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いずれメディケア受給者にも打撃に―米財政健全化合意






 米政府債務の上限引き上げに伴う財政健全化合意を受けて、高齢者・障害者向け公的医療保険(メディケア)の受給者は直接的な給付削減を回避したが、財政健全化合意は、いずれメディケア対象の高齢受給者にも打撃になる内容になっている。

 医療業界ロビイストや政策専門家は、ホワイトハウスと議会指導者との7月31日の合意の結果、実質的に新たな財政削減協議への道が開かれたと指摘。そこでは議会議員らはメディケア資格年齢引き上げに比重を置き、裕福な人々にメディケア保険料を引き上げるよう義務付ける「資力テスト」を実施する公算が大きいと述べている。

 業界関係者によれば、今回の財政健全化合意ではメディケア受給者を扱う医療プロバイダー、例えば病院への給付削減が容認されており、病院の各種医療サービス削減につながる恐れもあるという。

 医療関連株は週明け1日、財政健全化合意の影響に対する懸念から広範囲に下げた。ISIグループのアナリスト、ジョー・ラギエリ氏は調査リポートで、投資家たちは、議会が将来のさらなる支出削減に目を向けており、医療関連支出が「その標的になっている」と受け止め、医療関連株を売ったと指摘している。

 病院株は1日、急落した。例えば病院業界大手のHCAホールディングスは6.5%安で終了した。医療保険株は総じてそれより小幅な下落で、ユナイテッドヘルス・グループは3.2%安。翌2日の市場では、病院、医療保険株は市場全体の趨勢と足並みを合わせて小幅続落した。

 債務上限引き上げと財政健全化合意は、債務上限を2段階に分けて2兆1000億ドル(約161兆円)引き上げ、財政支出を当初10年間で9170億ドル削減する。また議会に設置される超党派委員会は、さらに1兆5000億ドルの支出削減幅上積みを目指す。委員会が少なくとも1兆2000億ドルの削減方法を見いだせないか、あるいは議会が同委員会の提案を承認しない場合は、異なった支出削減方法が発動される。

 上積みされる1兆5000億ドルの支出削減達成のため、超党派委員会はホワイトハウスと議会指導者が今夏の債務上限交渉の際に交渉テーブルに提示されたメディケアに対する抜本改革を再検討する公算が大きい。オバマ大統領は当初の交渉局面で、共和党から譲歩を引き出すため、メディケアの受給資格年齢を65歳から67歳に引き上げる案を示唆していた。同大統領はまた、資力テストにもオープンだと述べていた。

 米国病院協会(AHA)のトム・ニッケルズ上級バイスプレジデントは「こうしたさまざまな争点がすべて超党派委員会で検討されるだろう」と述べた。

 超党派委員会の勧告が法律として成立しなければ、バックアップとされている支出削減メカニズムが発動され、メディケアの支出削減を盛り込むとみられる。財政安定化合意では、こうした削減はメディケア受給者ではなく医療プロバイダーを対象にし、2%の削減率になるだろうという。

 一部の医療プロバイダーは、こうした支出削減は患者に影響せずに吸収できないと警告している。病院業界は、支出削減の場合、救命救急室(ER)に負担をかけ過ぎるようになり、重症外傷部門が閉鎖され、患者に対する最新医療サービスが削減されるだろうと警告している。

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