理想を失った「全共闘の亡霊」が日本を迷走させる

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理想を失った「全共闘の亡霊」が日本を迷走させる

 中々、良くできた現状分析だと思いますが…
 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/4781
 ”中国やロシアが領土問題で、日本に対してにわかに強硬な姿勢を見せ始めたが、これに対する民主党政権の対応が定まらない。

 尖閣諸島の問題を巡っては、政府の対応が迷走し、中国に首脳会談をドタキャンされ、衝突のビデオは一般に非公開で見せる始末だ。

 特に目立つのが菅直人首相の指導力のなさである。「友愛」とか「東アジア共同体」とか、意味不明ながらも理念のあった鳩山由紀夫前首相に比べても、菅氏が何をやりたいのかが見えない。

 他方、今や菅首相より存在感を増している仙谷由人官房長官の姿勢は、よくも悪くも、まだ明確だ。尖閣諸島を巡る検察の「外交的配慮」を擁護し、日本の対応を「弱腰」ではなく「柳腰」だと弁護する。

 この2人に見られる共通点は、学生運動の影響である。民主党には、この他にも元活動家が多く、千葉景子前法相は中央大学全共闘(ブント系)、赤松広隆前農水相は早稲田大学の社青同解放派の活動家だったと言われている。

 これは当時としては、それほど珍しいことではなかった。1960年代には、まったく学生運動に関わりを持たなかった学生の方が少ない。

 彼らは「全共闘世代」と言われるが、正確に言うと菅氏は全共闘ではなく、東京工業大学で「全学改革推進会議」という組織を設立し、穏健派の学生運動のリーダーだった。他方、仙谷氏の所属したのは東大のフロント(社会主義同盟)で、こちらも議会を通じて「構造改革」を進めようとする穏健派だった。

 今では想像もつかないだろうが、当時の学生運動の主流は「三派全学連」と呼ばれた社学同(ブント)、社青同、中核派などの暴力革命によって権力を掌握しようとするマルクス・レーニン主義であり、菅氏や仙谷氏のような議会主義は少数派だったのである。


 左翼の失われた理想
 しかし全共闘運動の命は短かった。69年1月の安田講堂の攻防戦をピークとして、主流派の活動家は逮捕され、分裂した組織は連合赤軍のように武装闘争に走り、内ゲバで自滅した。

 全共闘の活動家も、多くは就職して企業戦士に転身した。荒井由実(現・松任谷由美)の「『いちご白書』をもう一度」の世界である。

 他方、何万人という活動家が、逮捕歴などの「前科」のために就職できず、自営業・弁護士・フリーライターなどの仕事に就いた。テレビの制作プロダクションや編集プロダクションを創立したのも、元全共闘の闘士たちだった。

 それに対して菅氏や仙谷氏のような穏健派は、社会党などの政党に入って議会によって社会を変える道を選んだ。

 70年代は共産党が躍進して「民主連合政府」構想を提唱し、各地で社共共闘による「革新自治体」が生まれた時代だった。しかし、東京都の美濃部亮吉知事に代表される革新自治体は、バラマキ福祉で財政が破綻し、消えていった。

 80年代には、日本は世界最強の経済大国として賞賛され、バブル景気に沸いた。就職の時に「転向」した企業戦士たちは、企業の中枢で資本主義の先頭に立っていた。ある時までは彼らも後ろめたかったかもしれないが、80年代に社会主義が崩壊し、学生時代の理想がもともと幻想だったことに気づいただろう。

 90年代のバブル崩壊で失われたのは、日本経済だけではない。社会党は自民党などと野合して連立政権をつくり、安保や自衛隊を丸呑みして自滅した。極左勢力は、内ゲバで殺し合って壊滅した。かつて社会主義に至る路線論争で闘っていた左翼の目標そのものが失われてしまったのだ。


 沈黙してしまった若者
 そんな中で、96年に民主党が結成された。これは崩壊した自社さ連立政権の一部だった新党さきがけに社民党の一部が合流したもので、菅氏は創立メンバーだった。これに解党した新進党グループが合流し、さらに2003年に自由党が合流したため、民主党は統一した理念のない雑然とした政党になってしまった。

 かつて「反体制」に生涯を捧げる決意をし、資本主義を打倒して労働者の理想社会をつくるはずだった彼らの目的は、とっくに失われた。かといって自民党のように、あからさまに資本主義を擁護する政党にはなれない。ただ集票基盤が労働組合であるため、かろうじてその既得権を守るという利害関係だけでつながっている。

 だから菅氏の行動が定まらないのは、もう目指すべき理念がないからなのだ。他方、仙谷氏は人権派弁護士として「アジアへの戦争責任」を追及した頃の行動様式が抜けない。

 どちらも社会主義的な思考様式が残っているため、「雇用を守る」と称して派遣労働を規制するなど、市場経済のロジックが身についていない。

 60年代に世界的に盛り上がった学生運動にどういう意味があったのかは、繰り返し問われるテーマである。米国では、クリントン元大統領のようにベトナム反戦運動に参加した「団塊世代」が政権を取り、かつての左翼の影響はほぼ一掃された。

 しかし、日本では左翼が長く政権を取れなかったため、政治的に未成熟のまま年を取り、今頃政権を取って戸惑っている。

 社会主義の代わりに「福祉国家」を掲げても、財政危機でバラマキ福祉はままならない。かつての「怒れる若者たち」は、今や労働組合と老人の既得権を守る側に回っている。

 全共闘運動には何の意味もなかったが、若者が老人に対して異議を申し立てることは、どの社会でも必要だ。しかし日本では、学生運動のあまりにも無残な失敗によって、若者の抗議活動が絶滅してしまった。

 大学新卒者の「無業率」が2割を超えるような状況では、暴動が起こっても不思議ではないが、若者の怒りの声は聞こえてこない。かつての全共闘のような騒ぎはごめんだが、若者がここまで「老成」してしまった社会というのも心配だ。”
 マスコミや政治家(特に民主、社民、共産)の前身と、その行動様式が良く分かる分析…と言いたい所ですが、残念ながら分析は有っても、では具体的にどうするかが抜け落ちている点が残念と言えば残念ですかね。

 ただ、この手の警鐘(啓蒙の方が言葉として合ってますか?)は既に分かる人は分かっています。いままで興味なかった層は…読むのかな?
 まぁ読んで未来を考える材料にして欲しいとは思いますがね。

 PS.
 鳩山の理念とやらも、基本この系譜って事ですよね…
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