かなり大株になってしまい、一度刈り込んだ。
今まで料理などしてこなかったので、料理に使ったことなどなかった。
レシピには書いてなかったが、
肉料理にはローズマリーとよく聞いてはいたので、
今回、初めて使用してみようと、枝先を一本、ポキリと折った。
★「ハンバーグ」
合挽肉200gに、みじん切りにしたタマネギ1/4個、パン粉:大さじ1・1/2を同量の生クリームでふやかし、塩・こしょう・ナツメグパウダーを各少々を振り、よく練り込む。その半分を小判型に成形し、中心部をくぼませておく。
フライパンにオリーブオイルとバター、ローズマリーを1枝入れて熱すると、すぐにとてつもなくイイ匂いが立ちこめてくる。このイイ匂いをなにかに喩えたいのだが、該当するものが浮かんでこない。ローズマリーを熱した臭いというより他はないように思える。
最初に強火にして上下返し、次いで中火にしてフライパンに蓋をし、じっくりと火を通す。厚みが3cmあったので、レシピ時間より火入れに時間がかかり、中火にして10分のところ、13分ほど。途中、適宜ひっくり返してみた。
ソースは、わさび入りバター醤油と、赤ワインを煮詰めてからトマトケチャップ、ウスターソース、マスタード、砂糖を混ぜたものを用意した。
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ひと口してみたとたん、つけソースがぶっ飛ぶような、肉の旨味とナツメグの香りに襲わている自分に気がつく。そして、あとからローズマリーによると思われる香りによりとどめを刺される。即死するより他はないような旨さ。このハンバーグを口にして、たとえ生き残れたとしても、その人物は今後、激しい中毒と禁断症状に悩まされるだろう。美味すぎるって。
やがて、軽い怒りに襲われている自分に気がつく。
なんでこんなに美味い料理を知らなかったんだ、どうしてローズマリーを何年間も放っておいたんだ。
ついで、ナツメグが醸しだす肉の旨味にあえいでいるうちに、今度は、中世時代にスペインはじめ欧州諸国が競ってスパイスの奪い合いをしてきた事実に思いが到る。
当時のスペイン人も、このナツメグの威力に魅せられて、中毒になっていたに違いない。
スパイスにまだまだ馴染みのない日本人は、このローズマリーとナツメグが醸しだす手品のような味を知ってしまったら、中毒と禁断症状にあえぐ人びとが増殖するだろう。デニーズなどは、スパイスをつかったチキンソティを出すようになっているが、
ハンバーグにこそ、ローズマリーとナツメグを利用すべきだ。
外食産業の関係者は、素人が家庭でローズマリーとナツメグの魅力を知ってしまう前に、とっとと提供する商品に応用しないと、顧客はみんな家で料理するようになってしまうだろう。まだまだ、ほんの一握りの人間しか、この味を知ってはいまい。