・・・つまり(メキシコ)政府自体が、
主にイデオロギーに駆られて食糧の国際貿易の自由化を促進してきたのである。
事実、交渉相手だった米国は、
メキシコが農業分野について交渉する姿勢を見せたことに驚いたという。
米国は、自由貿易が農民の貧困を深刻化させ、メキシコの農村が不安定化する可能性について
懸念を表明した。だが、メキシコ側の交渉者は、大丈夫だと請け負ったという。
NAFTAの交渉は、メキシコ政府が貧しい人々に対して不十分ながら配慮してきた方針を撤回し、
非常に裕福な人々に奉仕するための政策実現に舵を切ったことを如実に表していた。
これは民主主義が機能不全に陥っていなければ生じなかった結果である。
そして、メキシコ政府は自ら進んでこの民主主義を犠牲にしたのである。
メキシコ政府は、トウモロコシの自由貿易化の一環として、十五年間に渡って国内価格と国際価格の差額を補填する「移行措置」と輸入量制限の実施を認められた。
この上限を超えて輸入されたトウモロコシには、関税が課されることになった。
しかし、米国からメキシコへのトウモロコシの輸出量は、1994~98年には毎年この上限を上回っていたにもかかわらず、メキシコ政府はそのお陰でインフレが抑制されたとして、超過分にも関税を課さなかった。
この超過分に課税していたら得られていたはずの収入は、二十億ドルにもなる。
****************************************
★「肥満と飢餓」
ラジ・パテル著 作品社 2,600円
第二章 あなたが、メキシコ人になったら・・・
P.081~082より、一部改変抜粋
ざっくり言うと、メキシコの小規模農家は壊滅状態になったと。
一部の大規模農家は残ったものの、米国の農産物流通に占める割合は2%にすぎないと。
次のような予測も、初めからあったと。
****************************************
米国の農民は、生産価格を大きく下回る価格でトウモロコシを売りわたしている。
たとえば2002年には、米国産トウモロコシの価格は、1ブッシェル=1ドル74セントだったが、
生産コストは2ドル66セントだった。
米国では長いこと農民が保護されてきており、農機械や肥料、貸付、輸送など、さまざまな形で政府が補助金を出しているからだ。
貿易が自由化されれば、米政府から補助金をもらっている米国産トウモロコシが、メキシコの地域経済において最も弱い立場にある貧農の生活を破壊するだろうことは、火をみるよりも明らかだった。
***********************************(同、P.072より)
現在のメキシコは、他方面で更にひどくなっているようだ。