今週の新興市場は反落。経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」を前に神経質になるなか、米連邦準備制度理事会(FRB)高官からのタカ派発言もあり、米10年債利回りが週初から3%を超えて上昇。週半ばにかけて3.1%と2カ月ぶりの水準まで上昇するなか、週前半を中心に新興株も米ナスダック総合指数の大幅続落を受けて売りが先行した。ただ、パウエルFRB議長の講演内容はサプライズなしと見込む向きも多く、大幅な下落は週初に限られ、週後半の3日間は上昇するなど底堅い動きとなった。なお、週間の騰落率は、日経平均が-1.00%であったのに対して、マザーズ指数は-0.62%、東証グロース市場指数は-0.63%だった。
個別では、週間でANYCOLOR<5032>が+12.5%、サンウェルズ<9229>が+11.9%となり、時価総額上位銘柄の中では直近IPO(新規株式公開)銘柄が大きく上昇した。また、政府が水際対策を緩和する方針との報道を受けて、アドベンチャー<6030>が+15.2%と上昇、週間上昇率ランキングでも8位にランクインした。一方、JTOWER<448>が-8.0%、メドレー<4480>が-6.0%、プラスアルファコンサルティング<4071>が-10.3%と、先週まで好調に推移していた銘柄に利益確定売りが広がった。
■金利は再び上値を試す展開か、ジャパニアスなどがBB期間入り
来週の新興市場は軟調な展開か。金融引き締めが改めて警戒されるなか、週明けから売りが広がりそうだ。無風通過ないしは7月米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見と同様に、利下げペースの減速を示唆するハト派寄りの見解が想定されていたジャクソンホール会議でのパウエル氏の講演は想定を超えるタカ派な内容となった。パウエル氏は、物価安定のために短期的には企業や家計に痛みが伴うことは致し方ないとし、長期的な経済繁栄のために景気を犠牲にしてでもインフレ抑制を最優先とする決意を示した。また、ポール・ボルカー氏など歴代の議長を例に挙げ、過去の経験から、早急な緩和への転換はリスクが伴うとし、高水準の金利を粘り強く維持していく方針を示した。景気に配慮して来年半ばには利下げに転じると見ていた投資家が多かったが、こうした期待は完全に消失したといえる。
今週、米10年債利回りが3%を超えて上昇するなかでも、新興株が東証プライム市場の主力株に比べて下落率が小さかったのは、パウエル氏の講演で改めて来年の利下げ転換が示唆されると見込んでいたからと推察される。こうした期待がはく落したとなると、今後は新興株が相対的に厳しい売りに晒される可能性があろう。パウエル氏の講演後も米債利回りは幅広い年限でほとんど上昇しなかったのは疑問府が付くが、利上げによる金利上昇圧力を景気後退懸念が相殺した可能性がある。ただ、パウエル氏は労働市場の需給逼迫が極めて強いとも指摘している。来週末に米8月雇用統計が発表されるが、前回7月分は雇用者数と賃金の伸びがともに予想に反して加速する強い結果だった。8月分も強い結果となれば、景気後退懸念を抑えて金利に上昇圧力がかかる恐れはある。そうした中、金利感応度の高い、高バリュエーションの新興株が無風でいられるとは考えにくいだろう。
個別では、全般厳しい地合いが予想されるが、今期予想ベースで増収率と経常増益率がともに20%以上、かつPBRが5倍未満と過度に割高すぎない好業績銘柄に注目。具体的には、日本情報クリエイト<4054>、バリュエンス<9270>、CS-C<9258>、スローガン<9253>、ポート<7047>、インパクトHD<6067>、霞ヶ関キャピタル<3498>などに注目。
来週はジャパニアス<9558>が29日から、eWeLL<5038>が9月1日からブックビルディング(BB)期間に入る。なお、今週はファインズ<5125>、ポーターズ<5126>など新たに5社の新規上場が承認された。
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