四国中央市を訪ね,今も健在の井川みゆき(伊勢吉の未亡人)に直接インタビューを試みたり,井川家にかなり近い人たちから情報を引き出したり,大王製紙の社内報などの文書資料にもきちんと当たっている。相当な取材力そして筆力である。
なお同連載を通じて改めて印象深いのは,井川家の面々,かなり人品が卑しいことである。
端的に言って,横綱級のりっぱな成金である。こう言ってはなんだが,卑しさというのは多少金回りが良くなろうとも拭い去れるものではなさそうだ。いや,むしろ拡大するのかも知れない。
とまれ,ノンフィクション作家としての佐野の力量は相当なものである。これを期に彼の作品を読んでみようと,著作の一冊を携えて東北を旅している。