米国株は買われすぎなのか?メディアに煽られずに冷静な判断をする秘訣
【図1】ナスダック1995年~2014年現在
【図1】のチャートは、1995年から2014年現在までという長期的観点からナスダックの株価の推移を見たものです。
現在ナスダックは、「2000年に記録した最高値まであと12%」というところまで上昇してきています。
ところが、市場の状態が「極端な買われ過ぎだ」と判断できることから、経済メディアや一部の投資家たちは、暴落の可能性を危険視しているようです。
実際のところ多くのメディアや経済ニュースは、大幅な上昇には懐疑的な見方を示しており、今後もそのような見解で報道すると思われます。
しかし、ナスダックはまだ強い上昇トレンド内で動いています。
これから具体的にチャートを見ながら分析していきますが、その前に、チャートとパターンを一つ学習しましょう。
【図1】を見てチャート分析専門家ならば、現在ナスダックがあるパターン内で値動きしているということに気が付くでしょう。
そのパターンとは、上昇ウェッジパターンです。
ウェッジパターンとは、株価の上値と下値が序々に切り上がっていき、株価の変動も小さくなっていく型です。
ウェッジパターンで下降トレンドへ転換する場合、株価の変動が小さくなった頂点で上値を追うエネルギーの限界が生じ、株価は天井を打って下降トレンドに変換する可能性が高いチャート形状となります。【図2(2)参照】
一方、上昇トレンドへ転換する場合、株価の変動が小さくなった頂点で下値を売り込むエネルギーの限界が生じ、株価は底を打って上昇トレンドに変換する可能性が高いチャート形状となります。【図2(1)参照】
【図2】ウェッジパターン例
一般的にこのパターンから起こりうる結果は以下の2通りです。
1通り目は、図2(1)のように、価格が上のトレンドラインを上抜けし、その後大幅に上昇していきます。
このような結果が起こった場合には、ナスダックはほぼ確実に2000年の最高値を更新するでしょう。
一方で、図2(2)のように下のトレンドラインを下抜けした際には、その先には深刻となる問題が待ち構えているというサインになります。
現時点で私たちには、市場がどちらの方向に行くのか分かりません。
ここでもう一度考えてみたいのですが、メディアが危険視しているように、現在のナスダックも2000年同様買われ過ぎなのでしょうか?
再度チャート【図1】を見てください。
あなたはたった今ウェッジパターンについて学んだので、チャートがより有効な情報を提供している事が実感できると思います。
図中上部のインディケーター(A、Bの部分)は「ガイド」として役立ちます。
現在インディケーターは、オレンジの枠内Bに位置しており、青色で影を付けている部分が70レベルを超えていることがわかります。これは何を意味するかと言うと、市場は確実に買われ過ぎ状態にあるということです。
トレーダーの中には、このインディケーターを売り買いの目安として使用している人もいます。
例えば、
・市場が買われ過ぎの状態にあると言われる70レベルになる→売り
・売られ過ぎと言われている30レベルになる→買い
といったようにそれぞれの取引に役立てています。
この方法で取引を行えば、一見上手くいきそうにも見えますね。
波立つように株価が上下している市場や、横ばいが続いている市場では上手く取引でき、利益が得られる可能性があります。
しかしトレンドがあり、株価が1つの方向に強く進んでいる時には
この方法では上手くいかないのです。
覚えておいてほしいのは、買われ過ぎている市場はテクニカル的に見ても
「強気である証しになり得る」ということです。
1995年から2000年までがいい例でしょう。
この5年間、市場は買われ過ぎの状態が続いていました(オレンジ枠A)。それにもかかわらず、ナスダックの価格は5倍となり大幅に上昇しました。
そのため、インディケーター線が70レベルを上回り、市場が買われ過ぎ状態にあると判断できても、ナスダックが下の線(C)より上に位置している限りトレンドは上昇中ということになります。
線(C)を下抜けした際には、価格は下方向へと確実に進んでいきますので、十分に注意する必要があります。
このような比較のお話をすると、どうしても現在と1995年から2000年を比べてしまいます。
このまま現在のトレンドが継続されるとすると、ナスダックは爆発的に上昇し、買いが殺到、または1999年から2000年のバブル期のようになるかもしれません。
しかし、私たちはまだそこまでのところまで到達していません。
現時点では、多くの分析者はなぜ市場はこれほど上昇し続けているのか、頭を抱えているのです。
ここでもう1つ、ナスダックと似たチャートをご用意しました。
2010年初旬から現在までのS&P500のチャート(図3)です。
【図3】2010年初旬~現在のS&P500のチャート図
非常に単純なチャートパターンである上昇ウェッジパターンを形成していることが分かりますね。
これが分かっていれば、複数年の上昇が続いている間、長期投資家や経済メディアは多くのストレスを抱えずに済んだことでしょう。
通常の上昇市場では当たり前に起こる株価の上下も、このウェッジパターンが形成されている限りは気にせず、投資家は投資し続けても大丈夫です。
注目したいのは、大きな株価の上下も上昇している2本のチャネルライン(青線)内にきちんと納まっているということです。
チャネルラインが上向きな限り、投資家の皆さんは周りの市場情報を無視し投資し続けるべきとテクニカル分析から判断できるでしょう。
上でも述べましたが、このパターンが唯一弱気となる時は、株価が下のチャネルライン(A)を下抜けしたときのみです。
2週間ほど前にS&P500は下のチャネルラインを下抜けしようとしていましたが、急速に反発し新高値更新となりました。
チャート図3の灰色の矢印を見てください。
この2本線が一点に集まろうとする過程で、同じように線に反発する出来事を
何度を見てきたでしょうか。
今後注目していかなければならないのは、このチャネルラインが一点に集まり先端部分を形成する時です。
この際には、取引する上で十分に注意しなければなりません。
現時点では、S&P500の上昇トレンドに乗り、投資を続けていても大丈夫ですが、下のチャネルラインを意識しながら取引を進めてください。
「ナスダック」と「S&P500」のチャートを通して「ウェッジパターン」を学び、またそれらを利用して、チャートから情報を引き出せるようになった事と思われます。
個人投資家においても、様々なメディアの発信情報が「正確かどうか」を検証する事が指標のテクニカル分析を行うとできるようになります。
2つの例を利用して、テクニカル分析の一旦に触れましたが、今現在のナスダックに関しては上昇ウェッジパターン内で強気に推移するものの、現時点では爆発的に続伸するかどうかは、ウェッジパターンが上抜け下抜けするかを見守る必要があります。また、S&P500に関しても同じ事が言えます。
過熱感を煽る言葉がメディアを賑わせておりますが、このコラムをご覧になられた方はより冷静に正確な情報判断ができるようになっており、またそれらを利用して多いに今後の投資運用を円滑に行えるようになればと思います。
Good Luck!
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