株式会社ZIPAIR Tokyo(代表取締役社長:西田真吾、以下「ZIPAIR」)、株式会社エムティーアイ(代表取締役社長:前多俊宏、以下「エムティーアイ」)、および国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(理事長:山川宏、以下「JAXA」)は、航空機の運航における被雷リスクを軽減すべく、気象データの軽量化と雨雲情報の可視化に向け連携を開始します。 本取組みでは、エムティーアイが提供する航空気象サービス『3DARVI』にJAXAが開発した衛星全球降水マップ「GSMaP」を搭載し、新たな機能「IN FLIGHT(インフライト)モード」を開発しました。これにより、パイロットは飛行中のコックピットから最新の悪天候情報を確認できるようになり、より安全な運航ルートを選択できるようになります。
◆連携の経緯・「IN FLIGHTモード」開発内容
航空機の運航において、気象状況の把握は重要な要素です。特に雷は、航空機が帯電した雲に近づくことで誘発されることが多く、日本国内では年間数百件の被雷被害が発生しており、被雷リスクを予測し回避する対策が喫緊の課題となっています※1。被雷リスク予測のためには、刻一刻と変化する気象状況をリアルタイムに把握する必要がありますが、航空機のコックピット内では電波干渉の観点から通信が制限されており、最新状況を確認できる気象サービスをネットワーク経由で利用することは難しい状況にありました。
その中、ZIPAIRとエムティーアイとJAXAは上記課題の解決をすべく、航空気象サービス『3DARVI』の新たな機能として、コックピット内の通信環境下での利用を可能にした「IN FLIGHTモード」の開発に連携して取り組み、2024年4月以降体制が整い次第ZIPAIRで運用を開始します。
またJAXAは、地球観測データの解析などに基づく成果による社会課題解決への貢献を目指し、先端宇宙技術の活用による、様々な領域における地球観測データの利用促進に取り組んでいます。今回、その取り組みのひとつとして、「IN FLIGHTモード」にJAXAの「GSMaP」を搭載することで、パイロットの気象情報のリアルタイム認知による航空機の安全運航と飛行中作業の負担軽減といった課題認識の解決に貢献します。「GSMaP」を航空機内に搭載するのは今回が初めてになります。
◆コックピット内で3D気象情報の確認を実現した「IN FLIGHTモード」!被雷回避可能な運航ルートの選択へ
「IN FLIGHTモード」はエムティーアイのこれまで培ってきた3D描画のノウハウを生かし、容量の大きい3Dの気象データを大幅に軽量化することでコックピット内での通信を可能にしています。パイロットは地上運航従事者からの天候に関するアドバイスと合わせて、飛行中に自ら手元のタブレットにて最新の気象情報を視覚的にも分かりやすい3D描画で確認できます。また、航空機内での活用が初となるJAXAの「GSMaP」を搭載することで、衛星から検知した世界中の雨雲情報を上空でも確認が可能です。これにより運航中に最新の気象情報を確認し、被雷回避などによる最適な運航ルートの選択を実施できるようパイロットをサポートします。
今後ZIPAIRとエムティーアイは、本取組みを通じて航空機の被雷被害軽減における効果検証を行うことで、安全性の高い正確な運航サポートを目指すとともに、「IN FLIGHTモード」の機能改善に繋げます。
JAXAは、効果検証を通して得られるパイロットなどからのフィードバックを踏まえて「GSMaP」の改良や、新しい分野における地球観測データの利用促進を目指します。
<航空気象システム『ARVI』、『3DARVI』について>
『ARVI』は、航空機の運航に影響を与える気象情報とフライトプランを、ひとつの画面でまとめて確認ができる航空気象システムです。
リアルタイムな気象現象と飛行ルートをひと目で確認でき、運航管理者による気象条件の良いルート選択や、安全なフライトプランの作成を支援します。また、データ量の大きい複数の気象情報を重ねて表示してもスムーズに操作ができるため、パイロットや運航管理者は、飛行ルート上に危険な気象現象が発生していないかを素早く確認でき、業務の効率化も図ります。さらに気象現象を3Dで可視化する『3DARVI』も提供し、直感的かつ迅速な情報の把握を可能とすることで、航空機の安全な運航をサポートしています。
『3DARVI』の「IN FLIGHTモード」は、気象データを大幅に軽量化することで、飛行中に航空機のコックピットから最新の気象情報を確認できる機能です。
『ARVI』の詳細についてはこちら : https://www.aviavi-arvi.com/
<衛星全球降水マップ「GSMaP」について>
JAXAでは、全球降水観測計画(GPM)主衛星を中心として、JAXA の水循環変動観測衛星「しずく」や米国や欧州から提供されるマイクロ波放射計データや静止気象衛星データを組み合わせることで、準リアルタイムで高精度高分解能の全球降水マップ 「GSMaP」 を提供しています。
「GSMaP」では、GPM 主衛星に搭載している日本が開発した二周波降水レーダ(DPR)データを基準として、複数の衛星データを統合することで上記を実現しています。2007年11月に「JAXA 世界の雨分布速報」として「GSMaP」を可視化するホームページを公開後、降水監視・洪水予測・干ばつ監視・農業等の様々な分野で「GSMaP」の利用が進んでおり、データを利用する登録ユーザは世界 150 カ国に広がっています。
「GSMaP」の詳細についてはこちら : https://sharaku.eorc.jaxa.jp/GSMaP/index_j.htm
※1:JAXA 航空技術部門 「航空機被雷の危険性予測」より https://www.aero.jaxa.jp/spsite/rensai/column/05.html
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