新聞書評で気になっていて、書店で手配してもらった本。
尾崎翠という作家も知らなかったし、彼女が桜庭一樹と同じ鳥取出身だということも知らない。
何週間かかかって、最寄りの書店から入手の電話が来た。
そのまんま、積ん読になっていた。
桜庭作品を読み進めている内に、
何の気なしに並行読みしだしたら、
このところずっと桜庭一樹に押されてばっかりだったオイラにも、
これで少しはお返しができるってぇ、事実が判明したんだ。
て、てやんでぇ、っとくらぁ。。
★「尾崎翠の感覚世界 《附》尾崎翠作品 第七官界彷徨 他二篇」
加藤幸子著 萬書店 2,300円+税 2015.8.10.初版第一刷
以下P.160~161より抜粋
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三五郎の部屋では、寒い空気のなかに、丁度三五郎の寝床がのべてあった。
私は早速眠りに入らうとしたが、二助の部屋からつづいてゐる臭気のなごりと寒さのために、
私はただ天井をながめてゐるだけであった。
丁度私の顔の上に天井板のすきまがひとつあって、
その上に小さい薄明がさしてゐた。
三五郎の部屋の屋根の破損は丁度垣根の蜜柑ほどのしわたしで、
私は、それだけの大きさにかぎられた秋の大空を、
しばらくながめてゐた。
この閑寂な風景は、私の心理をしぜんと次のような考えに導いた──
三五郎は、夜寝る前に、この破損のあひだから星をながめるであらうか。
しばらく、星をながめてゐるであろうか。
そして午近くなって三五郎が朝の眼をさましたとき、
彼の心理にもこの大空は、いま私自身の心が感じてゐるのとおなじに、
深い井戸の底をのぞいてゐる感じをおこさせるであらうか。
第七官といふのは、いま私の感じてゐるこの心理ではないであらうか。
私は仰向いて空をながめてゐるのに、
私の心理は俯向いて井戸をのぞいてゐる感じなのだ。
そのうち私は眠りに陥つた。
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この赤字部分が、桜庭一樹の「赤朽ち葉家の伝説」においては、
ひとつの重要なアイテム元になっている。
そのことは、冒頭付近からすぐに謎めいて描かれていて、
物語の最後に種明かしされる仕組みになっている。
(是非、読んでみて下さい)
一樹は鳥取という舞台で作品を描くに当たり、
鳥取出身の作家作品を熟知した上で、
オマージュとして尾崎翠「第七官界彷徨」を取り上げたのだと思われる。
オイラの嗅覚も、なかなかじゃろーが、エッヘン。
(って、ホントにそれ、偶然でわかったんだろうが!)
ありがとう、弁慶。
それは、オイラの意識にインターセプトしてくる、あの世からの便り。
あわわのわ。。
PS:「赤朽ち葉家の伝説」には、鬼太郎のオマージュもいるぞなもし。