シクリカル株VSディフェンシブ株
日本株は国内景気の回復期待などから、年明け以降順調に上昇を続けています。
しかし東証17業種の年初来パフォーマンスを見ると、医薬品、運輸・物流、食品などのいわゆるディフェンシブセクターのパフォーマンスが良好で、自動車・機械などのシクリカルセクターのパフォーマンスはディフェンシブセクターに対し出遅れています。日本の株式市場は、景気敏感株の時価総額ウェイトが高いため、過去の株式市場の本格的な上昇局面では、シクリカルセクターが相場を牽引してきました。まして今回のように円安、景気回復する局面では、製造業の収益が伸びやすい環境であり、シクリカルセクターが相場を牽引するのが通常のパターンですが、今までのところ上昇相場を牽引しているのはディフェンシブセクターです。いったいこれは何を示唆しているのでしょうか。
株主還元期待とスマートベータ運用の影響か
今回の日本株の上昇は、景気回復以外の要素も株価上昇に働いていることを示唆しているのではないかと考えられます。
具体的には、東証のコーポレートガバナンス・コード導入を控え、日本企業が株主還元に対し前向きになってきたことで日本企業に対する評価の高まったことや、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式運用比率の引き上げによる公的年金の株式への資金流入と年金運用の内容の変化です。
この要素が医薬品や食品株などのディフェンシブセクターがシクリカルセクターをアウトパフォームしている要因になっていると考えると現状の株式市場の動きが理解できます。一般的に医薬品や食品株は、業績が安定しているうえ、財務体質が良好でキャッシュリッチな企業が多く増配や自社株買いなどを行う余地がある会社が多くあります。そのため、株主還元への期待が高まると資金流入が起こりやすい業種です。特に食品株は、JTなど一部の会社を除くと配当性向が低い会社が多いため株主還元への期待が高まりやすくなっています。
また、GPIFの株式運用比率の引き上げを受け株式市場への資金流入は着実に増加しています。しかし運用資産の増加の中身はパッシブ運用の比率が増加しています。その中でもリーマンショック以降は、特にスマートベータといわれる業績や財務安定性や低ボラティリティを重視したタイプのパッシブ運用への資金流入がグローバルで増加傾向にあります。医薬品や食品株はスマートベータが好む要件を満たしている銘柄が多いため、スマートベータへの資金流入が増加すると買われやすくなります。ディフェンシブセクターが買われる背景はこの二つの要因が大きいと我々はみています。
ディフェンシブ株は割高水準になりつつある
しかし、リーマンショック以降は、グローバルでディフェンシブ株がシクリカル株に対し一貫して上昇しており、シクリカル株に対するディフェンシブ株の優位は2003年以降で最大になっています。また東証一部の医薬品・食品株の予想PER(株価収益率)やPBR(純資産倍率)は、同TOPIX平均に比べ2003年以降では割高な水準になっておりディフェンシブ株が優位な展開は今後一巡しシクリカル株が上昇する可能性が高いと見ています。
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