売買プランを持つことの優位性

[MDRさん]

MDRの芝一樹です。前回は本当に利益の出せる取引方法の前提条件は継続的に利益が出せることであり、そのためには運用者の心理的な負担を軽くすることが重要だとお伝えしました。今回は、この「運用者の負担を軽くする」という視点からシステムトレードについて考え、システムトレードの本当の利点を明確にしたいと思います。
運用者の心理的な負担で最も大きなものは不安です。この不安はどのようなところからやってくるのでしょうか。まず第一の不安は、トレーディングでいつまで利益を上げ続けることができるだろうか、という不安です。裁量でトレードしていると、自分がどうして利益を出せているのかが分からなくなってしまうことがよくあります。この状態になってしまうと、将来の見通しについて悲観的になり、不安を覚えてしまうのです。運用レベルでもこれはとても危険な状態で、利益の根拠が見えなくなってしまうことで今持っているポジションの手仕舞いタイミング、次のポジションの仕掛けタイミング、そして何よりそもそも仕掛けていいのかどうかが分からなくなってしまいます。しかし、システムトレードであれば取引の背景には常に明確な根拠に基づくトレーディングプランが存在します。このため、常に利益を出せる理由を見失うことがなく、いつまで利益を上げられるのか、という根本的な不安にさいなまれることがなくなります。
また、第二の不安は、負けトレードが発生してしまったときの「どこまで資産を減らしてしまうのだろう」という不安です。どんな天才トレーダーでも、常に100%市場で勝ち続けることは不可能です。勝率が100%でない以上はどうしても損失を出してしまったり、それが続いてしまうことはあります。この時に、人は大きな不安にさいなまれます。これはしっかりとした売買ルールを持っている半システムトレーダー(プロの運用者にはこのタイプが多い)でも同様でしょう。それは、自分の取引手法がどの程度のリスクを持つ取引手法なのかを定量的に評価していないからに他なりません。しかし、バックテストによって過去の成績、特に勝率、最大連敗数、ドローダウンについての数字が出そろっている売買プランを運用するのであれば、最大でどの程度の資金が減ってしまうのか、その確率はどのくらいなのかということが運用前からわかっています。システムトレードではこのような資産減に対する恐怖を軽減することができるのです売買ルールを持つ半システムトレーダーであっても、こういった過去の検証を行っていなければ不安を抑えることはできないのです。
最後に、仕掛けタイミングの不安があります。特に逆張り型の投資手法では株価が下落しているタイミングで買いを入れるため、この買い注文を入れるためにはとても強いストレスが伴います。順張り手法であれば、自分にとって有利な方向に市場が動いているタイミングで仕掛けるためまだいいのですが、長く低迷の続いている日本市場では逆張り型の投資手法が主流になっていて、中級者以上にとっては逆に一定以上上昇した後に買うということがストレスになるケースもあります。ところがシステムトレードであれば、バックテストの結果から、どんな状況で買いを入れると、どのくらいの確率で、いくらの利益が出せるのかがわかります。このため、自信を持って注文をすることができ、仮に損失を出してしまったとしても、その損失を必要経費として自然に受け入れることができるのです。
いかがでしょうか。このように、システムトレードは運用者の負担を軽減するという意味でとても素晴らしい特質を持っています。なに、不安なんて、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、人間は感情の生き物であり、その感情の中でも特に負の影響が大きい不安を軽視してはいけません。実際、どんなに利益の出せるトレーダーであっても、不安の蓄積から不眠症になってしまったり、ノイローゼになったり、という事例はたくさんあり、その結果彼らは運用を続けることができなくなってしまっています。
株式投資で長期にわたって利益を上げ続けるためには、システムトレードが最も合理的な方法と言えるでしょう。次回は、この優位性を最大限に生かすために、システムの特性で最も重視されるべき項目について考えてみたいと思います。