去る03月01日にバーナンキFRB議長が米・上院銀行委員会で議会証言
質疑応答ポイントは以下のとおり
<ドルの価値低下>
◆ドルが準備通貨の地位を失っているとの証拠はない◆ドルからの主要なシフトは見られない
◆大規模なドル離れが起きているとは考えていない
<債務上限引き上げ失敗による債務不履行の危険性>
◆それはきわめて危険で、回復を終わらせることになりかねない。◆新たな金融危機が発生することはほぼ確実だ。
◆利息や元本の受け取りに依存する企業は受け取りがなくなり支払い不能となる。
◆世界で最も流動性の高い米国債市場に対する信頼は大きく損なわれる。
◆金利は急上昇し、国債のみならず他の多くの資産に影響を及ぼすことになる。
◆短期的な影響としては、2008年の金融危機時に生じた不安定な状況とほぼ同じことが再び起きる
◆米経済にとって大変悪い結果をもたらすと思われる。
<長期金利と議会>
◆市場は米政府の長期的財政規律に注目している。
◆長期金利は、FRBが行う措置よりも長期財政計画をめぐる議会の決定に大きく左右される。
◆財政面での是正策なければ、金利は上昇するだろう◆マーケットは、財政問題に対する”政治意思”に注目している
<商業不動産市場改善の兆し>
◆商業不動産に関する最悪の懸念は現実化してはいないようだ
◆空室率や価格などある程度安定してきていると言える◆借り換えが必要な不動産物件はまだ多く、恐らく銀行は依然としてある程度の損失を被る
◆貸し手は、住宅価格の行く末に不安を感じている
◆銀行は優良な借り手への融資に積極的になりつつあり、景気後退による衝撃が薄れつつある◆住宅差押さえ件数の抑制、成功は限定的なものだった
◆商業不動産は確実に金融システムへのリスクだが、6カ月前と比べわずかに改善している
<QE2(量的緩和第2弾)終了に伴う金利への影響>
◆前回の(緩和)プログラムが終了した昨年第1四半期には、市場はプログラム終了を十分に見込んでおり、金利への大きな影響は見られなかった。
◆そのため今回のQE2プログラムを終了する時が来ても、大きな影響はないと予想している。
◆金利水準に影響を与えるのは、新規買い入れの流れではなく、実際には保有総額だと考える。
<QE2の決定方法>
◆われわれは種々の方法に従い、買い入れと通常の金利政策との対応について試みてきた。
◆経験則によると、1500~2000億ドルの買い入れは、経済への刺激効果という点から、フェデラルファンド(FF)金利でおよそ25ベーシスポイント(bp)の引き下げに相当にするとみられる。
◆6000億ドルの買い入れによる全般的な効果としては、およそ75bpの利下げに相当する。
◆75bpの利下げは通常であれば非常に強力な動きと考えられるが、歴史的経験の範囲から外れているわけではない。
◆それは懸念される時期においてとられる措置で影響はその後、見極められる。
<ガソリン価格について>
◆ガソリン価格の上昇は、多くの人にとって大きな問題だ
◆原油価格の変動は受給に基づいたものだ
◆今のところ、回復もしくは全般的なインフレ安定の維持に重大なリスクを及ぼしてはいない
◆状況を引き続き注視する必要があり、一段の著しい上昇が見られる場合、非常に深刻に受け止める必
要がある
<米経済>
◆消費および企業投資の持続的回復が定着しつつある可能性を示す一段の証拠が見られる。
◆家計および企業の信頼感向上、金融緩和政策、信用状況の改善により、2011年は昨年よりも速いペースで回復する可能性が高い
◆米財政赤字が持続不可能な軌道にとどまれば、金利は大幅に上昇する可能性がある◆米国には信頼ある赤字削減計画が必要だ
◆FRBの金融安定計画は、米国に益あるものだ
◆600億ドルの削減は初年度に0.1-0.2%成長を引下げるだろう
◆米国の財政赤字は非常に深刻な問題だ
◆リセッション(景気後退)からの回復は、テクニカルなものに過ぎない
◆成長は、新規の労働参加者の雇用創出を満たすに過ぎない
◆経済回復、まだしっかりと根付いたとは言えない
◆経済が縮小していないという点で景気後退は終了だが、これは状況が正常化したという意味ではない
◆州・地方政府は、財政問題への対処で進展している
<労働市場>
◆昨年12月と今年1月の失業率の顕著な低下、新規失業保険申請件数の減少、企業の採用計画など、向こう数四半期の労働市場に関して楽観視できる一定の根拠が見られる。
◆経済成長率が予想通り緩やかなままであれば、失業率が正常な水準に戻るのに数年を要する
◆600億ドルの歳出削減、約20万人の雇用喪失につながる
◆労働市場の改善が続かなければ、消費者の信頼が失われ、回復が失速するリスクある
<インフレ>
◆商品価格の上昇を深刻に受け止めるが、ドルのせいではないと考える
◆インフレ判断について、ガソリンなど個別商品と全体の価格水準を区別する必要
◆総合インフレ率が上昇し始めれば、FRBは懸念を強め、金融政策行動を取る
◆FRBは1970年代のインフレ問題から教訓を学んでいる
◆物価が引き続き抑制されているとの信頼を確実にするため、インフレ期待を注視していく
◆地方債市場の動向を注視しているが、状況は最近やや改善してきている
◆長期的なインフレ期待はフラットだ
◆景気失速のリスクは小さくなってきた
◆全般的なインフレは低いものの、昨年夏以降、ガソリンや他の商品(コモディティ)を含め、一部非常に目に付く価格の大幅上昇が見られた。
◆中東・北アフリカの不安定な情勢への懸念や、それが世界的な原油供給に及ぼす潜在的な影響が、石油・ガソリン価格の一段の上昇につながっている。
◆原油など商品価格の持続的な上昇は、インフレ期待の十分な抑制が損なわれるようであれば、経済成長と全般的な物価安定の双方にとって脅威となる。◆FRBはインフレ動向を注視
◆FRBは自律的で持続的な景気回復を望む
<QE2>
◆FRBは適切な時期に資産買入れの解除が必要
◆緩和政策は適切な時期に解除する必要がある◆QE2はおそらく多大な効果をもたらした
◆QE2は主に資産価格への効果として機能し、これらの効果は非常に大きかった