100年に一度の金融危機、1000年に一度の東日本大震災、ここ2年の間に想定すらしていなかった危機が私たちに訪れました。
投資家の中には、もう何がこようと驚かないという方も多くいるかと思いますが、その中で何が起きても対応できるようにリスク管理方法を考え直した方はどの程度いるでしょうか。
正直、この2つの危機を検証データに盛り込んでいれば、20,30年は安泰なのではないかとも思っていますが、システムトレードのサイトを運営し多くの方々に情報を発信する立場として、再度リスクの考え方について勉強してみようと思いました。
そこで、今さらながらではありますが、ベストセラー「ブラックスワン-不確実性とリスクの本質-」を読んでみようと思います。
本書はデリバティブ・トレーダーにして研究者のナシーム・ニコラス・タレブにより書かれた名書で、人間の思考プロセスに潜む根本的な欠陥を、不確実性やリスクとの関係から明らかにして、経済・金融関係者の話題をさらいました。さらに、刊行から1年後、サブプライム問題を契機とした世界金融危機が発生すると、「誰一人予想もしなかったインパクトのある事象」が起こる原因を原理的に明らかにした書として爆発的に読まれ、全米で150万部超の大ヒットを記録しました。
表題であるブラック・スワンとは、オセアニアで発見された黒い白鳥のことで、それまで黒い白鳥は存在しないとされていた学説が、その発見によって覆されました。
ブラック・スワンが象徴するのは、理論というものを「検証」することは非常に難しく、「反証」することは非常にたやすい、ということです。ここが非常に重要なのですが、我々は常にブラック・スワンを発見してからしか、ブラック・スワンを含む理論を作れないのです。サブプライム問題に代表されるような、ファイナンス理論が想定していない事態は、そもそも理論で管理することが不可能なのです!
リスクをコントロールする戦略が不可能ならば、不確実性を積極的に活用するしかない、とタレブは説きます。専門であるトレーディングの例としては、ポートフォリオの大部分はアメリカ短期国債のような超安全な資産に投資しつつ、残りの10~15%をあらん限りのレバレッジを効かせたハイリスクな資産に投資するという「バーベル」戦略を説明します。こうすることで、悪いブラック・スワンによる破綻のリスクを避けながら、良いブラック・スワンーー大穴ーーを引いたときには大きく資産を増やすことができる、という考え方です。
ぜひ皆さんも読んでみてください。
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