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NECとNECエレクトロニクスと株主権行使のあり方

先日3月末の株主登録を目指して、ペリー・キャピタルがNECの株をわずかながら取得しました。ペリーは、NECエレクトロニクス株式を大量に保有しており、昨年6月にNECが保有するNECエレの株式を高値で買いたいと申し入れたところです。

ペリーは米国で典型的なアクティビスト投資ファンドと認識されています。米国で、キング・ファーマスーティカルという会社の株式を大量に保有しつつ、同社をマイラン・ラボラトリーズという会社に高値で買わせようとしました。その手口は、マイランの10%相当の株式を買い、買収のための株主総会で高値買収を成立させようとしました。しかし、高値で買うことになるマイランの株価は低下することが予想されますので、マイランに対する議決権を確保しつつ事前にマイラン株の空売りを行い、経済的には損をしないように手当をしていたのです。ところが皮肉にも,マイランの大株主にカール・アイカーンという人物がおり、彼も有名なアクティビスト株主で、結局、アイカーンにペリーは負けてしまいました。

似たような手口をNECとNECエレクトロニクスに関しても想定できます。「NECの株をわずかながら保有し、来る6月のNECの総会でNECエレの株保有継続がいかにNECの価値・株価を毀損するものであるかを訴え、NECエレ株の売却を提案する。そのためのお膳立てとして、NEC株空売りを行い、総会前に十分にNECの株価を低下させる。実際にNECの株価が下がれば空売りで儲けられ、NECエレ株式の売却の動きが出れば、NECエレが株式市場で企業買収対象として本格的に浮上することになり、ペリーのNECエレ株持ち分も高値で売却できるチャンスを高めることになる。NECの株価が上昇する材料がいまのところあまりないと考えられるので、かなりダウンサイド・リスクの低い、しかし大きな儲けにつながる話ということになる。」というシナリオです。サブプライム問題で、NEC自体を手中に収めようという資金的体力はないと思いますので、上記のシナリオの可能性があるのではないでしょうか。

こうしたアクティビスト投資ファンドに対して、その議決権行使になんらかの制限を加えていこうという検討が米国で行われています。最近、米国のコンファレンス・ボードという米国版経済同友会というか経団連みたいな団体が、ヘッジ・ファンド・アクティビズムというレポートを発表しています。一つの提案として、ヘッジファンドへの資金の出し手である年金などのファンド・オブ・ファンズ型機関投資家への自主規制を促しています。また、米国の一部の法学者は、取締役や経営者に課せられた会社の利益を守るための信認義務(忠実義務と善管注意義務)を支配株主ばかりでなく一定の影響力を持つ株主にも忠実義務を課すべきではないか、という提案をしています。

会社に対する支配力に関して、これまでの所有と経営の分離という言葉に象徴されるような、経営者による圧倒的支配の状況から、アクティビスト投資ファンドの台頭に象徴されるように株主サイドの支配力が強くなりつつあります。一定の影響力を持つ株主は単独あるいは他の株主と連携して取締役を任免できるようになってきているのだから、取締役と同様に、会社に対する忠実義務を課すべき、ということは傾聴に値する考え方だと思います。こうなると、日本における株式持合も意味を失うことになると思われます。忠実義務違反のリスクから、議決権行使を控えるということになるからです。

先日の報道によると、株主判断型の買収防衛策の導入が増えているということですが、株主に判断させるのであれば、その株主とは誰なのか、が問われる必要があると思います。様々なタイプの投資家が株主権を行使するための条件設定のあり方を早急に検討しなければならないのではないでしょうか。
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