注目銘柄PATH グループ化によるEC事業への本格参入で、バリュエーションは一新へ

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最新投稿日時:2015/09/08 17:06 - 「注目銘柄PATH グループ化によるEC事業への本格参入で、バリュエーションは一新へ」(みんかぶ株式コラム)

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注目銘柄PATH グループ化によるEC事業への本格参入で、バリュエーションは一新へ

著者:堀 篤
投稿:2015/09/08 17:06

東証マザーズ3840
株価208円(9月7日)
時価総額34億円
単位100株

2014年3月の第三者割当増資以降、大株主・経営陣が交代。新経営陣が事業を再構築。旅行、メディア、通信販売事業などをグループに取り入れ、一定のアクティブユーザーに対する市場、「コミュニティ型マーケット」の創造に着手している。

Price Gap要因
 
 現状、新たな経営陣は、中期的な戦略のバックボーンを作るため、投資活動を進めているが、その過程で、戦略が見えつつある。株価にはまだそこが反映されていない。

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 旅行会社パストラベル(当時社名アトラス)は、法人向け旅行手配会社。2013年2月に子会社化。株式会社giftで出版する雑誌Dressは、アラフォー世代向けの女性向け雑誌。
読者同士で「Dress部活」と言われるリアルの活動をしており、現在18の部活動が行われている(2014年12月子会社化)
このほか、Path マーケティングがEC事業を行う子会社として設立されている。
(2014年12月設立)
マードゥレクスは、化粧品通信販売会社。
マードゥレクスの商品開発会社であるジヴァスタジオも、Pathで子会社化している(2015年8月子会社化)。


② 経営陣とその経営方針

 現経営陣は、CEOの柴田氏、COOの瀧谷氏ともに、TSUTAYAを運営するCCC(カルチャーコンビニエンスクラブ)などで実績がある経営者だ。
この二人が中心となり、Pathの事業構成が、今、形作られている局面にある。柴田氏は、他にも外資系コンサルティング会社の日本法人社長を勤めるなど、組織開発の専門であり、瀧谷氏は経営戦略の構築を得意とする。これまでの経験や、それぞれの知見を活かし、事業・企業を見付け出し、グループ化し、再生をしていく、というスタイルが、Pathの姿だろう。

 彼らの強みは、グループ内に取りこんでからの再生力にある。連結後の売上、利益が、連結前の単純加算よりもどの程度ドライブできるか、が、同社の存在意義を示すところになる。同社が、多くの再生上場企業と違うのは、2014年年初には、決済事業と旅行事業はあったものの、経営陣が変わる直前の2014年3月期には売り上げが3億85百万円程度しかなく、ほぼ0からのスタートに近かった、ということだ。かつ、柴田氏ら経営陣は、初めから、特定の既存事業をここに取りこもうとしていたわけではない。
 
 このような0からのスタートに近い上場企業では、特定の有力な1企業の取り込みに、その再生が頼られやすいが、同社の場合は、特定の企業ではなく、初めに「コンセプトありき」の再生事業となっている、珍しいケースと言える。そのコンセプトが、「コミュニティ型マーケティング」だ。

経営陣が語る「コミュニティ型マーケティング」とは、
(1)一定のテーマの下に、帰属意識が強いコミュニティを作る。
(2)そのコミュニティに対し、様々なサービスや商品を提供し、流通させる。
(3)コミュニティからの情報発信による、よりよい商品開発を継続する。

 そういった「経済圏」を創出し、事業の中心に据える、という考え方だ。こういった事業形態を作るには、すでに一定の帰属意識を持ったコミュニティを買収するか、そのようなコミュニティを作る可能性が高いサービスを、グループ内に持ち、質量ともに強化していくことが必要となるだろう。また、プロフィットを生むのはそこで扱われるサービスであり商材だ。つまり、そのサービスや商材をどこから持ってくるか、という課題が生じる。そこで商品開発力を持った企業との協力が必要となるだろう。

 このことを、同社が具体的に表現しているのが、「通販とメディアの融合」だ。ただし、同社が目指すのは、経営陣がCCCで経験してきた「Tカード」のようなものではない。より強い帰属意識を持ち、購買率・参加率が高い小型コミュニティと、そこから来る、より切実な消費者ニーズの情報、そしてそれに応える商品開発力だ。

 このサイクルが生れたときに、同社の成長モデルは大きな評価を得るだろう。
女性向け雑誌DRESS では、リアルな「部活」を企画し、読者をそこに参加させることで、より帰属意識の強いコミュニティを創出させており、グループのメディアの中核と位置づけられている。また、今回買収した化粧品販売会社は、10数年前から続く化粧品の通信販売を行っている。同時に、商品企画・開発機能、EC・流通の機能を持っており、通信販売会社として、グループの中核となるだろう。

 Pathとしては、まず、それぞれの事業体を把握し、コミュニティとしての質・量を作ることが重要な仕事となる。そして、次のステップにおいて、コミュニティへの外部からのサービス・商材の投下を行い、利益を出すことができれば、そこで利益率は上がるだろう。あるいはコミュニティ同士の交流、商品・サービス交流などにより、さらに新たなコミュニティや、市場を創出することもできるかもしれない。そして、3つ目のステップが。コミュニティのマーケティング機能を生み出し、製品開発機能とリンクさせることだ。始めは、コミュニティへの商品供給からの市場開発となるだろうが、コミュニティが機能すれば、需要サイドからのアプローチが可能となる。これらのステップが、同社評価の本番となるだろう。
 

③ 今回のM&Aにより、成長の基盤が揃った
 マードゥレクス、ジヴァスタジオの買収によって、通販・商品企画・流通の機能がグループ内に揃ったが、このことは、「gift」と合わせ、同社が目指している「メディアと通販の融合」の基本材料が揃ったことを意味している。
 
 料理器具はとりあえず揃った、というべきだろうか。あとはここで、何をどう料理していくか、が、経営手腕の見せ所だろう。マードゥレクス社は「エクスボーテ」「女優肌」といった化粧品を主力商材としているが、「エクスボーテ」は2001年からのロングセラーであり、「女優肌」も2006年解禁から600万人以上の体験者を持つ、安定した商品だ。2009年には、全日本DM大賞で銀賞を受賞し、他にも商品としての受賞歴は華やかだ。

 販売方法としては、TVショッピングを中心に、カタログ、ラジオ、Web通販と、あらゆる手法を採っており、会員は100万人を超える。商品の安定性も魅力だが、通販のシステムとして、安定した機能を継続し、ユーザーを開拓してきたという実績が、Pathへの評価としては最も重要な部分だ。giftが運営するDRESS」の客層とほぼ重なる、というメリットもあるので、商材の投入がしやすいのはもちろん、コミュニティとしての相互乗り入れも可能だ。だとすれば、前項で紹介した3つのステップを実現しやすい。意外と早い時期に、シナジー効果が目に見える可能性もあるだろう。
 

④ 直近の業績動向
 同社の業績予想については、会社側予想もなく、また、前期までの数値は全く参考にならない。そこで、まず既存事業の予想と、買収した企業の実績と連結期間を組み合わせることで、今期から来期の数値を単純に想定する。
既存事業
コンサルティング事業、決済事業
前期71百万円の売上で53百万円の利益
今期は、コンサルティング能力をグループ内のシナジー発揮などに傾注するので、両事業はほぼ読まない。
旅行事業
前期432百万円の売上で、9百万円の赤字。今期は、回復基調。赤字は縮小。ほぼ0ベースが狙える。
メディア事業(前期連結3か月)
前期112百万円の売上、74百万円の赤字。
雑誌・広告収入は横ばいだが、コスト削減とコミュニティへの商材流通に期待。
 今期通期寄与なので、売上は約3億50百万円、営業利益は20百万円程度の赤字か。
通販事業(今期連結6か月)
前期通期実績は、2社で42億2百万円、営業利益42百万円。
(※内部取引は不明)
単純計算なら、今期寄与は、2社で営業利益で20百万円。
今期は、シナジー効果は時間的な制約により限定的だろう。ただし、上記の単純計算においても、ほぼ営業利益ベースで0に近い数値が可能となる。企業価値の本質ではないが、今期予想、についてのポイントは、メディア事業の利益が握っているだろう。今期中に、ある程度のシナジーが生み出されれば、このセグメントが黒字化することも考えられるが、何もなければ20百万円以上の赤字を計上する可能性もある。今期末(2016年3月期)の業績については、以下を予想する。
 
単位:千円2016年は予想
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⑤ 中期的な成長性
 同社が、まだ「買収」可能な資金力と構想力を保持していることから、基本的なスタートラインを、現在の売上23億程度と置くことは、暫定的な意味にしかならないだろう。また、流通額そのものを売上とするスタイルから考えて、売り上げ規模は、今後の事業構成によって大きく変わる。現状の同社連結売上の75%程度を占める「通信販売」部門は、化粧品通販という捉え方をすると、平均的な成長率は年率1%~2%程度の市場だ。この分野では、足元の中堅上場企業(化粧品販売)の状況は、かなりバラツキがある。

中堅上場企業3社の直近四半期通販売上前年同期比
シーボン通販部門1Q(4月~6月)+0.4%
ドクターシーラボ通信販売部門3Q(2月~4月)+4.7%
ファンケル1Q国内売上(4月~6月)+28.3%

 ここでは、消費税増税の影響が出ているにも関わらず、各社、健闘しているといえる。消費税の影響を考えると、実質的には上記数値に2%~3%程度の上乗せが妥当かもしれない。とはいえ、数値は一定の水準ではなく、シーボンとファンケルでは大きな差が出ている。(ただし、ファンケルは通信販売主力だが、販売チャネルごとの数値がなく、厳密な比較はできない)これらの差異は、ブランド力や企画力、販売力(通信販売の経験値など)によって出てくるものだろう。
マードゥレクスおよびジヴァスタジオの能力の高さと、Path社のマーケティング戦略によっては、10%以上の成長性は十分に狙える。

 Pathの戦略的な取り組みにより、通信販売部門の中期成長率は、現段階では以下のように考えたい。ただし、化粧品以外の商材がどのように付加されるかを、ある程度保守的に入れ込むこととする。
 
 
 
 化粧品通販の戦略的な成長率を参考に、2017年3月期の成長率を年10%
通信販売市場全体の成長率を参考に、2018年3月期の年間の成長率を年率12%(2013年度で8.3%とされている)
2019年、2020年3月期の成長率を、コミュニティマーケティングの完成期とみて、年率20%の成長。したがって、この5年間の売上高平均成長率は、16.4%とする(ただし連結寄与の期間の関係により、下表では数値が異なる)。
 
 そのほか、メディア部門、旅行部門の動向も踏まえ、以下のように、中期的な業績予想を作成する。
 
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2017年3月期は、マードゥレクス、ジヴァスタジオの通期寄与により、売上高ベースは上昇する。ただし、現時点が、連結の事業構成の中途にあることを考えると、上記数値はあくまで暫定的なものとなる。
 
 なお、税効果から、実際の数値は、上記表中の営業利益が実現した場合は、当期利益は表中の数値よりも高くなる。しかし本レポートでは、中期的な企業価値を算定するのが主旨なので、あくまで実効税率40%として算定することにする。
 
 

⑥ テクニカル
 (下段はMACD)
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 株価の調整は、かなりの水準まで進んだ。一旦、2015年5月の第三者割当増資による株価急騰以前の水準に戻っており、ここで目先の調整は終了したと見てよいだろう。下値から見た場合の3分の1戻し、400円の水準は、初めの戻り目標となる。ただし、それ以降は、出来高を伴う水準となり、それなりに売り物をこなさなくては上がらないだろう。

400円の次は、買収材料で瞬間的につけた480円近辺が、次の目標値となる。日数がかかる可能性があるが、出来高分布で考えた場合、2か月間程度が、必要とする日数だろう。

⑦ 想定株価の算定

同社の株価算定は、現段階では、一定の事業構成の予想をしながら行う必要がある。現実の株価は、現時点での連結数値以上に、期待値に左右されるからだ。同社が今後、投資に回す資金は、税効果によるキャッシュを含め、今後1年半で10億円程度は可能と考える。その場合、10億円分の投資から期待される収益を、年間80百万円程度(投資収益率8%)と仮定すると、そのEPSに対する寄与度は4.5円程度と考えられる。この数値を、上記表中のEPSに加えると、
2017年3月期9.7円
2018年3月期12.9円
2019年3月期19.1円
2020年3月期22.2円
となる。
中期EPS成長率が21.3%、PEG=1.5とすると、
PER=31.95倍
2017年3月期EPS9.7円に対して31.95倍=310円
PEG=2.0の場合
PER=42.6倍
EPS=9.7円として、413円
PEG=2倍は割高とも思えるが、EPS算定で、新規事業とのシナジー効果を無視しているので、その分、許容範囲とする。
また、実際のEPSには税効果が現れるが、本レポートではそれを考慮していないEPSを採用しているので、ここでPER42.6倍とした場合でも、実際には25.5倍にしかならない。
以上のことから、PEG=2を中心値として採用する。
テクニカルベースでは、前述したように、400円近辺から480円への値動きが想定される。
本レポートでは、現時点で、400円から413円を中心的なバリューとし、その中心値を想定株価とする。

想定株価406円
 

本レポートについて
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配信元: みんかぶ株式コラム

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