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Testimony of George Soros #4

#3
http://minkabu.jp/blog/show/100731

潜在的な利益の増大を目的として信用にレバレッジをかけリスクを管理するために、金融工学は次第に洗練されてゆく金融商品、もしくはデリバティブの創造を必要とした。合成金融商品のアルファベットの羅列が作り上げられた。CDO、CDO-squared、CDS、ABX、CMBX、etc。金融工学は、当局がもはやそのリスクを計算することは出来ないレベルの複雑さまで達し、金融機関自身のリスク管理モデルに頼ることとなった。格付け会社も合成金融商品の格付けにおいて同じ道を辿り、それらの普及により少なからぬ収益を上げることとなった。難解な金融商品とリスク管理技術は、市場での振る舞いにおいて、平均からの逸脱はランダムに発生するという誤った仮定に基づいていた。しかし、金融工学の使用の増加により、ブーム&バストのプロセスが始まった。それゆえ、最終的に大変なことになった。当初は、たまにおこる金融危機は上手く乗り越えられた。しかしサブプライム危機は、異なる役割を演じることとなった。その危機はスーパーバブルの頂点、もしくは反転ポイントとなった。

現在の状況の解釈は、必ずしも私のブーム&バストモデルに従うものではないことは強調されるべきであろう。もし金融当局が、彼らがそれが可能だと考えていた通りにサブプライム危機を食い止めることに成功していたのなら、サブプライム危機は反転ポイントではなくて、また別の上手く乗り越えられた試練だと見なされていただろう。私は過去に3回、狼が来たと叫んだ。最初は1987年の「The Alchemy of Finance(邦題:ソロスの錬金術)」において、それから1998年の「The Crisis of Global Capitalism(邦題:グローバル資本主義の危機)」、そして現在だ。現在だけ、狼がやってきた。

金融市場に対しての再帰性に基づいた私の解釈は、出来事を予測することよりも出来事を説明することが得意だ。それは以前の理論よりも野心的ではない。それは均衡理論のように、結果を決定することを主張しない。それはブームは最終的には破裂につながるはずだと強く主張できるが、ブームの程度や期間については決定できない。実際、住宅バブルを認識していた我々も、そのバブルはもっと早く弾けると予想していた。もしそうなっていたならダメージはもっと小さく、スーパーバブルは存在し続けたかもしれない。ダメージの大部分は、住宅バブルの最後の2年間に発行されたモーゲージ関連の証券によるものだ。

新たなパラダイムは未来を予測することを主張しないため、それは今まで進歩しなかった。しかし、最近の経験を鑑みるに、それはもはや無視することができない。再帰性は以前の理論が考慮しなかった不確実性の要素を金融市場に導入するという事実を、我々は受け入れなければならない。その以前の理論は、リスクを計算し、モーゲージの束を他の債務と同じように取引可能な証券に変換するための数理モデルを確立することに使われた。定義からして不確実性は定量化できない。このような数理モデルへの過度の依存は、莫大な損害をもたらした。

新たなパラダイムは、金融機市場の規制にとって広範囲に及ぶ意味合いを持っている。金融市場は資産バブルを生み出す傾向があるので、Fedや財務省やSECなどの監督機関は、バブルの巨大化を防止する責任を引き受けなければならない。今まで金融当局は、明らかにその責任を拒否してきた。

バブルが形成されるのを防ぐのは不可能だが、バブルを許容範囲内に保つことは可能であるべきだ。マネーサプライをコントロールするだけでは、それは出来ない。監督機関は、信用についても考慮しなければならない。なぜなら、マネーと信用は密着して動くわけではないからだ。市場は気分と偏りを持っていて、それらと釣り合いを取りながら監督機関のもとにやってくる。市場は判断することを求め、監督機関は人間でもあるので、彼らは間違いを犯す運命にある。しかし、彼らは市場からフィードバックを得るアドバンテージを持っていて、それは彼らが間違いを修正することを可能にするはずだ。マージンと必要最低資本を厳しくすることがバブルを収縮させないなら、彼らはそれらをもっと厳しくすることができる(証拠金と必要最低証拠金?まあ、レバレッジを落とさせるってことでしょう)。しかし、プロセスは簡単なものではない。なぜなら、市場は間違いうるからだ。最善の均衡点の探求は、決して終わらない試行錯誤プロセスに違いない。

監督機関と市場参加者のいたちごっこは既に進行中であるが、その本質は未だ認識されていない。アラン・グリーンスパンは、曖昧な表現(Delphic utterances)で市場をうまくコントロールするマスターであった。しかし、自分が行ったことを認める代わりに、彼は自分は事実の観察者に過ぎないと装った。再帰性は、秘かな状態であり続けた。そのためスーパーバブルは彼の在職期間中、成長し続けることが出来た。

マネーと信用は密着して動かず、資産バブルは金融的な手段では完全にコントロールできないので、追加の手段が採用されるか、もしくはより正確に(金融的な手段を)復活させなければならない。なぜなら、1950年代と1960年代にはそれら(金融的な手段)は有効であったからだ。私は様々な必要マージンと必要最低資本に注目する。それらは市場参加者が用いることのできるレバレッジの量をコントロールするのに向いている。中央銀行は、銀行に対しある特定のセクターにどのようにローンを割り当てるべきかの指示を出したことさえあった。このような指示は、ITや不動産などの特定のセクターにおける”根拠なき熱狂”と戦うのに、金融政策による鈍い手段よりも好ましい可能性がある。(”根拠なき熱狂”は1996年にグリーンスパンが当時の株高について言った言葉)


#5へ続く
http://minkabu.jp/blog/show/101167
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