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1ドルの価値はもはや60円前後まで低下している

昨日のジャクソンホールは肩透かしもいいところで、市場もほとんど反応しませんでした。そして何よりも、更なる量的緩和は望んでいないというFRBの心理がバーナンキさんの言葉の端々に見え隠れする講演に終わりました。

確かにFRBのQE1とQE2はアメリカのデフレ征伐に成功しました。でも失業率の方はというと、こちらは急激に悪化してしまっています。失業率を改善するため追加の金融政策を行う意志はあると昨日バーナンキさんは述べましたが、おそらくそれは量的緩和ではないでしょう。

その理由のひとつは、FRBは量的緩和と呼ばれる非伝統的金融政策がインフレと失業率上昇を同時にもたらす可能性が無いかを見極める必要があって、それにはまだしばらく時間が必要だから。


そしてもうひとつの理由は、イラク戦争以降アメリカのマネーストックは急激に増大し、QE1以降はもはや制御不能でドルの価値低下に歯止めがかからない段階に突入しつつあるから。

個人的には1ドル=80円の今の水準は、まだまだドルの価値を高く評価しすぎなんじゃないかと思います。ドル円は1980年代以降、一貫して輸出物価ベースの購買力平価と共に推移してきましたが、2000年以降は乖離が大きくなっていますおり、輸出物価PPPは60円台に突入しているにもかかわらず、実勢価格は80円前後にとどまっています。




http://www.iima.or.jp/research/ppp/index.html

これは主に中国の台頭により日本の貿易における中国の占めるウェイトが大きくなり、相対的にアメリカの地位が低下したことが原因だと考えられます。ただし、中国の対日貿易と対米貿易は事実上の三角貿易であり、この状態は今後も続くでしょう。間に中国が入ったことで見えにくくなってはいますが、日本の対米依存は未だに解消されていません。

こういった歪は必ず解消されます。では今後、どの様に解消されるのでしょうか?

ひとつ目は、1ドルがそのまま60円近くまで下落するというシナリオが考えられます。中国が更なる景気刺激のために金融緩和が必要だと判断した場合にはこのシナリオが現実味を帯びてくるでしょう。実際、中国の消費者物価はここ数ヶ月低水準で安定しているため、中共は金融緩和をしても大丈夫という雰囲気に傾きつつあります。ただし、この水準までドルが下落すれば日本の対外純資産は現在の半分の価値になってしまうため、円の価値も下がり、1ドル=70円割れくらいの水準で落ち着くのではないでしょうか。

ふたつ目は、円の価値が低下すること。日本は対GDP比で2倍以上の莫大な債務残高を抱えています。S&Pの日本国債の格付けは現段階でAA-ですが、もしこれがもし格下げされてA+になれば、日本国債のリスクウェイトが0%ではなくなってしまいます。結果、その大部分を保有する国内銀行は自動的に売却を余儀なくされ、国債金利は急激に上昇します。そうなると円売りが進み、クロス円は円安に振れ、ドル円は乱高下の後適正水準に落ち着くといった流れになるでしょう。
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