東京五輪関連銘柄は既にピークアウトしたのでしょうか。
Bloombergの記事(9/9)を参考に考えてみたいと思います。
しんきんアセットマネジメント投信運用部の藤本洋主任ファンドマネジャー
「短期的にはご祝儀的な動きに加え、経済効果への期待も高まり、日本株全体にポジティブに働くだろう」と予想。特に建設 や不動産 などインフラ分野、レジャーや宿泊施設といった観光分野をはじめ、「関連する銘柄には買いが膨らむ」とみる。東京が有利との見方が多かったため、「五輪関連銘柄のパフォーマンスは既に相対的に良好だが、完全には織り込み切れていない」
SMBC日興証券の阪上亮太チーフ株式ストラテジスト
「短期的には関連銘柄を中心にポジティブに作用し、足元での海外情勢の不透明感とも相まって
内需優位の構図を強める方向に作用する」との見解を示唆。
さらに、実際の開催は7年後と先が長く、「経済効果がすぐに出始めるわけではない」と指摘。
相場の押し上げ効果も短期にとどまり
「事前に大きく上昇した関連銘柄は早々に利益確定売りに押される」ともみている。
相場が中長期で継続的に上昇していくには、オリンピックに絡む需要発生が実際に日本経済を刺激し押し上げ、広く波及していくことが必要のようだ。東京都の試算では、五輪開催による国内経済への波及効果(生産誘発額)は、13年9月の準備段階から20年9月の大会終了までの7年間で2兆9609億円。資本投資の分析対象は、五輪で使用される予定の競技会場や選手村などの施設のみで、大会開催の有無にかかわらず整備される道路、鉄道などのインフラ整備費は対象外としている。
大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリスト
五輪開催の決定で国土強靭化政策を進めやすくなり、老朽化したインフラの再構築を加速させ、観光の伸びなども踏まえれば、「7年間で平均して1.1%程度のGDP押し上げ効果があってもおかしくない」と分析。五輪招致の成功による「日本経済へのインパクトの強さはまだ認知されておらず、そこはかとなく良いと思われている程度」
SMBC日興証の阪上氏
コンパクトな会場配置が大会コンセプトとされ、建設投資による直接的な経済効果は小さいとの見方が多いが、「秋の臨時国会で国土強靭化基本法案が提出された場合、オリンピックの建設投資と老朽化したインフラの更新投資が長期にわたって同時並行的に進む可能性が高い」と強調。過去のオリンピック開催国の例を見ても、招致決定を機に固定資本形成が持続的に増えているとした。
野村証券では、東京での五輪開催は安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」と相乗効果を生むと見て、五輪が刺激し、業績面へのポジティブな影響が期待される銘柄として
大成建設 ・太平洋セメント・JR東日本・三井不動産・ゼビオ・綜合警備保障の6社を挙げている。
ロンドン、長野の記憶
1996年アトランタから2012年ロンドンの5回の開催都市決定、開会式当日までの株価推移を見ると、アトランタは90年9月に決まり、同月末から開会式日の96年7月19日まで米ダウ工業株30種平均 は2.2倍に上昇。同様の期間に、2000年シドニーはASX全普通株指数 が64%高、04年アテネはアテネ総合指数 が27%高、08年北京は上海総合指数 が36%高、12年ロンドンはFTSE100指数 が6.5%高となった。
経済情勢によりパフォーマンスに差はありながら、いずれも上昇。アテネはITバブル、北京とロンドンはリーマン・ショックなど世界的金融危機を途中に挟んでおり、開催日までの経済活性化期待が相場の押し上げ、下支え要因になってきたことがうかがえる。
ロンドンの上昇率は小幅だったが、07年6月には6732ポイントの高値を付け、開催が決まった05年7月から27%上げる場面もあった。16年に開かれるブラジル・リオデジャネイロの場合、ボベスパ指数 は決定した09年10月から10年11月の高値まで一時19%上昇。その後は、経済の低成長やインフレなどへの警戒で、1割以上のマイナスとなっている。
日本で98年に冬季五輪が行われた長野の場合、91年6月15日のIOCバーミング総会で開催が決まった。バブル経済崩壊と不良債権処理、山一証券破たんなど金融危機のさなかで、決定日(休場日のため翌営業日)から開会式当日の98年2月7日(同)まで日経平均株価 は31%下落。インフラ整備に関係性が強い東証建設業指数 も同期間に64%下落、長野地盤の八十二銀行は25%安、北野建設 は82%安、土産品卸のタカチホ は開催決定後に新規株式公開し、94年10月から63%下げた。
総じて厳しいパフォーマンスを強いられたものの、北野建も決定から1カ月後には31%高となる2218円の上場来高値を付けており、相場全体が不振の中でも活躍場面を見出すことは可能だ。
明治安田アセットマネジメントの小泉治執行役員
五輪決定と今後の日本株動向について「具体的な計画が決まったりするたびに、折に触れ、相場の刺激材料になりそう」としている。
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<まとめ>
◇五輪関連銘柄は総じて高値圏にあり短期的には売られる可能性が高い
◇五輪に絡む具体的な計画が決定する度に相場の刺激材料になる
◇五輪誘致が決定してから開催されるまでの7年間は固定資本(主に建造物)が持続的に増加する。
◇株価はその時々の要因で変化するが、世界的な金融不安でも起こらない限り堅調に推移する。
特に今回の東京五輪決定はアベノミクスの強力な追い風になると思われ
タイミング的には株価押し上げ効果の増強が期待出来る(私見)
◇五輪開催までの7年間というスパンや震災復興を考えた時、最も需要が期待されるセクター(私見)
①建設(道路・橋梁・空港・港湾・各種施設など)
②建築材料(セメント・コンクリート・鉄鋼・非鉄金属・プラスチック・木材・塗料・接着剤など)
◇東京五輪最大のネック事項である放射能除染は最優先される(私見)
しかも水質汚染・海洋汚染問題は思いの外深刻で、対策費は数兆円規模が想定される。
◇不動産(大手不動産、含み資産銘柄など)
◇電気工事・照明(建設関連として波及効果が期待出来る、特にLED関連銘柄が狙い目)
◇観光業・運輸業(五輪効果を生かし、事前に外国人観光客を増やせるかどうかが鍵)
◇その他(経済効果はサービス業がトップで6500億円と試算されている
但しホテル業や土産物など一過性で終わる可能性がある業界への投資は要注意)