送電部門の売却議論が行われている
小生、資産売却の一環として、送電部門の分離・売却を行うことを検討し、結果売却してもよいと思うが、問題点を解決してからにしてほしいと考えている
問題点とは、「電力供給義務は誰が負うのか?」
現状では、電力事業者たる各地域電力会社が供給義務を負っている
都市のみならず、離島や山間部への電力供給のため、
小型発電所の設置や海底ケーブル、島と島を結ぶ送電線の設置等で供給を行っている
発電ー送電【ー配電も入れるべきと思うが】を一括して各地域電力会社が独占しているので、
その供給義務も各地域電力会社が担っている
旧電電公社がNTT東西に分割された後も、通信の提供義務を負っているのと似ている
しかし、発電と送電が分離されると、誰が電力供給義務を負うのか?
が問題となる
送電はその名の通り、電力を送るだけなので、電力供給義務を負えない
発電側が負うしかないのだが、
発電・送電分離議論の出発点には、
「電力会社の独占を排除し、発電事業への自由参入を認めることでコスト削減を促し、
結果、電力料金の引き下げを行う」
ことがある。つまり、発電は複数社が担うことになる
では、複数社が電力供給義務を果たすことができるだろうか?
平時であれば果たすことは可能であろう
ただし、いろいろな問題が考えられる
(1)発電コストが売電コストに見合わなければ、発電会社は発電を停止することもありうる
(2)機器トラブル発生時に発電所が停止した場合、自前の供給力あるいは他社の発電設備で供給力をまかなうことができるか?
(3)発電会社が経営危機に陥った場合、発電を停止する可能性がある
(4)送電会社が要求する予定電力量を満たすだけの電力を発電会社が行わない【売電コスト引き上げ】、行えない【自然エネルギーで供給不安定、発電設備の長期停止】可能性がある
考えれば、まだ問題は出てくるだろう
供給過多の時の発電抑止の規則、送電トラブル時の発電会社への損失補償などなど
全体を見れば些細な問題もあるので、発電・送電分離を判断する前に議論すべき問題と、分離すると判断した後に議論すべき問題があるが、ただコストが安くなるから、また東京電力の資産売却額が大きくなるから分離だ、では議論が短絡的すぎ、のちに問題を生じさせる可能性が非常に高い
発電・送電の分離を行ったアメリカでは送電線の保守が行われず、
老朽化した施設が原因でニューヨークを含む大規模停電が発生したし、
カリフォルニア州では発電会社が電力を供給せず停電がたびたび発生した
感情的な東京電力たたきではなく、電力の安定供給を大前提とした議論をしてほしい
余談ながら懸念を書いておくと、
発電・送電分離の議論で、「電力料金が安くなる」とよく言われるが、
本当か?という疑問と同時に、原子力も他に比べ発電コストが安い、と言われていたことを忘れるべきではない
発電コストで言えば、水力が最も安いが、ダムを作ると環境破壊が必ず起こる。少なくとも、そこにあった木々は失われる。ダムの下流では川の水量が減り、ダムを境に生態系が分断される
火力は石炭であれ石油であれ天然ガスであれ、二酸化炭素を出し続ける。温室効果ガスを垂れ流し続けた結果払うコストは、発電コストに反映されていない
自然エネルギーで言えば、
太陽光・太陽熱発電は昼間にしか発電できない。曇り・雨では効率が格段に落ちる
風力も風が吹かなければ発電できない。台風のように風が強すぎても発電できない
潮力・波力も発電できない場合が存在する
安定供給のためには、いずれも電池との併用が必須となるが、電池のコストは非常に高い。それを国内消費者および産業界が受け入れる覚悟があるかが問われる
既存の揚水式水力にすれば、電池ほどのコストはかからないが、太陽光・太陽熱と揚水式水力は相性が合わない。揚水式水力は電力ピーク時に使うものであり、昼間に使用されるのが一般的【冬は夕方から夜もありうる】揚水式水力で電力を消費する、水のくみ上げ時間帯は夜が一般的であり、太陽光・太陽熱が発電できない時間帯である。風も夜吹いてくれるとは限らない。潮も夜に満ち引きするとは限らない。波穏やかな日もある
日本近海を流れる潮流(特に、黒潮・日本海流)を利用した潮流発電も研究されている。年中安定した発電ができるのが魅力だが、発電するスクリュー(タービン)をどう海中に固定するか? が問題。日本近海とはいえ、水深は数百メートルないし千メートル以上、かつ船舶の航路ともなり、漁場でもある
核融合はまだ実験室レベル。ITERは建設途中。大阪大学等で研究されているレーザー慣性核融合はパルス状の発電しかできない。レーザービームの増幅に時間がかかり、1日数回の発電がやっと
完璧な電力源を現在の人類は手にしていない。これからも手にできないだろう
それを踏まえた議論も求められる
こんにちは
コメント、ありがとうございます
おっしゃる通り、結局誰も責任を取らない仕組みになってしまうのが怖い
利潤追求に走れば、設備投資がおろそかになる。温暖化対策なんてやってくれない
かといって、再生可能エネルギーはあてにならない
書き忘れましたが、バイオマスは安定的な供給源足りえますが、絶対量が少ない。かつ、「温室効果ガス排出量はゼロとみなす」は無理があります。人間の手で輸送・加工しているのに、吸収量=排出量は無理がある
停電頻発の社会より、停電が少ない社会の方が良いので、
議論は尽くしてほしいものだと思います
発送電分離すれば誰も供給責任を負う義務はなく停電が頻発することは明らかです。
先進国で停電率が最も低く、電圧変動も最も低いのが日本で、
それは電力会社が管轄地域で法律で供給責任を定められてるおかげです。
発送電分離をしている国々では停電の頻発に悩んでいることを忘れてはなりません。
発送電を分離すれば供給義務から解放される発電業者は
諸外国のようにできるだけ設備投資を少なくして利益を拡大することを目指すでしょう。
風力とか太陽光等は天候頼みの当てにならない電力であり、
これが増えることはますます発電が不安定になります。
無風で雨の日は停電ということになります。
送電業者は送電設備への設備投資をできるだけ減らして
送電コストの最小化を図ることになります。
送電業者は供給責任もないし、購入責任もないから
送電業者に電力を売る発電業者も経営不安を抱えるし、
電力の供給を受ける企業や家庭もいつ電気を切られるか分からない状態に置かれます。
発送電分離をいかにも打ち出の小槌のごとく考えるのは短絡的で、
枝野のような考えは大局観に欠ける発想ではないかと思います。