日経新聞に毎水曜連載されていた岸本葉子のエッセイ「シングルの老い支度」が終わった。
タイトルの通り、単身女性の身辺雑記なのだが、これがなかなかイタイ内容なのである。
もちろん、毎回細々と書き綴られる加齢に伴う不自由さ加減に、「岸本さんも、私と同じなんだ」と安堵する向きもあるだろう。そしてそうした読者、つまり単身女性のビジネスパースンを第一義的に想定したエッセイであるのは明らかである。だが、それでも「イタイ」読後感に変わりはない。
たとえば「収入が数年来漸減していて、今後上向くことはないだろう」と述べる。実際、それは事実なのだろう。ただ、その筆致から物書きとして書き続けるという決意や情熱は全く伝わってこない。「あの~、漸減しているのは収入だけ? 幸福感も同じく低減していませんか?」と慢罵を投げ掛けたくさえなる。
さて最終回。商品の引き替え票を紛失したと思っていたら、机の向こう側に落ちていた。精々この程度の内容。
彼女の人生のピークは、大学入学から最初のエッセイ集が出された頃、つまり二十歳前から二十代半ばの数年間だったのではないか、と一人勝手に考えている。