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「フレンチ・ショック」はまだだが・・・

先週金曜日の米国株式相場は小幅反落した(DJIA -45.20 @39,118.86, NASDAQ -126.08 @17,732.60, S&P500 -22.39 @5,460.48)。ドル円為替レートは161円台前半の前日比円安水準での動きだった。本日の日本株全般は高安まちまちとなった。東証プライムでは、上昇銘柄数は796に対して、下落銘柄数は790となった。騰落レシオは112.60%。東証プライムの売買代金は3兆8632億円。

TOPIX +15 @2,824
日経平均 +48円 @39,631円

米国では、5月個人消費支出(PCE)価格指数の伸びが鈍化した。コア指数は前月比+0.1%、前年比+2.6%となり、事前の市場予想と一致した。また、6月ミシガン大学消費者信頼感指数確報値は68.2%
(>予想65.8%)は予想よりもやや強かったが、1年先期待インフレ率確報値は前月分の3.3%から3.0%へ低下し、5年先期待インフレ率確報値も3.1%から3.0%へ低下した。その結果、米10年債利回りは前日の4.288%から一時4.261%まで低下する場面があったが、終値では4.396%となった。利下げ期待が高まり、S&P500とナスダックはザラバで史上最高値を更新したが、期末特有のリバランス(持ち高調整)目的の売りが多く出て、主要3株価指数は揃って小幅反落した。

本日の東京市場では、ドル高・円安基調を背景に輸出企業の収益改善期待が日本株全体を下支えした。日経平均は一時300円超上げて、心理的節目(=上値抵抗線)となる4万円に近づくと売りに押し返された。他方、日銀の追加利上げ観測が高まり(7~10月?)、長期金利が上昇していることでその恩恵を受ける第一生命やMS&ADなどの保険株や銀行株が引き続き上げた。しかし、買いが一巡すると伸び悩んだ。4万円の心理的な上値抵抗線と上場投資信託(ETF)が分配金捻出のためにポートフォリオの一部を換金するために売ってくる(7月8日、10日の2日間で1兆2000億円くらいの売り需要がある)ことを警戒した。中東情勢の緊迫化によりスエズ運河の通航を避け、喜望峰周りで積み荷を運ぶ海運会社が増えており、その分だけ運送日数が増加して、運賃が上昇している。コンテナ運賃も上昇した。その結果、海運大手3社の収益が改善すると見られ、本日は海運3社の株価は上げた。

発表された6月の日銀短観では、大企業製造業の業況判断指数(DI)が3月調査から改善した(プラス13>前回11)。事業計画の前提となる2024年度の想定為替レートは輸出企業で1ドル=142.68銭(>前回調査1ドル=140円40銭)なので、足元の160円近辺とは大きなプラス乖離がある。因みにトヨタ自動車の2025年度の想定為替レートは1ドル=145円であり、トヨタは1円・円安になる毎に収益が500億円増加する為替感応度を持つ企業である。ただ、大企業非製造業の数値を見ると業績判断DIはプラス33(<3月調査、プラス34)へ低下し、さらに、小売業に注目するとプラス19(<前回調査、31)から12ポイントも落ち込んだ。物価高で売り上げが大きく落ちている現実を反映しているだろう。

フランスでは6月30日に国民議会(下院)選挙の初回投票が実施され、ルペン氏率いる極右政党である国民連合(RN)が投票率首位となったが単独では過半数を取れなかった。右派が議席を伸ばすことは事前に予想されていたたため、株式相場には既にある程度織り込まれていたため、本日のところはこれと言った悪材料とは見做されなかった。しかし、左派も台頭し、その結果、与党が勢力を大きく落とした。このまま行けばフランスの政権分断は深刻化する。その先にあるのはフランス国債の急落とそのショック(フレンチ・ショック)が、たとえ一時的にせよEU及び世界の金融・外為市場を揺さぶりかねない。7月7日の2回目の投票(決選投票)まで確定はしないが、与党の中道連合は解散前の250議席から60~90議席まで減ると予想されている。極右政党と左派政党は政策が違うが、折り合える共通項が一つだけある。それは「人気取り」のために財政政策により政府の支出を増加するということである。欧州連合(EU)は、参加条件として債務残高を国内総生産(GDP)比で60%以下、財政赤字は同3%以内に抑えるという財政ルールを順守するように加盟国に求めている。しかし、1999年にユーロが誕生して以来、フランスはこの2つの基準を満たしたことがほとんどない。2024年予想は財政収支は4.8%の赤字で、債務残高は111%である。それでも共通通貨ユーロがあるため資金繰りに困ることはなかった。通常の国なら長期金利が上昇するとその国の通貨は高くなるのだが、フランス国債が売られてフランスの長期金利が上昇すると、おそらくユーロは下がるだろう。すると、ドル円では有効だったキャリートレードが対ユーロでは難しくなることを暗示し、為替レートの変動が金利差から政治・経済の安定と言う側面に焦点が移ることになる。

日経平均の日足チャートを見ると、高く寄り付いたがその後は売りに押されて陰線で終えた。チャートは上方向に行きたがっているように見えるが、その方向への動きはそれを逆行させるような大きな材料が今後飛び出して来なければという条件付きであることを常に肝に銘じておかなければならない。チャートは役に立つが割と頻繁に期待外れの動きをする。予想だけに頼っていては市場平均並みのリターンしか得られない。だから、もしそうなっても困らないようにするには何をどのような原理に基づいてどう考えてどう行動するのかを事前に決めておくのだ。そして、その体系が「売買ルール」である。当然、その売買ルールの有効性と限界はバックテストして十分理解しておかなければならない。

33業種中23業種が上げた。上昇率トップ5は、海運(1位)、保険(2位)、石油・石炭(3位)、鉄鋼(4位)、鉱業(5位)となった。

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