日本人は自分の仕事に不満が多い?

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最新投稿日時:2014/08/25 11:00 - 「日本人は自分の仕事に不満が多い?」(みんかぶ株式コラム)

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日本人は自分の仕事に不満が多い?

著者:矢口 新
投稿:2014/08/25 11:00

会社組織は「人」が集まり相互に支え合っている。私が知る限り、日本では「仕事のコツ」を教え合うのが一般的だ。それだけ、仕事に対する思い入れが強く、人間関係も仕事を通じて密になる。同時に思い入れが強いと、自分の「コツ」が譲れなくなり、不満も強まるのだ。

日本人は世界で最も仕事に「不満」

リンクトイン1万8219人対象の調査で、日本人の7%が現在の自分の仕事に「非常に不満」だと回答。世界の平均は4%で、日本人は調査対象26カ国のうち最も高かった。

一方、現在の仕事に「非常に満足」あるいは「やや満足」と答えた日本人は65%。この比率はトルコの63%やイタリアの67%と並び、世界の最低水準だった。インドネシアでは84%、スウェーデンでは83%、ノルウェーでは81%が、自分の職業に満足していると回答した。

新しい仕事を「積極的に探しているか」との質問には、日本人の10%が「イエス」と回答。世界平均の12%を下回った。それでも、日本人の52%が採用担当者と話をすることに前向きだと答えた。

「積極的に転職先を探している」と回答した日本人のうちでは、28%が現在の仕事に「非常に不満」だと答えた。世界の平均は8%で、日本の場合、不満が転職の引き金となっていることが示された。

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参照:日本人は世界で最も仕事に「不満」、転職活動は消極的
http://realtime.wsj.com/japan/2014/08/19/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%AF%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%A7%E6%9C%80%E3%82%82%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%81%AB%E3%80%8C%E4%B8%8D%E6%BA%80%E3%80%8D%E3%80%81%E8%BB%A2%E8%81%B7%E6%B4%BB%E5%8B%95%E3%81%AF/?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesThird

私は、日本人の現在の自分の仕事に対する不満の多さには、仕事に対する思い入れの大きさもあるのではないかと思う。

その昔、ニューヨークから帰国して、都心のオフィスで働いていた時に、日本人の仕事に対する姿勢に今更ながら驚いたことがある。

そのビルでは、トイレ掃除は清掃会社から派遣されたおばさんたちがやっていた。ある時、男子トイレの掃除で、ベテランのおばさんが、新米のおばさんに「掃除のコツ」を伝授していた。外国帰りの私にとっては極めて新鮮な光景だった。

英米では、トイレ掃除のような単純作業は、賃金のためだけに行うものだ。それ以上でも、それ以下でもない。賃金に納得して勤めているので、満足も不満も少ない。真面目にやる人もいれば、手抜きする人もいる。それだけだ。

一方、私はトイレ掃除に「コツ」があるのを理解できる。何にでも要領があるものだ。それを後輩に伝授する気持ちも理解できる。要領の悪い人を目にすると、一言言いたい気持ちも分かる。

私は海外の大学を卒業後、相場の仕事の最初の3年間を外為ブローカーとして始めた。本来は銀行間の取引を取り次ぐだけの仕事なので、正確さとスピードさえあれば成り立つとも言える。それだけでも値動きに敏感になり、目先の動きの勘のようなものは育成される。とはいえ、相場観のようなものとは無縁だ。

ある時、担当していた三井銀行の4つ年上のディーラーから、相場観は仮説を立てるところから始まると教えられた。そして、毎朝、私の相場観を述べさせられた。住友銀行の1つ年上のディーラーからは、スワップポイントの簡単な出し方を教えられた。私は、このように顧客や先輩、同僚たちから、様々な「コツ」を仕込まれた。そして、今、人様に「コツ」を伝えている。

トイレ掃除の新米のおばさんは不満そうだった。先に勤めているだけで、偉そうに振る舞われることが癪だったのかもしれない。トイレ掃除に「コツ」などあるものかと思っていたのかもしれない。あるいは、自分の方がもっと優れた「コツ」を会得していたのかもしれない。

会社組織は「人」が集まり相互に支え合っている。私が知る限り、日本では「仕事のコツ」を教え合うのが一般的だ。それだけ、仕事に対する思い入れが強く、人間関係も仕事を通じて密になる。同時に思い入れが強いと、自分の「コツ」が譲れなくなり、不満も強まるのだ。

昨年はギャラップ社による似たような調査をご紹介し、次のようにコメントした。
(以下は、以前のコメントから)

世界で不幸せな労働者は、幸せな人の2倍

ギャラップ社は1990年代終わり頃から、世界の被雇用者の満足度を調査してきた。これまでに、189カ国、2500万人の被雇用者の調査を実施。今回発表された最新版では、142カ国、23万人のフルタイム、パートタイムの従業員の情報を集めた。

総合的にみると、意欲があり積極的に仕事に取り組む(engaged)従業員はわずか13%だった。「エンゲージド」するとは、仕事への情熱を感じ、雇用する側と固い絆があって、日々、新しいことを考え、会社をさらに前進させようと過ごしているということだ。

大部分の約63%は意欲がない(not engaged)としている。幸せとは言いがたいが、ひどく不幸というわけでもない従業員だ。つまり、こうした人たちは、気持ちが仕事から離れている。彼らはなんとなくダラダラと日々を過ごし、仕事にほとんどエネルギーを傾けない。

24%が、意欲を持とうとしない(actively disengaged)従業員、つまり仕事をかなり嫌っている人たちだった。仕事が嫌いであることを隠さず、さらに同僚の成果をも台無しにする。仕事が嫌いな人々の割合が一番高かったのは、中東と北アフリカだ。

「意欲がない」「意欲を持とうとしない」を合わせると、世界の労働者の87%に達する。

仕事をするうえで幸せを感じる意欲ある従業員の割合が最低だったのは東アジア地域で、全体でわずか6%となった。中国では、仕事で幸せだと感じる従業員が6%だった。約68%は仕事から気持ちが離れていて、26%はひどく不幸だとしている。日本は幸せを感じている従業員が7%。69%は意欲がなく、24%は仕事が嫌いだった。

米国は幸せな従業員が30%、意欲がない従業員が52%、仕事を嫌う従業員が18%だった。

ブラジルは27%が意欲があり積極的に取り組んでいる。62%は意欲がなく、12%は仕事が嫌いという結果だった。幸せな労働者が一番多いのはパナマで、37%が仕事を愛し、意欲がない従業員は51%、ひどく不幸せな従業員は12%だった。

仕事にエンゲージする、つまり意欲的に取り組むようにするために必要な12の条件を、ギャラップ社が提示している。ここに条件を挙げるので、参考にしてほしい。

1 職場で自分が何を期待されているか知っている
2 仕事を間違いなくこなすための材料や道具をもっている
3 職場で、毎日、自分が最も得意なことをする機会がある
4 この1週間に、職場で良い仕事をしたとして認知されたり称賛を受けたりした
5 上司やその他、職場のだれかが、自分のことを一人の人として気にかけてくれているようだ
6 私が進歩していくのを励ましてくれる人が職場にいる
7 職場で、自分の意見をくんでくれる
8 会社の使命や目的が、自分の仕事は大切だと感じさせてくれる
9 同僚たちは質の高い仕事をしようと努力している
10 職場に仲の良い友人がいる
11 過去6カ月の間に、私の仕事が進歩したと職場のだれかに言われた
12 昨年、仕事で学び成長する機会があった

参照:Unhappy Employees Outnumber Happy Ones By Two To One Worldwide
http://www.forbes.com/sites/susanadams/2013/10/10/unhappy-employees-outnumber-happy-ones-by-two-to-one-worldwide/

私の周りでも、仕事がストレス、職場がストレスという声が聞こえる。仕事、職場ならまだしも、人間関係がストレスという声も多い。巷のアドバイスにも、ストレスから身を守る、ストレス解消の仕方などが溢れている。そうして見ると、生きることそのものがストレスで、そこから根本的に逃れるには、生きることを止めることかとさえ思えてくる。とはいえ、死ぬことも自由ならない環境にいることも多く、その場しのぎのストレス逃れで生き続けるしかないというのが、少なからずの人々の状況なのかもしれない。

皆さんは、ギャロップの12の条件をどう思うだろうか? これでは、不幸せではなくなるかもしれないが、幸せとはいえないかもしれない。なぜなら、受け身で他人の評価に依存しているからだ。

私が考えるポイントは、「エンゲージドするとは、仕事への情熱を感じ、雇用する側と固い絆があって、日々、新しいことを考え、会社をさらに前進させようと過ごしているということ」にあると思う。端的に言えば、人に指図される仕事ではなく、自分から能動的に挑戦すれば仕事に幸せを感じるのだ。

私が相場を「啓蒙」する理由がここにある。

人が仕事で幸福感を感じるには、究極的には自分が経営者になることが必要だ。「エンゲージドするとは、仕事への情熱を感じ、雇用する側と固い絆があって、日々、新しいことを考え、会社をさらに前進させようと過ごしているということ」は、会社経営の近くにいることだからだ。とはいえ、すべての人が経営者になることや、部門経営、支店経営することはできない。

相場は、いわば利益に関する部分だけのバーチャル会社経営なのだ。実際の会社経営との違いは、二次元か三次元かの違いだ。相場には、実体のある人との関係と、様々な実務とがないのだ。

その意味では、社会人生活の全部が相場だった私は、いわば「オタク」で、実体のある人との関係と、様々な実務に、多少なりとも欠陥があるかもしれない。

それでも、私は仕事にほとんどストレスを感じない。あるのは、乗り越えるべき障壁で、乗り越えられないと、無力感や疲労を感じるだけで、それはストレスとは違う。つまり、ストレス発散につながることをどんなに行っても、無力感や疲労から逃れることはできないのだ。面白いのは乗り越えるべき障壁があると、それを避け、目を逸らすことがむしろストレスとなることだ。

相場は難しい。経験を積んでいるので、最低限の利益を残すことはできるが、失敗、反省の連続だ。もっと、うまくできるはず、ここを変えればいいかも知れないと、日々、挑戦し続けることは、まさに相場に「エンゲージド」なのだ。

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配信元: みんかぶ株式コラム

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