【Alox分析】今年の粉飾を把握する〔2015年〕- 流行語の誕生 –

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最新投稿日時:2015/10/21 10:59 - 「【Alox分析】今年の粉飾を把握する〔2015年〕- 流行語の誕生 –」(みんかぶ株式コラム)

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【Alox分析】今年の粉飾を把握する〔2015年〕- 流行語の誕生 –

著者:塙 大輔
投稿:2015/10/21 10:59

【不適切な会計処理】
今年も企業評価の“眼”を更新することを目的として、『上場企業の不適切な会計処理』のリリースをまとめたレポートをお送りします。
 

【21件のリリース】
今年は21件(京王ズホールディングスは2回リリース)の「不適切な会計のリリース」があった。

21件という件数は、ここ6年の中では2番目に多い件数である。
(2014年14件、2013年20件、2012年29社、2011年17件、2010年15件だった。)

<不適切な会計処理をリリースした会社一覧>

No リリース コード 社名 不適切な会計処理の概要
1 2014/10/10 2315 ㈱SJI 取締役によって、「仕入代金による個人借入の返済」や「会社の承認を得ずに会社名義で19億円の借入」を実行。
2 2014/10/30 7708 石山 Gateway Holdings㈱ 会ったこともなく、連絡も取れない会社に対して、架空の売上や仕入の計上。
3 2014/10/31 5603 虹技㈱ 仕掛品、在庫の過大計上して原価を圧縮。それによって利益を過大計上した。
4 2014/11/04 5122 オカモト㈱ 棚卸資産の過大計上して原価を圧縮。それによって利益を過大計上した。
5 2014/11/20 6079 ㈱エナリス 建設仮勘定や棚卸資産を経由した勘定科目の振分けや回収見込みのない売上の計上など多数。
6 2014/12/05 1884 日本道路㈱ 工事原価の付け替え、工事請負金の二重計上等によって利益操作。
7 2014/12/17 9704 ㈱アゴーラ・ホスピタリティー・グループ 企業を過大評価して買収。
ただし、実質的には、グループ内の資産移動にすぎず、買収とは言い難い。
8 2014/12/19 3731 ㈱京王ズホールディングス 退任した役員が出社し続け、銀行印や法人カードを管理。
その役員に対して、「他の役員の報酬や経費精算」を経由して利益供与。
9 2015/01/15 4204 積水化学工業㈱ 連結子会社で工事原価の付け替えと売上の前倒し計上。
10 2015/01/19 3587 グローバルアジアホールディングス㈱ 多数の簿外債務、預け金、仮払金によって、各種訴訟が発生。
11 2015/01/23 6078 ㈱バリューHR 連結子会社で売上の水増し計上。
12 2015/02/05 9027 ㈱ロジネットジャパン グループ間取引の不適切な計上。
13 2015/03/12 2453 ジャパンベストレスキューシステム㈱ 連結子会社において、売上目標達成のために、架空売上の計上。
14 2015/03/31 3731 ㈱京王ズホールディングス 連結子会社において、事業の主体となっている子会社の売上や経費を別の子会社へ付け替えて計上。
15 2015/04/03 6502 ㈱東芝 ①工事進行基準案件において、工事損失引当金を適時適切に計上せずに、利益を過大計上。
②映像事業において、経費を過少計上して、利益の過大計上。
③半導体事業において、棚卸資産を過大計上して、利益を過大計上。
④パソコン事業において、「完成品取引が完了していない部品」」において、委託先との部品取引の段階で、利益を計上。売上以上に利益が多い月が発生していた。
 
5年総額2248億円にも上る利益を不正計上しており、社会を揺るがす一大事件となった。
16 2015/04/16 5707 東邦亜鉛㈱ 注文書の不発行等による売掛金や買掛金の期ズレと換金処理による在庫の過少計上。
17 2015/05/12 3865 北越紀州製紙㈱ 連結子会社の従業員が、架空の在庫や前払費用を計上などして約25億円を着服。
18 2015/05/12 9433 KDDI㈱ 海外子会社で、架空の売上計上。(納品の証憑が存在しない。)
19 2015/05/29 3760 ㈱ケイブ 役員による経費の私物化。結果的に、経費の過少計上。
20 2015/08/06 7486 サンリン㈱ 架空仕入れによる現金の詐取。
21 2015/08/14 2170 ㈱リンクアンドモチベーション 連結子会社において、届いた請求書を経理部へ回付するのを遅延させて、費用計上の先送り。

http://alox.jp/wp-content/uploads/2015/10/151015_2015dressing.pdf
 

【不適切な会計処理の型】
粉飾をその手法等に基づき、
「売上加工」「過少計上」「混在」「その他」の4つに分類した。
 

<売上加工>
バリューHR、ジャパンベストレスキューシステム、KDDI
 

<過少計上>
虹技、オカモト、日本道路、京王ズホールディングス、東芝、ケイブ、サンリン、リンクアンドモチベーション
 

<混在>
石山 Gateway Holdings、エナリス、積水化学工業、グローバルアジアホールディングス、東邦亜鉛、北越紀州製紙、SJI
 

<その他>
アゴーラ・ホスピタリティー・グループ、京王ズホールディングス、ロジネットジャパン 
 

今年は珍しく“循環取引”がなかった。
売上そのもの粉飾というよりも、「利益計上の前倒し」や「経費の先延ばし」といった過少計上による利益捻出リリースが多かった。
 
 

【今年の不正実例】
今年も各社において、下記のような不正行為が行われた。
 

〔石山 Gateway Holdings〕
仕入先の辛社のY氏の署名が「同一文字・楷書(引き写し)又は写し撮った画像を張り付けたものである」という鑑定結果だった。
 
 

〔オカモト〕
不正関与者が、システム上に架空の品番コードを作成して、任意の数量と単価を入力して架空の棚卸資産を創出するとともに、当該架空の棚卸資産の棚札を追加作成して、正規に作成・回収された棚札の束に紛れ込ませ、システムと棚札の両面から、架空の棚卸資産が実際に存在するかのように装っていた。
 
 

〔エナリス〕
回収の見込みのない販売代理店のGV社とGW社へ機器を販売し、一度も支払いを受けることなく、最終的には契約解除して、機器の返品となった。
 
 

〔日本道路〕
得意先と工事請負金の分割に係る覚書を締結した上で、分割元の工事については工事請負金を減額せずに、分割された工事請負金を別の工事へ増額処理していた。

この結果、工事進捗状況及び原価の発生状況によって、完成工事売上高の過大計上が行われた。
 
 

〔京王ズホールディングス〕
退任したA元社長の個人的な使用にかかる費用を、D元監査役がG副統括、AD氏、AE氏、AF氏といった当時在籍していた従業員の名義を無断で用いて精算していた。
 
 

〔グローバルアジアホールディングス〕
スポンサー候補者となった者がスポンサーを辞退した件で、
BY氏ははAB氏から
「大変なことをしてくれた」
「(対象会社)に1億円を付けないととんでもないことになる」
「輩が来る」
「対象会社に1億円の資金が入るようなんとかしろ」と脅された。

BY氏は新たに別のスポンサー候補者を紹介したが、交渉が決裂したため、
BY氏はAB氏から軟禁された上、
「1億円はお前が作れ」
「外に車が有るから乗れ」と脅され、
5500万円を対象会社の口座に振り込むことを書面で約束させられた。

その後BY氏がAB氏と面談したところ「録音してたら、ただじゃおかねーぞ!」
「(金を)作ってこい!」等と脅された。
後日、BY氏はAB氏に言われるままに合計500万円を渡した。
 
 

〔ジャパンベストレスキューシステム〕
元取締役のB氏は、D氏(取締役加盟店サポート部長)及びC氏(経理グループシニアマネージャー)に対して、「(本件不正行為に関して)正直に話をすると、自分(B氏)がダメになる。
私(B氏)がダメになると、会社ぐるみということになり、上場廃止になる。だから,すべてU氏(不正売上実行者)のせいにするように。」という発言を行っていた。
 
 

〔北越紀州製紙〕
X氏は、小切手を不正に振り出し、これを換金することにより着服した。
その金額は、9年間で累計で1,637 百万円(年間平均181百万円)であった。

X氏は、着服金の穴を埋めるため、架空の商品在庫や前払費用を計上して、その事実を隠蔽した。また、平成17年3月期からは一部借入金をオフバランスにする(振り出した小切手を換金して現金を着服し、同時に借入金を計上しない)ことで着服金の隠蔽を行っていた。
 
 

〔サンリン〕
架空仕入先として使用していた業者で実際の取引(実在仕入)が発生した場合は、事前に真正な請求書の封筒に当支店宛先名の他に当事者名も記載して送付するよう依頼し、下請業者から当支店に郵送等により届いた真正請求書は自ら開封して当支店の仕入業務担当者には提出せずに、真正請求書にある実際の取引とあわせて架空仕入を追加し、実在仕入と架空仕入の混在した偽造請求書を自らパソコンで作成して当支店出納担当者へ提出し、月末等に現金支払をするから用意をして置くよう指示をしていた。その後、会社金庫より現金を預かり、偽造作成した社名ゴム印、社印を押印した偽造領収証を当支店出納担当者に提出し、支払を済ませたことを装い現金を着服していた。
 
 

〔東芝〕
財務部は、カンパニーによる前月の実績及び当月の見込の報告を踏まえ、各カンパニーにどのように業績改善の指示(「チャレンジ」と呼ばれる。)を行うかを社長に提案し、社長がチャレンジの内容を決定していた。
 

ODM先と協議の上で、期末月において、正常な生産行為に必要な数量を超えた数量の部品をODM先に対して販売し在庫として保有させることにより、利益の嵩上げを行っていた。ただし、これは翌月以降の利益が悪化することとなるため、関係者はこれを「借金」と呼んでいた。
 

社長が、「借金を(余分に)減らそうとして、出るものは出さないのはダメ。借金はソフトランディングで返せと言っている。自分達の予算はこうだけど、借金は下期予算を下回っても返済と言うことであれば、自分の安全、会社の危険だ。」「3Q で出た利益を使って借金を余分に返済して前回通り、借金だけ返済して、予算は達成しましたなんて言うことであれば、賞与の査定は2段階引き下げるから。」と述べた。
 

社長は、デジタルプロダクツ&サービス社に対し、残り3日での120億円の営業利益の改善を強く求めるとともに、検討結果を翌日に報告することを求めた。
 
 

【ベストオブ不適切な会計に関する調査報告書】
独断と偏見に基づく、今年の一読に値する報告書は、東芝である。

当然と言えば、当然の結果であることは承知している。

“粉飾という言葉を使わないマスコミの風潮”や今年の流行語としてノミネートされても不思議ではない新経済用語として誕生した“チャレンジ”。

これらを勘案すると東芝を選ばざるを得ない。
 

東芝の報告書の最終ページには、「PC事業月別売上高・営業利益推移(2005年4月~2015年3月)」のグラフが掲載されている。

そのグラフを見ると、2012年9月以降、四半期の末月において、“売上を超える利益”が計上されており、行き過ぎたチャレンジを如実に表している。
 

<東芝_調査報告書(2015年7月21日)>
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20150721_1.pdf
 
 


小さい頃から、東芝には、ブラウン管テレビに代表される家電等で大変お世話になるとともに、知り合いも多数いる。それゆえ、できればベストには選びたくなかった。こういう言い方が適切か分からないが、何とか上を向いて、頑張って頂きたいと切に思います。

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配信元: みんかぶ株式コラム

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