2. 2020年8月期の業績見通し
SOU<9270>は2020年8月期業績について、売上高43,700百万円(前年比15.6%増)、営業利益2,650百万円(同18.3%増)、経常利益2,600百万円(同14.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,650百万円(同13.1%増)と見込んでいる。業界の環境は、引き続き市場の拡大が継続していくと予想されるものの、各企業の成長やサービスの多様化などを背景に競争の激化も続くと見られている。同社は仕入拡大に向けて買取専門店の出店を継続し、デジタルマーケティングによる効率的な集客、百貨店との協業など様々な施策を展開する予定である。また、成長戦略を背景に、グローバルプラットフォームの開発と国内「STAR BUYERS AUCTION」のオンライン化を開始する計画である。さらに、資産管理アプリ「Miney」では、他業種とのアライアンスも含めたジャンル拡充など機能の向上を目指す。
売上高は引き続き高伸長を見込んでいる。仕入れ面では買取専門店を11店舗以上出店する計画である。一方、国内オークション開催数については前期と同回数ではあるものの、「STAR BUYERS AUCTION」のオンライン化を進める方針である。加えて、「STAR BUYERS AUCTION」香港大会では、ジュエリーオークションの本格開催を予定しており、増収のけん引役となる見込みである。なお、今期は香港の伸びが大きくなると考えられること、15店近くの出店が期待できること、既存買取店の買取額も毎期少しずつ伸びていると思われることから、同社の売上高予想はやや保守的と言っていいかもしれない。香港の政治情勢はリスク要因の1つではあるが、現状、オークションへの影響は出ていないもようである。
売上総利益率について同社は改善を見込んでいる。グローバルプラットフォーム構築の中で海外からも参加可能な環境を整備し、国内外の参加業者の競争を刺激することでビット価格を上昇、ひいては売上総利益率の向上につなげる考えである。このほか、「STAR BUYERS AUCTION」香港大会での受託出品開始による手数料収入増加や、「THE EIGHT AUCTION」の利益率向上などを見込んでおり、2019年8月期に低下した売上総利益率を改善させる方針である。しかし、オンラインオークションへの移行開始期であること、2019年8月期同様に地金相場高騰に伴う低採算の地金販売の増加が予想されることから、2018年8月期の売上総利益率水準までは回復しない想定になっている。販管費については、新規出店に伴う地代家賃や人員の増加、事業拡大に伴う採用強化、買取強化に向けたWeb広告の増加などにより、やや増加の予想となった。しかしながら同社の場合、販管費額は期初の計画からあまり大きく上振れることがないため、売上高が上振れた際の限界利益は大きくなる傾向にある(下振れた際は政策経費などを抑制することができると思われる)。営業外収支以下では、2019年8月期に発生した為替差益を見込まない以外、おおむね2019年8月期実績を踏襲したものである。
2020年8月期以降の第2創業期では、新たな成長ステージへ
3. 中期成長イメージ
以上のように同社の業況は順調であり、国内の既存ビジネスだけでも中期的な成長は持続できると考えられる。しかし同社は、2020年8月期以降の第2創業期へ向けた成長戦略の中で、既存ビジネスをグローバルプラットフォームへ進化させた上、オークションを完全オンライン化する大変革を考えている。特に売上高の大半を占めるオークションをリアルからオンラインへ完全シフトする影響は大きいと思われる。例えば既存の業者の中には、オンライン化に対応しきれないものが出るというリスクもあるだろう。画面でなく実物を見たいという要求もあると推測される。しかし、リユース業界同様目利きが幅を利かしていた中古車オークションや、最近市場化してきた個人間のフリマやオークションにおける進化を見ると、信頼の獲得とともに利便性が評価され、既にオンラインが主力になっている。したがって、リユース業界もいずれオンライン化が進むということは理解されるだろう。もちろんそのためには、中古車オークションと同等かそれ以上の情報の正確性と信頼性が必要になる。その点で同社にはリアルオークションで培ってきた信用がある。以上から、グローバルプラットフォーム構築とともに、同社は成長が再加速する新たな成長ステージに入っていくと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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