秋子の退職(10)10月2日(火) 21時46分

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秋子の退職(10)10月2日(火) 21時46分

 しばらく経ったある朝、また、女房が言った。

 

「今日、辞めると言うと言っていた。何とか、言ってくれない。」

 

この言葉を聞いて、明彦はいらいらして答えた。

 

「我が家は、父親は、居ないから。」

 

 明彦には、女房も言う事を聞かないし、子供も父親の言うことを聞こうとしない過去から今までのことが、急に脳裏に浮かんだ言葉だった。そしてとても腹が立った。何時も、勝手なことを言っていながら、こんな時に何だ。そんなら、日頃から、相談すればいいんだ。

 

 数分後、玄関で、秋子と女房が一言ずつ、会話した。

 

「来年の3月まで、勤めたら。」

 

「辞めるのは、今日辞めても、同じだから。1カ月前までに言えばいいんだから。」

 

1カ月前は、間違いで、14日前までに、労働者は使用者に言えばよいことになっている。しかし、今はそんな労働基準法が、どうのこうのと言っている場合ではない。また、辞める、辞めるの、ぶり返しである。

 

 その日、明彦君は、一日中、気持ちが乱れた思いでいた。確かに、仕事はきついかもしれない。お客は3時間、待たされたあげく、機械の操作の説明が悪いといって、次の日に怒鳴りこんでくる事も聞いている。

 

 その度に、秋子や店長はお客をなだめるのに、大変な応対を迫られる。そんな日の秋子は、仕事が終わり、家に帰ってきてからが、両親にとっては大変である。不満やストレスが溜まっているので、家で不満をぶちまくのである。

 

 それに1日の労働時間は、残業を含めて、10時間の勤務である。会社にいる時間は12時間になることもしばしばである。これが1年も続けば、休日は一応あるが、心のストレスは、それ相当に有るものと思う。

 

 若くても、体力は減少してくる。坐った状態のままで、お客と接するのだから、身体中の筋力が弱ってくる。運動することの出来ないつらさ。単調な説明の仕事の毎日である。

 

 

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