岸田外相の訪中は対中外交上何の役にも立たなかったという評価がされてますが、どうやら今の中共がどういう状態なのか再確認するという意味では役立ったようです。一昨日・昨日と王毅外交部長の日本国政府に対する「4つの要求」が小さく報道されています。
1.歴史を反省し台湾を切り捨てろ
2.中共に都合の悪い論を広めるな
3.中国が日本経済にとって重要だと認めろ
4.中国の海洋侵出を支持しろ
先日のG7広島外相会合に激昂した中共を伊勢志摩の前に宥めておこうと思って、外務省の方から中共に頼み込んで岸田さんを送り込んだわけですが…結果として、4時間ネチネチと恫喝されるという反応をされ、通例の歓迎晩さん会はおろか共同記者会見すらせずに追い返すという、近代国家としてはちょっと考えられない様な前近代的対応だったようです。日本国政府としては口ポカーンでしょう。
中共はもっと強かな外交プレイヤーだと思っていたのですが、ほぼ頭がおかしくなったとしか思えません…ただ、こういった発言は正面から見てはいけません。王毅さんの背中越しに見れば、今の中共がどんな状態なのかがわかります。
1.台湾で蔡英文さんが大勝したことに焦っている
2.中共が国際的にも国内的にも孤立しつつあり焦っている
3.国際金融経済での中国の重要度が低下し焦っている
4.南侵をオバマさんに批難されて焦っている
まず台湾に対してですが、馬英九さんのときは、少なくとも政治は中国の思い通りになっていたのですが、今回の蔡英文さんの大勝はそれに「ノー」を突きつけたことになります。実際には2014年の学生立てこもりのときに「ノー」は突きつけられていたのですが、前回同様に執拗な選挙妨害で乗りきれると思ったんでしょうね。彼らにとって一番の懸念は、今の台湾の雰囲気が中国国内まで波及しないかということでしょう。
次に国際的・国内的な中共の孤立ですが、「中国脅威論」と「中国経済衰退論」という真逆の論はいずれも中共にとって都合が悪いと具体的に言ってます。これは、中国が脅威であることがバレてしまうと困るし、衰退してることもバレては困る、と言ってるに等しい発言です。日本国政府としては中国脅威論は国際社会に喧伝してきましたが、中国経済衰退論についてはそれほど重視してなかったので(宮崎正弘さん等の安倍さん周辺の一部保守系言論人は声高に唱えてますが)、相当驚いたのではないでしょうか。それだけ中共内部では「中国経済衰退論」に対して警戒していることが伺えます。
そこで中国経済の国際的重要度につながるわけですが、もはや家計は火の車で、アジアインフラ投資銀行も失敗しつつあり、これまで中国に媚び諂ってきた国々がソッポを向き始めているのでしょう。また、経済が傾くと国内的にも批判が大きくなるため、中共の体制維持にも黄色信号が灯ります。だからこそ経済力を軍事力(特に海軍)で補おうと考えている習近平一派に対して、軍事脅威論で孤立する方が危険だと考える鄧小平の系統の人たちがいて、今の中共は手足がチグハグに動いているんですね。…まあそういった内部矛盾は中共にとって「日常風景」ではありますが。
スプラトリー諸島などへの南侵をオバマさんにかなり強く非難・批判されたのは中共にとっては意外だったらしく、それに対して中共側は非常に強い口調で反論(恫喝)しています。これでオバマさんの中国に対する印象は完全に損なわれてしまったわけです…そういったことも中国経済に少なからざる影響を与えているかもしれません。
つい最近までこの世の春を謳歌していた中国は、このところこんな感じで焦りからくる外交上のミスを次々と犯しています。忘年会で「3年で世界一」と壮語していたライブドアが年明け早々に吹っ飛んでしまったライブドア・ショックみたいなことにならなければいいのですが。