~ 小野山功が見通す「来週の株価材料」 ~
日銀による株価指数連動型上場投信(ETF)の買い入れ額が、8月4日から707億円に増額されました。
7月29日の会合で、ETF買入れ額を「年6兆円」に増やすと決めた措置によるもので、1回あたりの購入額は、前回の347億円から2倍以上に増えています。
1回あたり707億円分の株を買うことで、株価への影響力も強まっています。前場で日経平均が一時16,000円を割り込んだ4日、後場「日銀買い」が入ったことで、前引け比で230円超の上昇となりました。
■前場で下がれば日銀が買う
ETF買いは、前場の東証株価指数(TOPIX)が0.2%超下がった際に行われることが多く、この水準が目安とされます。(当てはまらない日もあります。)
また、買い入れ額は月単位で変動するものの、基本的に月の途中で増減することはありません。8月末までは、1回あたり707億円の買入れを続ける公算が大きいでしょう。
東証1部の商いは1日を通して2兆円程度です。後場だけであれば、だいたい1兆円程度。そこに700億円分の買い注文だけが入れば、相場を押し上げるには十分です。
「前場のTOPIXが0.2%超下がった際、後場は日銀買いの出動で大きくは下げることはない」そうした相場感が当面は意識されることになるかもしれません。
■円高でも輸出株が買われる
また、今週の株式市場では、内需株から輸出株へ資金をシフトさせる動きが見られました。
4~6月期に連結経常利益が218億円(前年同期比25%増)と第1四半期としては過去最高を更新した(2269)明治ホールディングは、3日の決算発表後、2日間で株価は一時10%下落しました。
3日に市場予想を大幅に上回る好決算を発表した(9433)KDDIも、発表翌日こそは一時7%高と急反発したものの、終値では4%弱まで上げ幅を縮小。翌4日には2%安と利益確定で伸び悩みました。
好業績を発表した内需株がさえない反面、堅調だったのが輸出企業です。
想定為替レートを実勢に合わせて1ドル102円に修正し、16年度の営業利益を1兆6000億円(前年同期比44%減)へ1000億円引き下げた(7203)トヨタ自動車は、5日に一時上げ幅を4%に広げました。
16年4~6月期に為替は1ドル108円程度で推移し、前年比およそ13円円高に動いています。輸出関連に関して、円高による収益悪化は織り込まれており、「思ったほど悪くない」として買戻しが入ったとみられます。
■好決算で内需株が見切られる?
一方、最高益でも売られた明治HD、コンセンサスを上回ったKDDIなどは、株価が年初来高値圏にありました。
好決算でも株価が伸びなかった内需株に見切りをつけ、大幅減益でも売られなかった輸出関連に資金をシフトさせる銘柄入れ替えが起こった可能性があります。
決算発表は8月15日ごろまで続きますが、決算明けは手がかり材料不足や市場参加者の減少で、次第に商いが減少することも予想されます。
閑散相場を迎えるようであれば、日銀によるETF買いの影響力が増し、大きくは下げないという、生ぬるい相場が続くことになりそうです。
小野山 功