■会社概要
1. 会社沿革
藤商事<6257>は1958年に、じゃん球遊技機※の製造およびリース販売を目的に創業、業務発展に伴い1966年に株式会社化された。1973年にアレンジボール遊技機市場に参入したのに続き、1989年にパチンコ遊技機、2003年にパチスロ遊技機市場に参入するなど、事業領域を拡大してきた。1992年に開発したアレンジボール「アレジン」が大ヒットしたことで、ブランド力も一気に高まった。
※麻雀牌に見立てた入賞口に球を入れることで当たり役を作り、得点に応じてメダルが払い戻される遊技機。
2007年にはJASDAQ市場に株式上場を果たしており、2013年に従来から取引関係のあったサン電子<6736>と資本業務提携契約を締結、94万株の株式を保有(出資比率4.1%)している。サン電子からは制御基板などの部材を調達しており、同社の主要調達先の1社となっている。
なお、2019年3月期第2四半期より連結決算を開始している。2005年に設立した子会社の(株)JFJでパチンコ機の製造および販売を開始したためだ。JFJを設立した経緯は、パチンコ機の型式試験※において申請のための枠取りが難しい時期があり、競合会社が申請枠を増やすためにサブブランドを相次いで立ち上げたのにならって立ち上げたものだ。ただ、設立後は型式申請を行う機会もなく実質的には休業状態であった。しかし、2018年2月の遊技機規則改正を控えて、旧規則機での型式適合を1機種でも多く取得することを目的にJFJでも複数機種の申請を行ったところ、そのうちの1機種で認定が取れたため、JFJのブランド名で製造および販売を行うことになり、重要性の原則から連結対象子会社となったものである。このため、JFJについては2018年3月期の業績実績はない。
※遊技機を販売するためには、(一財)保安通信協会が実施する型式試験に適合し、各都道府県公安委員会に検定申請を行う必要がある。
2. 事業の特徴
同社の特徴は、新しい遊技の仕組みを発案して業界でいち早く新機種の開発に生かしていることおよび、漫画などのキャラクター版権を利用した機種の開発に積極的に取り組んでいることなどが挙げられる。新しい仕組みとしては、今では一般的となったパチンコ機のチャンスボタンによる演出方法を同社が業界で初めて導入している。また、キャラクター版権を利用した遊技機の開発では、2000年に発売した「CRサンダーバード」や、2007年に発売した「CR宇宙戦艦ヤマト」などが大ヒットした。
ここ数年では「ホラー」系の機種で一定のブランド力を獲得している。2007年に投入した「CRリング」は、発売当初「ホラー」で集客できるかどうか不確かだったこともあり販売台数が1.5万台にとどまったが、導入したホールで女性の固定客ファンが徐々に増加するなど稼働率が高く、徐々に評価が高まった機種と言える。2011年に発売した後継機種「CRリング 呪いの7日間」では増産注文も相次ぎ、シリーズ累計7.0万台を販売する大ヒット機種となっている。現在は「ホラー」系の機種をシリーズ化し、コンスタントに発売するまでになっている。ここ数年はホール側の新機種導入の傾向として、販売実績のあるシリーズ機種の後継機を優先的に導入する傾向が強くなっていることもシリーズ機種が多くなっている背景にある。このため、初代機の販売は伸びにくいが、稼働率が高ければ後継機種以降の販売が見込めることになる。
一方、パチスロ機では2003年に市場に参入以降、苦戦が続いていたが、2014年に発売した「パチスロ リング 呪いの7日間」が2.1万台を販売するヒット商品となり、パチスロ市場においても徐々に実績を積み上げているところである。
2018-19年は業界全体で低調が予想されるものの、魅力ある機種の開発により販売シェア拡大を目指す
3. 業界動向と市場シェア
(1) 業界動向
パチンコ・パチスロ遊技機市場はここ数年、客数の減少を背景とした経営環境の厳しさが続くなかで、ホール数の減少傾向が続いており、2017年末時点では10,596店舗と前期末比3.5%の減少となった。経営力のある大手チェーンが店舗数を伸ばす一方で、中小規模のホールの淘汰が進んでいる。ホール数の減少に伴いパチンコ機の設置台数も2017年末は274万台と前期末比3.0%減となり、また、パチスロ機についてもここ数年は微増傾向にあったが、同0.2%減の168万台とわずかながらも減少に転じている。
業界のトレンドとしては、パチンコ・パチスロ機ともにのめり込み防止のため射幸性を抑える方向で規則改正が実施されており、その影響もあって2018年3月期の業界全体の出荷台数は、パチンコ機が前期比10.1%減の140.8万台、パチスロ機が同31.9%減の60.4万台に落ち込んだ。2018年2月にはのめり込み防止やギャンブル等依存症対策の強化を目的として新たな遊技機規則が施行され、以降は新規則に則った型式試験が行われている。新規則では大当たり時の最大出玉数を従来の約3分の2に抑えるなど、射幸性を抑えた内容となっている。パチスロ機(6号機)では時間当たりの出玉制限はあるものの、開発の自由度が高まったため、ゲーム内容次第では人気機種が登場する可能性もある。ただ、いずれも新たな型式試験基準となっているため、適合率は従来と比べて一時的に低くなっているようで、適合率の改善も各社の今後の課題となっている。
なお、新規則が施行された2月1日以前に型式試験を申請し、適合を受けた旧規則機については現在も販売は可能なため、2019年3月期以降も各メーカーが保有する旧規則機の販売が続くことになるが、多くの旧規則機のホールでの設置期限は2021年1月末までとなっているため、高稼働でホールにとって収益力の高い人気機種についてはできるだけリプレースせずに設置期間を延命させる傾向になると予想される。このため、2018年から2019年はリプレース需要が例年よりも低調となり、パチンコ機・パチスロ機の出荷台数も2018年3月期の水準と比較して落ち込むことが予想される。とはいえ、ホール側も2021年1月末までには旧規則機をすべて撤去する必要があるため、2020年には出荷台数も回復に転じることが予想される。
(2) 業界シェア
同社の販売シェアを見ると人気機種の販売時期によって変動があるものの、パチンコ機はおおむね5~8%で安定して推移している。2018年3月期については、「CRリング 終焉ノ刻」のヒットなどにより約8%となり、ここ数年では最も高いシェアを獲得したと見られる。一方、パチスロ機に関しては2015年3月期に「パチスロ リング 呪いの7日間」がヒットし、約3%のシェアを獲得したが、まだ安定した販売力はなく期によって変動も大きい。2018年3月期に関しては4機種を投入し、販売シェアは4%弱になったと見られる。
参加人口やホール数の減少が続くなかで遊技機業界は当面厳しい環境が続くことが予想されるものの、同社では得意ジャンルであるホラー系や時代劇系、萌え系などを中心に、今まで以上にゲーム性が高く独創的な機種を開発していくことで顧客からの支持を高め、パチンコ・パチスロ機の両方で販売シェアを拡大し、収益成長を目指していく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SF>
1. 会社沿革
藤商事<6257>は1958年に、じゃん球遊技機※の製造およびリース販売を目的に創業、業務発展に伴い1966年に株式会社化された。1973年にアレンジボール遊技機市場に参入したのに続き、1989年にパチンコ遊技機、2003年にパチスロ遊技機市場に参入するなど、事業領域を拡大してきた。1992年に開発したアレンジボール「アレジン」が大ヒットしたことで、ブランド力も一気に高まった。
※麻雀牌に見立てた入賞口に球を入れることで当たり役を作り、得点に応じてメダルが払い戻される遊技機。
2007年にはJASDAQ市場に株式上場を果たしており、2013年に従来から取引関係のあったサン電子<6736>と資本業務提携契約を締結、94万株の株式を保有(出資比率4.1%)している。サン電子からは制御基板などの部材を調達しており、同社の主要調達先の1社となっている。
なお、2019年3月期第2四半期より連結決算を開始している。2005年に設立した子会社の(株)JFJでパチンコ機の製造および販売を開始したためだ。JFJを設立した経緯は、パチンコ機の型式試験※において申請のための枠取りが難しい時期があり、競合会社が申請枠を増やすためにサブブランドを相次いで立ち上げたのにならって立ち上げたものだ。ただ、設立後は型式申請を行う機会もなく実質的には休業状態であった。しかし、2018年2月の遊技機規則改正を控えて、旧規則機での型式適合を1機種でも多く取得することを目的にJFJでも複数機種の申請を行ったところ、そのうちの1機種で認定が取れたため、JFJのブランド名で製造および販売を行うことになり、重要性の原則から連結対象子会社となったものである。このため、JFJについては2018年3月期の業績実績はない。
※遊技機を販売するためには、(一財)保安通信協会が実施する型式試験に適合し、各都道府県公安委員会に検定申請を行う必要がある。
2. 事業の特徴
同社の特徴は、新しい遊技の仕組みを発案して業界でいち早く新機種の開発に生かしていることおよび、漫画などのキャラクター版権を利用した機種の開発に積極的に取り組んでいることなどが挙げられる。新しい仕組みとしては、今では一般的となったパチンコ機のチャンスボタンによる演出方法を同社が業界で初めて導入している。また、キャラクター版権を利用した遊技機の開発では、2000年に発売した「CRサンダーバード」や、2007年に発売した「CR宇宙戦艦ヤマト」などが大ヒットした。
ここ数年では「ホラー」系の機種で一定のブランド力を獲得している。2007年に投入した「CRリング」は、発売当初「ホラー」で集客できるかどうか不確かだったこともあり販売台数が1.5万台にとどまったが、導入したホールで女性の固定客ファンが徐々に増加するなど稼働率が高く、徐々に評価が高まった機種と言える。2011年に発売した後継機種「CRリング 呪いの7日間」では増産注文も相次ぎ、シリーズ累計7.0万台を販売する大ヒット機種となっている。現在は「ホラー」系の機種をシリーズ化し、コンスタントに発売するまでになっている。ここ数年はホール側の新機種導入の傾向として、販売実績のあるシリーズ機種の後継機を優先的に導入する傾向が強くなっていることもシリーズ機種が多くなっている背景にある。このため、初代機の販売は伸びにくいが、稼働率が高ければ後継機種以降の販売が見込めることになる。
一方、パチスロ機では2003年に市場に参入以降、苦戦が続いていたが、2014年に発売した「パチスロ リング 呪いの7日間」が2.1万台を販売するヒット商品となり、パチスロ市場においても徐々に実績を積み上げているところである。
2018-19年は業界全体で低調が予想されるものの、魅力ある機種の開発により販売シェア拡大を目指す
3. 業界動向と市場シェア
(1) 業界動向
パチンコ・パチスロ遊技機市場はここ数年、客数の減少を背景とした経営環境の厳しさが続くなかで、ホール数の減少傾向が続いており、2017年末時点では10,596店舗と前期末比3.5%の減少となった。経営力のある大手チェーンが店舗数を伸ばす一方で、中小規模のホールの淘汰が進んでいる。ホール数の減少に伴いパチンコ機の設置台数も2017年末は274万台と前期末比3.0%減となり、また、パチスロ機についてもここ数年は微増傾向にあったが、同0.2%減の168万台とわずかながらも減少に転じている。
業界のトレンドとしては、パチンコ・パチスロ機ともにのめり込み防止のため射幸性を抑える方向で規則改正が実施されており、その影響もあって2018年3月期の業界全体の出荷台数は、パチンコ機が前期比10.1%減の140.8万台、パチスロ機が同31.9%減の60.4万台に落ち込んだ。2018年2月にはのめり込み防止やギャンブル等依存症対策の強化を目的として新たな遊技機規則が施行され、以降は新規則に則った型式試験が行われている。新規則では大当たり時の最大出玉数を従来の約3分の2に抑えるなど、射幸性を抑えた内容となっている。パチスロ機(6号機)では時間当たりの出玉制限はあるものの、開発の自由度が高まったため、ゲーム内容次第では人気機種が登場する可能性もある。ただ、いずれも新たな型式試験基準となっているため、適合率は従来と比べて一時的に低くなっているようで、適合率の改善も各社の今後の課題となっている。
なお、新規則が施行された2月1日以前に型式試験を申請し、適合を受けた旧規則機については現在も販売は可能なため、2019年3月期以降も各メーカーが保有する旧規則機の販売が続くことになるが、多くの旧規則機のホールでの設置期限は2021年1月末までとなっているため、高稼働でホールにとって収益力の高い人気機種についてはできるだけリプレースせずに設置期間を延命させる傾向になると予想される。このため、2018年から2019年はリプレース需要が例年よりも低調となり、パチンコ機・パチスロ機の出荷台数も2018年3月期の水準と比較して落ち込むことが予想される。とはいえ、ホール側も2021年1月末までには旧規則機をすべて撤去する必要があるため、2020年には出荷台数も回復に転じることが予想される。
(2) 業界シェア
同社の販売シェアを見ると人気機種の販売時期によって変動があるものの、パチンコ機はおおむね5~8%で安定して推移している。2018年3月期については、「CRリング 終焉ノ刻」のヒットなどにより約8%となり、ここ数年では最も高いシェアを獲得したと見られる。一方、パチスロ機に関しては2015年3月期に「パチスロ リング 呪いの7日間」がヒットし、約3%のシェアを獲得したが、まだ安定した販売力はなく期によって変動も大きい。2018年3月期に関しては4機種を投入し、販売シェアは4%弱になったと見られる。
参加人口やホール数の減少が続くなかで遊技機業界は当面厳しい環境が続くことが予想されるものの、同社では得意ジャンルであるホラー系や時代劇系、萌え系などを中心に、今まで以上にゲーム性が高く独創的な機種を開発していくことで顧客からの支持を高め、パチンコ・パチスロ機の両方で販売シェアを拡大し、収益成長を目指していく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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