シリア難民に冷淡な安倍首相

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最新投稿日時:2015/10/05 11:02 - 「シリア難民に冷淡な安倍首相」(みんかぶ株式コラム)

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シリア難民に冷淡な安倍首相

著者:矢口 新
投稿:2015/10/05 11:02

安倍首相は日本の歴代首相で最も多くの外遊をしてきた。70カ国に及ぶ訪問の、その多くで支援を約束してきたので、「1回2億円外遊旅行」、「外遊31回で対外支援6.5兆円」と、血税の無駄遣い、バラまき外交だとの批判もあった。

それでも、私は外国のトップに直接会うことは、他国の「事情」を知る上で、日本の針路を見極めるために役立つと、好意的にみてきた。

しかし、今回の国連本部での演説は、どうにもいただけないものだった。同様に感じた人が、日経BPで取り上げているので、引用する。

「米ニューヨークの国連本部で演説した安倍晋三首相。日本として安保理の常任理事国入りをめざす考えを表明し、積極的に国際貢献していくと宣言したものの、結果的に国際メディアが注目したのは、『日本は難民より国内問題が先』というメッセージでした。

具体的にどういうことかを見ていく前に、難民問題について動画で少し学んでおくことにしましょう。英語の動画ですが、日本語のテロップが表示されるようになっています。」

そして、その英語の動画について、難民急増の原因を整理してくれている。

「1、2015年夏、ヨーロッパは第二次大戦後最大の難民問題に直面している。

2、主な理由は、シリアから難民があふれ出ていることである。長らくシリアを治めていたアサド政権が不安定になり、内戦が広がった。

3、IS(ISIL=イスラム国)がその間に勢力を拡大、化学兵器の使用、大量虐殺、拷問、戦争犯罪が市民に対して繰り返された。

4、そして国民の1/3が国を追われ、400万人が難民になった。

5、多くは近隣国の難民キャンプにいるが、国連機関はこの規模の難民にとても対応できない。

6、結果として難民キャンプは大量の人であふれ返り、ケアが十分に行き届かず、飢餓や疾病などで絶望的な状況となり、難民の一部がヨーロッパに亡命の道を求めはじめた。

7、当初、ヨーロッパは難民の受け入れに消極的であり、難民がたどり着いた国にもそれぞれ国内に大きな問題を抱え、難民を受け入れる余裕はなかった。

8、世界の認識が変わったのは、トルコの浜辺に打ち上げられた少年の死体が見つかったという1枚の写真によってだった。

9、『もう悲劇は見たくない』として、ドイツは2015年、80万人の受け入れを表明。これはEU全体が2014年に受け入れた総数を超える規模である。
EU諸国にも働きかけが広がっている。」
参照:難民支援の実績を台無しにした安倍首相の「あの」一言
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/245872/100100007/?P=1


安倍首相は「難民支援にカネは出すが、受け入れを認める国内情勢にはない」と、にべもなく断った形となった。シリアの状況に関しては、補足しておこう。

シリアのアサド政権は「2、長らくシリアを治めていた」とあるように、不安定な中東にあって長く安定政権を維持していた。それが不安定になったのは、アサド政権が自国民の子供に化学兵器を使用したという映像が繰り返し流され、オバマ政権が、国民を虐待しているとしてアサド退陣を迫った頃からだ。

常識的に考えて、一国の首長が、自国民の子供相手に、国際法で禁じられている兵器を使うことはあり得ない。仮にその子供が反政府活動を行っていたとしても、オバマ大統領いうような独裁政権ならば、簡単に逮捕、あるいは単に行方不明にできるからだ。

化学兵器を使用しているのは「3、IS」の方だ。アサド憎しのオバマ政権が裏でISを支援していることはよく知られている。例えば、ISがイラクに侵攻すると、米軍に支援されたイラク正規軍が戦車などを連ねて鎮圧に向かうが、ISに直面すると兵器弾薬、食糧を捨てて逃げ帰り、それを見たISが戦うに値しないと、兵器弾薬、食糧などを持って、シリアに引き上げるというものだ。

日米の報道をみても、シリア、IS情勢は極めて不自然なことの連続であることが分かる。なぜ、米国がアサド憎しなのかは、イラクのフセイン政権を支援し続けたからだと思う。そして、これがそのまま米ロ対立にも繋がっている。

端的に言えば、アサド政権は、以前のフセイン政権やタリバン政権と同様、米国の言うことを聞かないので、政権から追われようとしている。米国はいくつかの反政府勢力を応援、そこにISが含まれていることで、シリア情勢は複雑化し、内戦が悪化した。なかでもISは手段を選ばない過激さなので、シリアからの避難民が続出した。

EU諸国は基本的に米国の同盟国だ。米国によるアサド政権への直接武力行使に主要国で反対したのは、ロシアと中国だけとなっている。その意味では、EU諸国は中東、シリア情勢に少なからず「責任」がある。難民の受け入れも、責任分担の一端という側面も持つのだ。

シリア難民に対する安倍首相の「冷淡さ」は、そういった国際情勢の理解の上かもしれない。もっとも、日本には「責任」がないとも言い切れない。

いずれにせよ、一般の理解は、アサド政権独裁によるシリアの混乱。内戦拡大による難民の急増。EU諸国への難民の殺到。人道的な受け入れ分担というものだ。日本だけでなく、欧米の報道でも、こういった理解がなされている。米政府の公式見解のままだ。

その状況で、「難民支援にカネは出すが、受け入れを認める国内情勢にはない」というのは、人道的な見方をする人たちからだけでなく、痛みを受け入れているEU諸国の人々、そして、痛みを感じているイスラム圏の人々からの反感を買いかねないものだった。米政府からは失笑を買いかねない。日本にとって益となるものは何もない。

新しい「3本の矢」もそうだが、政権も長くなると、様々なところにズレが生じてくる。安倍政権が日本のリスクとなることがないように祈りたい。

配信元: みんかぶ株式コラム

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