川氏は、真意を説いている。
日本経済が直面している最大の問題は、高齢化、人口減という事態に対する遅れであり、金融緩和で糊口をしのいでも、問題解決にならないと述べている。

それを踏まえると、現状の日銀は緩和緩和でもう打つ手がない。
はっきり言えば、詰んでいる。

たった5年で日本銀行の総資産は、約160兆円から約550兆円へと3倍以上に膨らんだ。
300兆円近くの国債や11兆円のETFを買い込んで、市中へお金をバラまいたが、2%のインフレにほほど遠い。

何らかの経済危機が起きた場合、今の日銀に出来ることは、実効性のある政策は無く、「ご安心ください!」と叫ぶことぐらいしか残されていない。

(7)GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)
アメリカではアマゾンの隆盛により、廃墟モールが続出した。

トヨタ自動車の豊田社長は、「私たちの競争相手はもはや自動車会社だけではなく、グーグルやアップルあるいはフェイスブックといった企業」と述べた。

4社以外にも、マイクロソフトやオラクルなども含めた超IT企業が、従来の製造業、小売業、運送業などの世界を侵食というより、「破壊して創造」している。

トヨタ自動車のような危機感を持たない企業は、数年後に消えていても何ら不思議ではない。

〔ポジティブ!?要因〕
(1)
働き方改革関連法案
2019年4月1日から、働き方改革関連法案
(「残業時間の上限規制」「年5日の有給取得」
「勤務時間インターバル制度」「高度プロフェッショナル制度」)が施行される。

趣旨としては、効率的に業務を行い、
社員や非正規などの立場ではなく、成果によって評価することを促している。

時間をかければ誰でもできる単純労働の報酬は低くなり、場合によってはロボットに代替される。
アマゾン・ゴーのようなITが駆使された無人店舗の広がりは避けられない。

法案施行後、必然的にレジャー関連業界(旅行、スポーツ、趣味など)は潤うのは間違いなく、
働き方改革を促進するRPA、AIなどの技術やサービスは、すでに活況である。

(2)TPP11の発効
昨年末、TPP11(包括的及び先進的なTPP協定:CPTPP)が発効した。

TPP11には、オーストラリア,ブルネイ,カナダ,チリ,日本,マレーシア,メキシコ,ニュージーランド,ペルー,シンガポール,ベトナムの11カ国が参加している。

要は輸出入に伴う関税等の緩和であり、貿易関連業種は恩恵を受ける。
ただ、米国が抜けているため、従前のTPPに比べたら、効果は各段に低い。

(3)東京五輪の前年
2020年の東京五輪の前年のため、建設関連の需要は底堅い。
オリンピックは、スポーツの祭典であると同時に企業によっては、全世界へ自社やサービスをアピールできる機会でもある。

10月中にサービス開始予定の第4のキャリアである楽天モバイルも、そういう狙いがあるかもしれない。

(4)新天皇の即位
新天皇の即位によって、日本の空気は変わるかもしれない。
政治経済への好影響がもたらされる可能性もある。
まず、新天皇が即位のタイミングで、どのような言葉を述べられるのか、必聴である。

【総括】

昨年は、ネガティブなリスクが潜伏していた。
今年は、ネガティブなリスクが顕在化した。
上記の要因や過去からの推移、今年は下記の倒産件数を予想する。

<倒産件数(予測)>
〔上 場〕   →  5(±1)
〔全企業〕   →  8,900(±500)

※ 参照資料
・東京商工リサーチ  『2018年(平成30年)の全国企業倒産8,235件』
・帝国データバンク  『2018年(平成30年) 1月1日~12月31日』
・週刊東洋経済    『2019年大予測』
・日経ビジネス    『徹底予測2019』
・週刊ダイヤモンド  『2019総予測』
・週刊エコノミスト  『世界経済総予測2019]』
・週刊エコノミスト  『日本経済総予測2019]』
・プレジデント    『大予測2019年』

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配信元: みんかぶ株式コラム

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