安部芳裕氏による「TPPの知られざる真実」より。
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このTPPに真っ先に反対したのが、日本医師会です。
混合診療を解禁したら、アメリカ型の金持ちしか医療を受けられない社会になってしまう。
ひいては国民皆保険制度が壊れてしまう可能性もある。
アメリカの保険会社にとっては、
国民皆保険制度が日本人を優遇する非関税障壁だとされてしまう危惧があるのです。
混合診療の解禁は、米国からの「年次改革要望書」によって毎年要求されてきたものですが、
日本国内でも賛否両論に分かれていて今でも激しい論戦が続いています。
日本の健康保険制度では、健康保険でみることができる診療の範囲を限定しています。
混合診療とは、健康保険の範囲内の分は健康保険で賄い、
範囲外の分を患者さん自身が費用を支払うことで、費用が混合することを言うのです。
現在では、健康保険の医療に関する価格を厚生労働大臣が決めていて、
健康保険の範囲内の診療と範囲を超えた診療が同時に行われた場合は、
初心に翻って「自由診療」として全額患者さんの負担となるルールになっています。
混合診療を解禁した方が一見便利にみえますが、
混合診療には、いくつかの重大な問題が隠されています。
(1)政府は、財政難を理由に、保険の給付範囲を見直そうとしています。
混合診療を認めることによって、現在健康保険でみている療養までも、
「保険外」とする可能性があります。
(2)混合診療が導入された場合、保険外の診療の費用は患者さんの負担となり、
お金のある人とない人の間で、不公平が生じます。
(3)医療は、患者さんの健康や命という、最も大切な財産を扱うものです。
お金の有無で区別すべきものではありません。
「保険外」として取り扱われる診療の内容によっては、
お金のあるなしで必要な医療が受けられなくなることになりかねません。
混合診療の背景には、このような問題が潜んでいます。
参考までに、日本医師会はホームページに次のような声明を載せています。
日本医師会は混合診療の容認に反対します!
社会保障を充実させることは、国の社会的使命であることが日本国憲法にも規定されています。
国が果たすべき責任を放棄し、
お金の有無で健康や生命が左右されるようなことがあってはなりません。
医療は、教育などと同様に「社会的共通資本」であるという考え方を私たちは持っています。
医療が、国民の生命や健康をより高いレベルで守るという公共的使命を強くもつものだからこそ、
すべての国民が公平・平等により良い医療を受けられる環境でなければなりません。
健康保険の範囲内の医療では満足できず、
さらにお金を払って、もっと違う医療を受けたいという人はたしかにいるかも知れません。
しかし、「より良い医療を受けたい」という願いは、
「同じ思いをもつ他の人にも、同様により良い医療が提供されるべきだ」という考えを持つべきです。
混合診療の問題を語るときには、「自分だけが満足したい」という発想ではなく、
常に「社会としてどうあるべきか」という視点を持たなければならないと考えます。
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では次回は、この国民皆保険制度がTPPにより破壊されたと仮定して想定される
それはそれはオゾマシイ未来予想図を、
堤未果氏による「貧困大国アメリカ」並びに「貧困大国アメリカⅡ」を通じて覗いてみたい。