日本の婚姻数の1%を創出し、
婚活業界のステータスを上げたい
IBJ
代表取締役社長
石坂茂(いしざか・しげる)
1971年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。95年4月日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)入行。2000年1月、ブライダルネット社長就任。03年ヤフーの要請により傘下入り。MBO(経営陣買収)を実施し、06年2月にIBJ設立。
ソーシャル婚活メディアの「ブライダルネット」を中心に、婚活パーティーや合コン相手のマッチングサイトを運営するIBJ。直営結婚相談所や結婚相談所向けのネットワークシステムを展開し、会員をターゲットとしたライフデザインメディア事業も順調に成長している同社の石坂茂社長に話をうかがった。
──まず、御社の業態についてお話し下さい
インターネットで結婚相手を探す、ソーシャル婚活メディアの「ブライダルネット」を中核とした“婚活”の支援事業を総合的に展開しています。当社は、日本で初めて婚活をIT化した企業で、創業以来、婚活業界をリードし続けています。特に結婚相談所部門のサービスは、成婚に至ってこそ成り立つもの。ですから当社はご成婚が成立した場合には成婚料を頂く成果報酬制を採用しています。現在、直営店を含む加盟相談所部門の登録会員数は約4万6000人。ネットワークシステムを利用している加盟店は約860社です。
また婚活パーティーや合コン相手のマッチングサイトも運営しています。話題の「街コン」への動員が大きく、合コンの動員数は月間約5000人超となっています。
──非常にユニークな事業だと思いますが、そもそもなぜこの会社を設立されたのですか?
私は当社を設立する以前、銀行(日本興業銀行)に勤務していたのですが、銀行を辞めて起業を志した時にインターネットの将来性に魅力を感じていました。とはいえ、物販は多くの企業が先行していましたし、むしろ人材や不動産など情報に価値をおいて課金できるビジネスを模索しました。その中で、付加価値はあるものの、未成熟な市場だった結婚相手探しの市場がターゲットになると確信したのです。若い頃に合コンの幹事を依頼されることも多かった影響もあったかも知れません(笑)。簡単に言えば、人的ネットワークが全てだった男女の出会いとITを結び付けて起業したということになるでしょうか。
当社の経営理念は「国民的マリッジ&ライフデザインサービス」を創る。「ご縁がある皆様」を幸せにするというもの。結局、ITという先進的ツールに、「お世話します」という旧来的な感覚を付与したことが成長の原動力だったかもしれません。もちろん創業以来、「非婚化・晩婚化・少子化」という社会的課題を解決するという企業テーマを持ち続けて、「ひと組でも多くの成婚を育み、結婚や家族という新しいライフデザインを供給する」ことに取り組んで来ました。おかげさまで、これまでたくさんの「ありがとう」という感謝の言葉を頂戴してきました。
──急成長している御社ですが、その背景をご説明下さい
婚活市場というのは、既存の表面的なデータだけを基準にすれば約600億円と言われています。しかし潜在的な実需等を総合すると、おそらく約7000~8000億円という市場にまで拡大するのではないかと考えています。この市場に対して創意工夫を凝らしたチャレンジ精神を持って対応することが重要だと思っています。
現在、全国には結婚相談所が1300社余りありますが、昔から紙だけで情報を管理し、通信手段は電話かFAXという業界でした。そこに当社のASP、「全国相談所ネットワーク」の導入を1社1社に促していったのです。この結果、現在では約850社超に当社のシステムを導入してもらっています。これによって、情報処理速度が3倍~5倍に速まり、お客様はその分、本来の相談業務に時間を使うことができるようになっています。
当然のことですが、婚活においては、プロフィールを記しただけのデータやメールだけでは、成婚率はなかなか伸びません。当社ではITを徹底活用した上で、その中に人間の感覚やファジーな部分を付加したのです。これによって、これまでアナログ力でしか解決できなかった課題の解決が相当進んだのではないでしょうか。ITとリアルの融合などと綺麗な言葉で表現されることもありますが、ITとリアル双方が補完し合った結果ということかもしれません。
多くの仕事がIT化でスピードアップすることは否定しませんが、必要なことに手間暇をかけたことが当社の独自性となって表れたのだと考えています。その結果、月間に約1万3000件のお見合いが行われて、成婚率は業界屈指の50.6%に達しています。
──なるほど。では最後に今後の事業展開についてお話し下さい
当社のクライアント(会員)の年齢層は30~40代が中心なのですが、実は20代や50代にも多くの会員がいらっしゃいます。20代の場合は「若いうちに」という意識を持たれた方が多いですし、50代の方はじっくりと見定めるという意識なのでしょう。中には70代の方もいらっしゃいます。昨今の晩婚化の結果でしょう、最近は生涯婚活という方々も散見されるのです。
会員の多くは「自分に投資を続けることによって人生を豊かにしよう」という方々。そのような方々に向け、婚約指輪や結婚式場の斡旋、旅行など結婚に至るサービスの提供だけでなく、出産や幼児教育など、当社がアドバイザーとなり商品をセレクトして提供していくことも事業カテゴリーとしてあるのではないかと考えています。また、残念ながら成婚に至らなかった会員にポイント還元するサービスも立ち上げる予定で、現在、ポイントを活用できる提携サービスを、いろいろと考えているところです。この延長線上に結婚以外の分野のライフ・ソリューション提案事業「パーソナライズド・レコメンドサービス」が位置しているのです。
海外展開についてはマレーシアやインドなどに婚活システムの導入が可能でしょう。日本のような仲人システムが存在している中国や韓国にも注目しています。こうした国々には、当社のシステムと日本独自のきめ細やかなサービスを一緒にして輸出することが可能なのではないでしょうか。
いずれにしても当社の事業の中核は「婚活」ですから、今後も会員基盤の拡充と成婚率のアップを目指していきます。そして会員基盤を活かした新事業の創出も中期的な目標です。先ほどお話した独身者のライフ・ソリューションや結婚後のファミリー・ソリューションも視野にいれています。日本の婚姻数は70万組。その1%、7000組の結婚を当社が創出することを目指すと社内では公言しています。
これが実現したときのインパクトは大きく、当社を取り巻く事業環境は大きく変化するに違いありません。数値的には20%成長の継続と、2017年度には売り上げ50億円の達成が目標です。まだまだ若い会社ですが、これから当社がようやく本領を発揮できる時代が来たと実感しています。革新と挑戦の継続は今後も継続していこうと考えています。
【取材メモ】
「クライアント(会員)そのものが財産ですね」という質問に「そうなんです」と石坂社長。コストと時間をかけてより良い結婚相手を見つけようとする層は、所得面やライフスタイルの嗜好性などでワンランク上の層。その意味では消費をリードする層であり、ここをターゲットにしたビジネスモデルはさまざまな事業への可能性を秘めていると感じた。
同社の広告のキャッチコピーは「今日を変える出逢いがある」「通勤電車で出逢う確率はほぼゼロです」「毎朝、同じ車両で会う人が運命の人とは限らない」など。こだわりを持った業務展開の一端がうかがわれる。「出逢いは楽しみと喜びです」とも石坂社長。「私の仕事はトレンドを捉えて企画を立てること。自分の企画力がなくなったら世代交代ということも考えながら仕事をしています」。
そして「婚活は信頼とリーダーシップの賜物である」という言葉。石坂社長の多くのこだわりが、同社の成長の原動力なのであろうと感じた。
(櫻井英明)
[ 会社概要 ]
社名:IBJ
市場:ジャスダック
コード:6071
設立:2006年2月
上場年月日:2012年12月6日
決算月:12月
☆連結業績見込み(2013年12月期)
売上高●25億円
営業利益●4.5億円
経常利益●4.46億円
当期純利益●2.64億円
☆トピックス
日本結婚相談所連盟として、全国の結婚相談所を、同社が開発した「お見合い管理システム」を通してネットワーク化。現在の登録会員数は4万6000人超、月間のお見合い成立数は1万2600組を超える。随時、独立開業希望者への説明会を開催。
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