<CME通貨取引の円・建て玉推移(9/20)>
投機筋による円の建て玉ロングが、前週、前々週に比べて徐々に増加しています。
この様な傾向は一ヶ月以上続くことが多く
次回の日米金融政策決定会合まで(日銀10/31~11/1、FOMC11/1~11/2)
暫く間隔が空くため、さらなる円高に注意が必要だと思います。
ところで先週末のドル・円相場の終値は101.00円でしたが
この為替水準で日経平均16700円台が妥当かどうか?
もし歪であれば、どの程度嵩上げされているかについてもう一度考えてみました。
①16000円台の日経平均株価(終値)とドル円相場(一日平均)の比較
日経平均 ドル円 PER(円建て)
2007/9/28 16785円 115.43円 PER17.79倍
2013/12/30 16291円 105.39円 PER16.63倍
2014/10/31 16413円 109.34円 PER15.78倍
2016/4/28 16666円 109.32円 PER15.26倍 (注①)
2016/9/23 16754円 101.06円 PER14.21倍 (注②)
2007年9月28日と2016年9月23日の日経平均株価(終値)は偶然にもほぼ同値ですが
ドル円相場は14円も開きがあります。
また2014年10月31日といえば黒田バズーカ第二弾が発表された日で
日経平均株価は16413円、ドル円は109.34円でした。
これに対して昨日の日経平均株価は16754円、ドル円は101.06円ですから
8円円高に振れているにも関わらず、日経平均株価は当時より330円高いことが分かります。
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②ドル円相場(一日平均)が101円台前半だった日の日経平均株価比較
2013/5/10 14607円 ドル円➡100.96円(終値は101.58円)
2013/5/31 13774円 ドル円➡101.18円
2013/7/10 14506円 ドル円➡101.14円
2013/11/20 15381円 ドル円➡101.19円
2014/3/3 15274円 ドル円➡101.32円
2014/7/18 15215円 ドル円➡101.26円
2016/8/16 16596円 ドル円➡101.13円
2016/9/23 16754円 ドル円➡101.06円(終値は101.00円)
こちらはドル円相場の一日平均値を101円前半に固定した時の日経平均株価を比較しています。
日銀が異次元緩和を発表した翌月の2013年5月10日は100.96円で
先週末(9/23)の101.06円とほぼ同じですが
日経平均株価は当時に比べ約2000円高くなっていることが分かります。
無論そうなったのは、黒田バズーカ第二弾による円安誘導に加え
GPIFや日銀を初めとする
「クジラ」の日本株買い(官製相場)強化が大きな要因だということは疑う余地がありません。
しかしドル円相場は異次元緩和発表直後の水準に戻ってしまいましたから
現在は「官製相場」がおよそ2000円程度
日経平均株価に下駄を履かせているという見方が出来ると思います。
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一方、4月下旬頃から日経平均株価は日米2年債の利回り差との相関関係が強くなっており
ドル円相場が1円変動すると、日経平均はおよそ220円動くと考えられています。
そこで4月28日(注①)と9月23日(注②)を単純に比較してみると
日経平均株価はほぼ同水準ですが、ドル円相場は9円円高に振れていますので
理論上は、220円×9円=1980円。
つまりこの短い期間中でも2000円程度、官製相場による買い支え効果があったことが分かります。
(まとめ)
現在の日経平均株価は、日銀やGPIF等による買い支えによって
およそ2000円程度嵩上げされていると思われます。
しかし、幾ら「官製相場」で株価を維持しようとしても
外部要因で世界的に株価水準が低下すれば
東京市場だけが独歩高を続けるという訳には行きません。
因みに8月末時点のデータによると、世界市場の平均PERは18.5倍
そのうち先進国市場は 19.1倍(NYSE 21.3倍、日経平均ドル建て 16.99倍)となっています。
日経平均のPERは、ドル建て換算でもまだ世界の平均を下回っていますが
官製相場でこの有様ですから
海外勢が如何に日本株をシカトしているかを物語っていると言えそうです。
<株価の下落を招く主な外部要因>
①米国の利上げ
米国の利上げは新興国経済の悪化や、過剰流動性相場の終焉に繋がるとの懸念もありましたが
FRBの「やるやる詐欺」が改めて証明されたことで、そのリスクはやや後退したと思います。
今後のシナリオは、大統領選挙の行方によって変わると考えていますが
クリントン候補の健康問題が解消すれば、概ね勝負は決しているという見方が多く
その場合、年内利上げも見送られる可能性が高まるのではないかと考えています。
一方、トランプ候補が優勢となれば、同氏は利下げを訴えているだけに
FRBはいざという時のために早期利上げに踏み切る可能性があると思われます。
世界の金融市場にとって、トランプ氏は目の上のタンコブかも知れません。
②ユーロ危機
大きく報道はされていませんが、EUでは銀行の経営危機や
ドイツ、イタリア、オランダなどのEU脱退を巡る動きが懸念されています。
つまり政治・経済の両面でEUは大きな地雷を抱えている訳で
来年行われる予定の総選挙(ドイツ9月、オランダ3月)は特に注目されます。
因みにオランダでは、反EU派勢力が勝利した場合
早速残留か離脱かを決する国民投票が行われるとのこと。
③中国経済
毎回大型地雷として取り上げらる中国は、政治・経済の両面で危機に立たされています。
特に今回のG20では、開催国でありながら孤立を深める結果になり
対EU投資は英国が白紙撤回、親中派のメルケル首相も国民から信頼を無くしつつあり
EUの要であるドイツとの関係も、今後弱まって行くことが考えられます。
さらにインフラ輸出の目玉であった高速鉄道建設ですが
米国、インドネシア、ブラジル、ベネズエラなどが中止を決定しており
国際社会からの信用低下が今後の中国経済を圧迫するのではないでしょうか。
ただ中国が孤立化すると、東アジアの地政学的リスクが増大する恐れがあり
日中関係が悪化すれば、海外勢の日本株離れが加速することも予想されます。
(国防関連銘柄は買い!)
さらに、人民元の切り下げに端を発する世界同時株安(旧チャイナショック)も考えられ
外部要因の中で中国経済は大きなウェイトを占めていると言えそうです。