先週一年半ぶりに日経平均が2万円を超えました(20177円)。
しかしトランプリスクや地政学的リスクが燻っているうえ
円相場が111円台なのに何故?と疑問を抱く方も多いと思います。
私自身も6月2万円超えを予想はしていましたが
それはロシアゲート疑惑が表面化する以前のことであり
5月のFOMC議事録も 年後半2回の利上げ観測が後退する内容だったので
正直なところ意外な印象を受けました。
ただ海外勢は4月以降8週連続で日本株を買い越しており
この間の買い越し額は1兆5263億円に上っています。
また年初からの大幅な売り越しは5月第3週にプラ転し
トータル2877億円の買い越しに転じました。
つまり日経平均が2万円を超えた主な要因は
外国人が日本株のパフォーマンスの良さを改めて認識した結果だと言えそうです。
因みに、日経平均のEPSは5月25日に初めて1400円台(1401.21円)に乗り
6月1日には1402.54円と僅かながら記録を更新しています。
一方6月1日時点で日経平均のPERは14.16倍に止まっており
過去2年間の平均PER15.0倍に換算すると
適正な水準は21038円という計算になります。
また日経平均のPERは過去2年間 概ね14.0倍~16.0倍の範囲内にあり
これをチャートで見ると20177円はその下限に位置していますので
バリュエーションを考えると伸びしろは充分あると思います。(中央値は21600円)
https://nikkei225jp.com/data/per.php
さらに付け加えると、昨年11月の月間平均PERは日経平均15.07倍、ダウ17.30倍。
これに対して直近のPERは日経平均14.16倍、ダウ17.30倍となっており
ダウは横ばいですが、日経平均のPERは0.91ポイント低下しており
2万円を超えたとはいえ、ダウに比べるとまだ割安だと言えそうです。
次にN/N倍率ですが、こちらも差が縮まっています。
昨年11月8日時点の日経平均は17171円、NYダウは18332$。
従ってN/N倍率は93.67倍でしたが、6月2日の時点では95.15倍に上昇しています。
因みにN/N倍率は日本の高度成長期に10倍を超えたこともあるそうですが
その後日本経済の失速等により、リーマンショックが起こるまでは
1.3倍程度で推移していました。
ところがリーマンショック以降、米国経済が急激に回復した反面
日本経済は低迷を続けたことから1.0倍を下回る状況が続いています。
また経験的に1.0倍以下は割安、1.3倍以上は割高だと考えられており
今後日本の景気がさらに上向く可能性や、米国のピークアウト懸念を考えると
再び1.0倍を超えるのは時間の問題だと思います。
昨年11月に比べN/N倍率が上昇しているのは、案外その兆候の表れかも知れません。
とまあここまでは期待に胸躍る予想ですが
リスクになりそうな外部要因も想定して置くべきだと思います。
その一つはトランプリスクに端を発した米国政治の混乱や景気減速懸念です。
そうでなくても米国の景気はピークアウトが近いと考えられているだけに
果たしてトランプ政権で大丈夫なのか?という不安が付き纏います。
もう一つは中国の金融不安です。
2016年、GDPに占める金融・不動産の比率は15%と過去最高を記録し
このうち金融業の比率は8.3%で、10年前に比べ2倍に膨れ上がっています。
(逆に製造業がGDPに占める割合は10年間で8%低下)
また2015年末時点の債務残高は168兆4800億元(GDPの249%に相当)。
そのうち企業の債務残高は105兆5500億元(GDPの156%に相当)に上り
2016年度も企業と個人の借金が17.8兆元増加したと言われています。
因みに金融業の比率が急激に上昇すると金融危機のリスクも高まるため
世界の金融市場にとって、中国の金融不安は大きな地雷だと思います。
この様に、奇しくもNO.1先進国とNO.1新興国が世界経済の足を引っ張るという
何とも皮肉な事態が起ころうとしている様な気がします。
日経平均が漸く2万円を超え、さあこれからという時に水を注されたくありませんが
得てして株式相場は盛り上がっている最中に突然腰を折られることが多いので
秋風が吹く頃に一波乱が起こるのではないかという嫌な予感がしています。