―帰ってきたナイトエコノミー、「食」のDX推進も新たな形の需要創出へ―
政府が19日決定した新たな経済対策に絡み、「Go To キャンペーン」を追い風とする外食やサービスといったリベンジ消費関連銘柄に注目が集まりそうだ。緊急事態宣言の全面解除が発表された9月以降では、経済活動の正常化を見込んだ投資資金が関連株に流れ込む場面があった。しかしエネルギー価格の上昇や人手不足などでジリジリと上がりだした物価への警戒と先行き不安で鈍い足取りになるとの見方から、いったん利食いの動きが優勢となった。ここにきて新型コロナウイルス感染症が収束の動きをみせるなか、足もとでは外食業界に客足回復の兆しが徐々に見え始めている。年末に向けて忘年会やクリスマス関連需要も加わることで、株式市場でもリベンジ消費の波に乗る外食関連株に投資資金が還流することが期待される。
●外食産業は「夜明け前」
日本フードサービス協会が発表した外食産業市場動向調査で、9月度の外食市場の全体売上高は前年同月比8.2%減となり、2ヵ月連続で前年を下回った。飲食店予約・口コミメディアとして知られる「食べログ」を運営するカカクコム <2371> が10月20日、22年3月期の連結業績予想について、営業利益を236億円から215億円(前期比17.5%増)へ下方修正した。食べログ事業が期初計画を下回る見込みとなったことが要因で、厳しい外食の事業環境を反映した内容だった。しかし、下方修正を発表した翌日の株価は小幅の下げにとどまり、外食産業の「夜明け前」を予見する投資家の姿勢を表す動きとなった。
実際、新型コロナの感染者数が急速に減少したことを受け、東京や大阪などで飲食店への営業時間短縮要請が10月25日に解除され、午後8時までの酒類提供制限もなくなった。同じく飲食店情報サイトを運営するぐるなび <2440> によると、10月1~15日の飲食店ネット予約件数は、緊急事態宣言が発令されていた9月の同期間に比べ約2.6倍に増加したという。
●「ナイトタイムエコノミー」復活で居酒屋関連銘柄群に注目
外食の中でも、コロナ禍での影響を最も受けた「ナイトタイムエコノミー」に関連する 居酒屋・カラオケ株が売られていたが、それだけに業績面回復への期待も大きい。こうしたなか、居酒屋「甘太郎」を中心に展開するコロワイド <7616> や居酒屋大手のワタミ <7522> 、大庄 <9979> 、チムニー <3178> などの注目度が高まっている。また、緊急事態宣言明け後のリフレッシュ方法としては、外食よりもカラオケが人気になるとの見方もあり、ようやく営業再開が可能となったカラオケ業態の展開にも関心が集まっている。関連銘柄はコシダカホールディングス <2157> 、鉄人化計画 <2404> [東証2]、DDホールディングス <3073> などが挙げられる。
●デジタル化が進む外食チェーン
外出自粛で、20年の外食市場規模は前年比2割近く減少したと言われている。こうしたなか、コロナ禍を背景に外食産業においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きが加速しており、株式市場でも注目が集まっている。スマートフォンアプリを通じて、店舗の外から事前注文・決済を行うモバイルオーダーは、日本マクドナルドホールディングス <2702> [JQ]、吉野家ホールディングス <9861> 、元気寿司 <9828> などテイクアウト・デリバリーの売上割合が大きい大手外食チェーンを中心に導入が進んでいる。これによってもたらされる運営の効率化や販路の拡大が、むしろ業績の成長につながっている。
同じくモバイルオーダーを活用し、「丸亀製麺」などを展開するトリドールホールディングス <3397> にも注目したい。同社が12日に発表した今4~9月期営業損益は82億800万円の黒字(前年同期27億700万円の赤字)と黒字転換し、通期計画68億円の黒字を上回って着地した。国内において主力の「丸亀製麺」でうどん弁当の販売などテイクアウト策を強化したほか、海外においても新規出店を継続したことが寄与した。同社では28年3月期には海外店舗数4000店と現在の6倍以上にする計画であり、中長期的な成長に陰りはない。信用倍率は0.8倍と需給妙味がある。
このほか、低価格イタリアンレストランを展開するサイゼリヤ <7581> にも目を配りたい。同社が10月13日に発表した22年8月期の連結業績予想では、営業損益が70億円の黒字(前期22億6400万円の赤字)と黒字転換の見込み。アフターコロナを見据えた出店戦略や販売戦略を推進するとともに、利益体質強化のため店舗や工場での食材ロスの削減や設備改善による作業の生産性向上に取り組むとしている。同社株は空売りも呼び込んでおり、信用倍率0.8倍台と踏み上げ相場の素地を内包している。
●自宅では味わえないご褒美外食
お祝いや会食など非日常的な“ご褒美外食”の復活も期待されている。高価格帯のファミリーレストランを手掛けるロイヤルホールディングス <8179> は12日、未定としていた21年12月期の連結業績予想について、営業損益77億円の赤字(前期192億6900万円の赤字)と赤字縮小を見込んでいることを発表。第4四半期(10-12月)の外食やホテルといった既存事業の売上高は19年の8割程度を想定しているが、実際10月には、既存事業の売上高はコロナ禍前の19年に比べ7~8割の水準まで回復しており、特にてんや・ロイヤルホストはほぼコロナ禍前の水準まで伸長した。今後は主力の外食事業では季節感のある素材の使用など高付加価値メニューを強化し非日常感を作り出すことで需要を取り込む一方、デリバリー中心の新業態への取り組みも推進していく構えだ。
また、高級居酒屋を直営で展開するきちりホールディングス <3082> や、高級フランス料理店「ポール・ボキューズ」などを手掛けるひらまつ <2764> 、和食レストラン「権八」などを運営するグローバルダイニング <7625> [東証2]、食べ放題「焼肉きんぐ」が主力の物語コーポレーション <3097> といった銘柄もある。
株探ニュース
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