1. サービス・事業内容
サクシード<9256>の事業は、教育人材支援事業、福祉人材支援事業、個別指導教室事業、家庭教師事業4つで構成されている。前2者が人材サービス、後2者が教育サービスに分類される。なお、家庭教師事業は、2023年3月期より教育人材支援事業からセグメントを分離し、個別指導教室事業とともに教育サービスの1つとなった。その教育サービスでは、個別指導教室事業で「個別指導学院サクシード」の教室を神奈川県内で展開、家庭教師事業では「家庭教師のサクシード」を運営、対面式及びオンライン式の2タイプの事業を行っており、いずれも自社ブランドでの展開となっている。
人材サービスでは、教育人材支援事業で学校や自治体、他社学習塾など教育業界向けに人材紹介・派遣事業及び部活動運営などの業務受託を、福祉人材支援事業で保育園や介護施設など福祉業界向けに紹介・派遣事業を行っている。人材サービスの特徴は、事業を教育分野と福祉分野という近隣の業界に絞り、職種まで細分化した多数の自社求人サイトを通じて登録者(求職者)を募集、登録者や求人企業の様々なニーズに対しきめ細かく最適なマッチングが可能になっていることにある。このため、登録者や求人企業の満足度は非常に高いと言われている。なお、福祉業界の人材サービスは既にレッドオーシャン化が進んでいるが、同社の場合は、教育機関周辺でシナジーやスケールメリットが期待できることから、他社に比べて収益化しやすいと言える。ただし同社も利益率は高いが安定感に若干欠ける人材紹介事業から、収益が安定している人材派遣事業へとシフトを進め、人材サービス事業全体での収益安定化を図っている。
収益性の高い「個別指導学院サクシード」
2. 個別指導教室事業
学習塾・予備校市場における2020年度の受講生数は2005年より増加傾向にある。これは、2008年に「脱ゆとり」教育へと学習指導要領が改訂されたことによって、学習量が増加し、学習塾ニーズが高まったことが要因と見られている。その後は少子化もあっておおむね横ばい推移の模様だが、シックスポケットに象徴されるように子ども1人当たりの教育費は増加しており、引き続き中学受験者数は右肩上がりの状態にある。また、生徒の若年化や非受験生の増加という傾向も現れてきている。
(1) 「個別指導学院サクシード」
個別指導教室事業では、「個別指導学院サクシード」と学習塾付き学童クラブ「ペンタスkids」を展開している。「個別指導学院サクシード」は、神奈川県内に26教室(2022年10月末現在)を展開する地域密着型個別指導教室である。小学校1年生から大学受験生までを対象に、学校の補習や受験対策、各種検定の対策など様々なニーズに応えた授業を提供、「すべての子どもたちに質の高い教育を」というポリシーの下、価格を低く抑えるため講師1人に生徒3人という授業スタイルを採用している。1対3の個別指導は、経済格差が教育格差になってはならないという起業当時の創業者の思いから、授業の質を落とさずなるべく授業料を低く抑えるためのシステムで、同社は個別指導の草分け的存在の1つと言うことができる。個別指導は集団授業では手の届きにくい生徒1人ひとりの進路や学習状況に応じたカリキュラムを提供でき、集団指導に比べて客単価が高くなる傾向がある。このため最近では、集団指導をメインとしていた塾が個別指導塾に鞍替えしたり、個別指導コースを新設したりする塾も多くなっているようだ。
ただ、単に個別指導にしたからといって、同社も生徒もメリットを簡単に享受できるわけではない。実際に生徒の学力が伸びなければならず、そのためには優秀な講師が必要となり、これはどの学習塾も抱えている課題である。しかし同社の場合、後述するように、自社内の人材サービスで教育関連の登録者を幅広く確保しており、他社学習塾や私立学校、公立学校などの自治体向けに講師や教員を紹介・派遣している。このため、「個別指導学院サクシード」ではローコストで数多くの優秀な講師を採用することができるのである。また、全教室が同社直営で、授業カリキュラムや講師のクオリティ、教室運営などを均一化できるため、どの教室でも生徒や保護者が満足するサービスレベルを維持することが可能となっている。近年は高客単価の中学受験コースの生徒も増やしている。
出店は、コロナ禍で一時的に抑制していたが、講師陣など競争力のある個別指導の仕組みを既に構築していることを背景に、2023年3月期に入って再開した。ドミナントエリアの神奈川に「個別指導学院サクシード」の出店を続けていくという戦略は今後も変わりないが、並行して、ニュータウンなど生徒の人口が増加しているエリアのある千葉や埼玉にも新たなドミナントエリアを形成していく方針で、長期的には全国展開も考えているようである。なお、「個別指導学院サクシード」の出店コストは、内装費等に多額の費用がかからないため、40ブース程度(1教室当たり在籍生徒数100人~150人)の標準的なモデルでは一般の小売や飲食店に比べて圧倒的に低くなっている。生徒数は出店から2~3年にわたってじわじわと伸びその後安定するため、一旦黒字化すると黒字を継続する傾向がある。
(2) 「ペンタスkids」
同社は「ペンタスkids」ブランドで、学童クラブの預かり機能に学習と習い事をパッケージしたハイブリッド型学童クラブのサービスを提供している(2022年10月末現在1校)。子どもたちを預かるだけでなく学習と習い事の機能をプラスすることで、教育意識が高く放課後の時間を有効に使いたい保護者のニーズを取り込んだ。内容は、毎日の学習カリキュラムのほか、英会話、プログラミング、体操、思考・表現ワークショップなどが含まれており、料金はやや高めとなるが、これらをオールインワンで提供している。また、学習塾が母体となって運営しているため、経験豊富な講師陣や個別指導教室で確立した指導ノウハウを活用することができる。こうした習い事のオールインワンや学習塾が母体であるという点が、他の学童クラブに対し大きな差別化要因になっていると考えられる。現在、共働き世帯の増加とともに急速に学童保育のニーズが高まっており、同社では「個別指導学院サクシード」出店エリアを中心に、2024年3月期以降も出店を拡大していく方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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