日頃、初対面の人と話す機会があると思います。第一印象
が肝心であるとつくづく思います。第一印象とは、単に見栄
えだけでなく、その人の所作そのものです。
お互いの生活や仕事上で関わりがない相手との偶然の出逢
いであれば、こちらの印象や振る舞いなどどうでもいいと考
える人がいるかもしれませんが、そうした考えはそうではな
い場にありましても見え透いてくるものです。
英語では「一度与えた第一印象をやり直すチャンスは二度
と訪れない」(下記)と言いますが、和語では「一期一会」
です。
You never get a second
chanceto make a first
impression.
一期一会とは、もしかしたら二度とは会えないかもしれな
いという覚悟で人に接しなさいという心得であり、その方法
として武道や芸道には「残心」というのがあります。
武道におきましては、勝負が決した後も、相手を意識しな
がら反撃を瞬時に返すことができるよう身構えている精神の
状態を言い、試合において残心がないと勝敗無効とされるこ
ともあります。例えば剣道の試合においては一本取った事を
喜びガッツポーズなどすれば、奢り高ぶっていて残心が無い
とみなされ、一本を取り消される場合もあるそうです。
芸道における残心は千利休の道歌(下記)に端的に表現さ
れています。
何にても 置き付けかへる 手離れは
恋しき人に わかるると知れ
(手を離す時は、恋しい人と別れる時の
ような余韻を持たせよ)
残心とは最後まで心を残すこと。心を途切れさせないこと
であり、それは相互扶助であるという認識を忘れずに心の緊
張を持続させること、相手を尊重する思いやりの心でもあり
ます。
普段の生活におきましては、だらしなくない事や気を抜か
ない事、卑怯でない事であり、決して驕らず高ぶらず、最後
まで「きちっと」する事です。
一期一会の気持ちで残心を持って人に接すれば、価値ある
人と一期一会(生涯にただ一度の交わり)ではなくなり、自
分の人生も豊かなる、改めてそう思うのです。