【書評】『わりなき恋』岸惠子著

[AAI Fundさん]

記事によると、恋愛小説はたいてい、そこに描かれている恋愛とはまた別の、読みどころというか、読み方があって、それが魅力なのだ。

女６９歳、男は１１歳下で５８歳という高年齢どうし、それも〈性〉もちゃんとある恋愛とは、甘さより苦味がたっぷりの設定だ。逆に二人とも外国をとび廻（まわ）る文化人とビジネスマン、これは知的で華やかだが、有名人で、人目を考えれば、だいぶスリリングだ。

しかし、こうしたことはたくさんの紹介がされるだろうし、何より実物を読んでいただきたい。

女優の作者が力を注いでいるのはもっと細部の、装置・背景・衣裳（いしょう）とでもいうべきものだ。

全体の話は〈プラハの春〉から〈アラブの春〉までの間に起こるのだが、二人がはじめて知り合う飛行機のファーストクラスの場面がいい。あの頃は一つだけ離れ小島のような席があって、そこに座ると皆にジロジロ見られる。それが嫌で、二人はつい隣り合わせになる。これがヒット。二人がよく行った背景のパリのアレクサンドル三世橋は、当時あの橋に並ぶ彫刻群は新しく金色に塗り直されて、とてもきらびやかだった。

男が最初に女の家に泊まってしまうシーンでは、ミモレの黒のスカートに、アンティークのブラウスという少女めいた姿がとても効果的だ。彼女はこの時、翌朝の歯ブラシを男のために持って来たのだが…この小道具のエロティックなことといったらない。

これらはこの恋愛の〈思い出のかけら〉だ。小さいけれども大切なかけらだ。この言葉はこの本の末尾のほうで出てくるが、この思い出のかけらを拾い集めるのがこの本の読みどころのはずだ。

性のことは、ずいぶんあけすけに扱われているところもあるが、この歯ブラシの件（くだ）りにはとても日本人的なはじらいの気分がある。それに対し「歯ブラシ、ここにあるのをお借りしてしまいました」と男がいうのだが、ドラマのセリフのやりとりのようだ。このへんの味が、この小説の、とても一筋縄ではいかないデリケートなところだとのことです。





内容紹介

著者が10年ぶりに世に問う、衝撃の恋愛小説!

でも、でもね、逢えてよかった…… 突然の、胸の高鳴り。年齢のくびきを越えて燃え上がる鮮烈な愛と性孤独と自由を謳歌する、国際的なドキュメンタリー作家・伊奈笙子、69歳。秒刻みのスケジュールに追われる、大企業のトップマネジメント・九鬼兼太、58歳。激動する世界情勢と日本経済、混沌とするメディア界の最前線に身を置く二人が、偶然、隣り合わせたパリ行きのファーストクラスで、ふと交わした『プラハの春』の思い出話……。それがすべての始まりだった。

容赦なく過ぎゆく時に抗う最後の恋。愛着、束縛、執念……男女間のあらゆる感情を呑み込みながら謳い上げる人生賛歌。執筆4年、書き下ろし文芸大作!






わりなき恋
posted with amazlet
at 13.04.21

岸 惠子
幻冬舎
売り上げランキング: 88

Amazon.co.jpで詳細を見る










【送料無料】わりなき恋 [ 岸恵子 ]

価格：1,680円（税込、送料込）







▶ 楽天ブックス 本TOP

本、書籍の通販なら楽天ブックス／新刊・予約・ランキング等、注目・話題・人気の本が満載／欲しかった本が特別価格！

▶ 楽天ブックス DVD・ブルーレイTOP

新作・予約・ランキング等、注目・話題・人気のタイトルが満載／スペシャルプライスセール開催中！／予約+新作DVDが26％OFF！

▶ 楽天ブックス ゲームTOP

「ゲーム」「PCソフト・周辺機器」




Ads by SCL