2015年7月1日時点での主要市場見通し

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最新投稿日時:2015/07/02 11:38 - 「2015年7月1日時点での主要市場見通し」(みんかぶ株式コラム)

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2015年7月1日時点での主要市場見通し

著者:馬渕 治好
投稿:2015/07/02 11:38

花の一里塚~市場見通しサマリー

2015年7月1日時点での主要市場見通し

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基本シナリオと見通し数値について

米国経済の基調的な回復は揺らいでいない。日本も徐々に内需の持ち直しが明確になってきているが、同時に輸出数量の伸び悩みも目立つ。
そうしたなか、ギリシャの財政問題自体は長く残るが、市場はギリシャの経済規模や世界金融に占める大きさを踏まえ、ギリシャ問題は市場の材料としては薄くなっていくだろう。一方で、米国各市場の高バリュエーション(株価、長期国債価格、米ドルの高さ)は、修正を余儀なくされるだろ。これは別の言葉では、金融相場から業績相場に移行する際の中間反落であり、通らざるを得ない「試練」だと考えている。相場修正のきっかけは、9月利上げの可能性を織り込みに行くことであると見込まれる。米国市場の波乱が日本を含む世界市場を巻き込もうが、それは経済実態の揺らぎによるものではなく、市場の適正価値への修正に過ぎない、という点が重要だ(価格修正が終われば、再度世界的な株価上昇基調が復活すると期待される)。
もう一つの懸念材料は中国経済だ。減速色は一段と強まっており、買われ過ぎた中国株価の大幅な下落が懸念される。金融緩和等の対策を中国政府が打ち出しているが、「対策が出たから大丈夫」ではなく、「対策が出てもどうしようもない」という事態に移行する恐れが強い。中国の株式市場は他国と遮断されている(資金が自由に出入りはできない)ため、各国市場同士の連鎖は起こりにくいが、中国株価暴落→中国景気の加速度的な悪化→他国景気にとって悪材料、という経路は要注意だ。

以上から、基本シナリオとして、短期警戒・長期楽観のスタンスを維持する。具体的な予想レンジの修正については、2015年12月末までの予想については、方向性は全く変更しないが、次のような理由から小幅に修正した。
すなわち、まず国内株価は、調整色が強まるなかで、内需の持ち直し(とそれに着目する外国人長期筋のこつこつとした買い)を反映して、内需小型株の堅調さが想定より強い。このため全般的に、予想レンジを小幅上方修正した。国内長期金利は、国内株価の高値推移、円の安値推移、海外長期金利の上昇といった金利上昇要因にもかかわらず、動意を全く失い、金利の低位推移が続いている。このため、予想上限を引き下げた。
米ドルは、連銀が声明や記者会見等において十分な配慮を行ない、今のところ市場に過度の混乱を起こすことを巧みに避けている。その分だけ米ドルの下振れ幅が限られてきたと考え、レンジを若干上方修正した。ユーロはギリシャ等の悪材料は十分織り込んだと推察され、下値は限られているが、景気の低迷(後退ではない)やECBの緩和スタンスの維持が長く続くと予想されるため、上限を下方修正した。豪ドルも、中国向け輸出の低迷や緩和気味の金融政策などの悪材料は、既に場にさらされている。しかし豪州準備銀行は、政策金利の下げ止まりから引き上げのタイミングを予想以上に慎重に考えており、予想レンジ上限を下方修正する。

こうした考察を踏まえて、2015年12月までの予想レンジについて下記の修正を行なった(下線太字部は変更箇所)。

日経平均株価(円) 16500~21000 ⇒ 1700021500
10年国債利回り(%) 0.3~1.7 ⇒ 0.3~1.4
米ドル(対円) 105~125 ⇒ 110127
ユーロ(対円) 130~160 ⇒ 130~155
豪ドル(対円) 90~120 ⇒ 90~110

シナリオの背景

・日米の経済実態は、好転を続けている。

(図表1)
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・米国では、企業経営が慎重であるため、雇用者数の伸びは抑制的だが、着実な増加基調を維持している。経済活動の活発化に伴い増加した仕事量を消化するため、雇用者はより長い時間働く傾向が強まっており、雇用者の週当たり総賃金(雇用者数×労働時間×時間当たり賃金)は力強く増加して、過去最高水準だ。これが米国の個人消費、ひいては内需全般を支えている。
・今年1~3月は、厳冬・大雪の影響や西海岸の港湾スト(2月に妥結)の影響から、諸経済指標は反落したが、それを過ぎて持ち直し傾向を強めている(ただし、内需系の小売売上高、自動車販売、住宅着工等は堅調だが、米ドル高による輸出抑制効果からか、鉱工業生産は軟調気味の推移となっている)(図表2)。

・日本でも、緩やかながら、内需、特に個人消費が徐々に持ち直しを見せている。家計の心理を示す消費者態度指数は、消費増税時の4月に加え、昨年11月にも悪化をみせたが、その後今年にかけて持ち直してきている。今年、来年と2年連続で、消費増税なしのベースアップ・ボーナス増があることが、消費者心理を一段と改善させうる(図表3)。

(図表2)
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(図表3)
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(図表4)
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・国内雇用市場においては、失業率が低下傾向を続けており、明るい動きだ(図表4、失業率は右軸で描いており、目盛りが上下逆になっていることに注意)。ただし所定外労働時間(残業や休日出勤の時間)前年比がマイナスに落ち込んでおり、雇用増のスピードほど仕事量が増えていないのではないか、との懸念が残る。
・そこで、失業率と所定外労働時間を合成した、「雇用元気指標」をみてみよう(図表5)。この指標は、ITバブル崩壊、リーマンショック、安倍政権発足直前の景気低迷期(2012年11月は景気の谷)には、マイナス圏に突入し、雇用市場から見て景気後退期にあることを示していた。現時点では、ぎりぎりではあるが雇用元気指標はマイナスには転じておらず、徳俵に足をかけて押し返す動きのように見える。
・このように日本では、個人消費を中心とした内需に、徐々に明るさが見え始める一方、輸出数量は伸び悩み、前年比でプラスマイナスゼロを出たり入ったりとなっている(図表6)。採算面では、円安が輸出企業の利益率を押し上げているものと期待されるが、量的な輸出増効果ははかばかしくはない。

・このように、経済面では、日米に懸念するような要因は見出しにくい。その点で、中長期的には、日米を中心とした世界株式市場の堅調展開を見込んでよいだろう。

(図表5)
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(図表6)
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・したがって、リスクがあるとすれば、日米以外の主要国で悪材料が膨らむか、経済以外の要因で市場に波乱が生じる展開だろう。

・まずギリシャの財政問題については、問題そのものはすぐには解決しない。ギリシャの財政収支を均衡点、あわよくば黒字に改善し、ギリシャが市場から国債発行などによりスムーズに資金を調達できるようになるまで、かなりの努力と時間が必要だろう。
・また、目先の問題としては、現レポート執筆時では、7/5(日)に予定されているギリシャの国民投票の結果が出ていない。チプラス政権は、債権者(EU、IMF、ECB)側の財政緊縮案に反対するよう求めているが、銀行からの預金引き出し制限や、小売店の店頭から物品が消える(※1)、という事態に至って、ギリシャ国民はことの大きさに気が付き始めたようだ。このため、足元の世論調査では、緊縮策への賛成派が、反対派を上回っていると言われる。財政緊縮に賛成する、という結果になれば、責任をとって現政権が退陣し、総選挙をやり直すことにはなろうが、ギリシャに対する支援は前に進み、IMFからの借入金は遅延したが返済され、他の債務も当面はデフォルトを免れるだろう。
・もちろん、国民投票については、結果が出るまでは予断を許さない。それでも市場は、ギリシャ経済の規模(2014年の名目GDPは1791億ユーロ、2014年のユーロ円相場の平均である140.44円で計算すると、約25兆円)が限定的であること(※2)、またギリシャは金融面で、日本や米国と密接な関係にはないこと、欧州では「まさか」の時のための備えはできている(緊急融資や量的緩和の追加など)ことから、徐々にギリシャ情勢がどうころんでも、大きく楽観も悲観もしなくなってくるだろう。

・他地域では、米国市場の動向を、短期的に不安視している。米国株価はPERでみて、引き続き買われ過ぎの状態にある(図表7)。これは、米国経済が世界で最も安心感が強いので(それ自体は事実だ)、米国株に内外の資金が集まり過ぎた、と考えることもできるし、企業収益だけからは正当化しにくい株価水準を、低金利により適正だと主張している状態(すなわち金融相場だ)とも言える。

※1 銀行からの預金引き出しが制約されているため、小売店が商品を仕入れる際に、掛売りや銀行決済では物が買いにくくなっている(現金しか売り手が受け付けにくいような状況)。このため仕入ができなくなった小売店が増え、店頭から物が消えていると報じられている。
※2 最新の2012年度のデータでは、埼玉県の名目GDPが20.4兆円、神奈川県が30.3兆円(内閣府データ)。したがって、ギリシャの経済規模は、埼玉と神奈川の間の、やや埼玉寄りだと考えればよい。

(図表7)
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(図表8)
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・実際に9月に米連銀が利上げに踏み切るかどうかは別として(9月利上げの可能性が高いとは予想するが)、その前の8月にかけて利上げの可能性を米債券市場が織り込みに行き、長期金利が上昇すれば、米株価は金融相場を抜け出て、一旦は反落せざるを得ないだろう。ただし中長期的には、米景気・企業収益の回復傾向を受けて、最終的には米国株価は業績相場の色合いを強め、上昇基調に復すると見込んでいる。
・米ドルについては、購買力平価と実際の円相場の乖離率をみると(図表8)、乖離率が2割を超えている。同様に2割を超えたのは、プラザ合意(1985年9月)前の1982年10月と1985年2月であった。米国にとって、現在は、プラザ合意前と同様に厳しい米ドル高水準であると推察され、米ドル相場の水準に対する牽制が米政府から今後も打ち出される可能性が高いと考える。
・また、米金利の上昇は、本来は米ドル高要因であるが、金利上昇による米株価の下落が進むと、株価下落を嫌気した米ドル安が生じる恐れがあろう。この時の相場付きは、米株安、米債券価格安、米ドル安のトリプル安である。

・景気面で最も警戒されるのは、中国だ。豪州から中国向けの輸出で中国経済を推し量ると(図表9)、中国向けの輸出額、前年比とも不振の色合いがかなり濃くなっている(※3)。

(図表9)
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※3 豪ドル相場については、こうした中国向けの輸出不振は、材料としてはかなり織り込んでしまっているものと考える。

・こうした景気減速にもかかわらず、中国上海総合株価指数は、6月半ばまで暴走状態にあった。個人投資家を中心とした過熱感が強かったと言えるが、足元では逆に、株価下落がさらなる売りを呼ぶような状況に陥りつつあるように見える。
・中国政府は、追加の金融緩和策を打ち出すなど、株価下落に歯止めをかけようとしているが、一旦株価バブルが逆回転すると、政策では止められない恐れが強い。まだ「中国政府が次々と対策をうつから株価は大丈夫だ」という見解が残っているように思われるが、じきに「中国政府が次々と対策をうっても、株価下落はどうしようもない」という懸念に変化するものと考えている。
・上海A株などは、基本的に海外資金から遮断されているので、中国株価の下落がグローバルな資金の流れを経由して、他国の株式市場に直接悪影響を与える、という事態にはなりにくいだろう。しかし、中国株の下落が中国の個人消費を傷め、中国経済が悪化し、それが他国の経済に悪影響を与える、という経路は、要注意だろう。

以上、シナリオの背景。

このあと、前月号(2015年6月号)見通し
および1月号の2015年1~6月見通しのレビュー。

前月号見通し(2015/6/1時点)のレビュー

日経平均株価
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・6月の日経平均株価は、予想レンジ内で推移し、特にレンジ上限は良く機能した。早い段階で株価が大きく下落を始めると見込んでいたが、まだ本格的な下落には至っていない。その背景に内需の堅調さがあると解釈され、年後半のレンジを若干ながら上方修正する。

②国内長期金利
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・国内長期金利は、レンジ内での推移となった。ただし上昇力が極めて弱いため、年後半の予想レンジ上限を下方修正する。

③外国為替相場
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・6月は、3通貨とも、概ね予想レンジ内での推移となった。ただし米ドルは、短期的に上限を超えた局面があり、見込んだほどの下振れはみせなかった。
・米ドルの堅調さの背景には、米連銀が市場に波乱を起こさないよう配慮し、声明や記者会見で「安全運転」に努めていることがあるように考えられる。その一方で、株価の割高さに言及するなど、大波乱を生じる前のガス抜きも図っているようだ。このため将来の、米株式・債券市場の波乱による米ドル安の度合いが薄らいだと考え、予想レンジを上方修正する。
・ユーロ・豪ドルについては、上昇力が弱い局面が続くと懸念され(ただし下値は限定的)、予想レンジ上限を下方修正する。

2015年1月号(2015/1/5時点)による2015年1~6月見通しのレビュー

日経平均株価
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・2015年前半の日経平均株価は、1月時点の予想レンジ下限から上限まで、幅いっぱいに推移した。ただし、当初見通しでは、もっと早い時点で、レンジ上限から株価が大きく落ち始める展開を予想していた。その点では見通しを誤ったと言える。

②国内長期金利
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・2015年前半の国内10年国債利回りは、レンジ下限を割り込むような低下は少なかったが、上昇力が予想に比べ、極めて限定的であった。

③外国為替相場
1-6re3

・2015年1~6月の外貨相場(対円)は、米ドルが上に、ユーロ・豪ドルが下に、予想レンジをはみ出す局面があったが、最終的にはレンジ内に戻るような動きをみせた。
・当初想定していたような、米ドル独歩高が米ドル独歩安に変化する、という相場展開にはなかなかならなかったが、予想レンジからどんどん乖離していくような相場の動きにはならなかったと言えるだろう。

(以上)

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配信元: みんかぶ株式コラム

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