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2)事業構造の改善
株価のボラティリティが低い二つ目の要因は、事業構造の改善効果によるものです。かつてと比べて、事業構造が強固になっています。特に利益率が低いと赤字転落となる確率が高くなります。JALはかつて低収益率でした。再上場後は営業利益率は二桁あります。これだけで資本コストはかなり下がります。
事実、破綻前と再上場後では、JALの収益構造は全く違います。破綻前は1.5兆円規模の有形固定資産がありましたが再建によって半分以下になったのです。これが償却費用の減少をもたらしたため、収益性を改善させました。また、人員も大幅に減少したので破綻前5万人弱であった社員が再建後は4万人弱となりました。これらの固定費の削減が利益率を向上させたのです。再上場直後は、大きく減免された債務や絞られた資産によって、実力以上に固定費が低い状況が続きました。ただし、半ば「無理矢理」に圧縮したバランスシートと人員でしたので、徐々に、巡航速度で有形固定資産も人員も増えていくでしょう。その分、固定費は今後徐々に上がっていくはずです。
再上場後から利益率が年々下がっているのは収益力が落ちたからではなく、再上場直後には払うべき本来の償却費などのコストを払っていなかったからなのです。営業利益率はおそらく10%程度が定常的なJALの実力値と推定されます。20年30年で保有飛行機のポートフォリオが入れ替わればJALの減価償却費はおのずと上昇するからです。利益率の改善が期待できないため、JALの株価指標は今後も大きくは改善しないでしょう。
株主還元のユニークさが株価ボラティリティが低い要因
JALの意外に低いボラティリティの要因は主に6つあります。
1)株主還元の手法、「株主資本還元率」がとてもユニーク
2)事業構造の改善
3)ビジネスモデルの安定
4)優待利回り
5)ビジネス環境のよさ
6)バランスシートの改善
資本コストの低減は、経営者の経営課題の中でも最も重要な課題のひとつです。資本コストが低ければ、それだけ株価も高くなるからです。
1)株主還元の手法がとてもユニーク-上場企業の経営者は資本コスト低減のために積極導入を!
株価のボラティリティが低い理由の一つは株主還元のあり方です。株主資本総還元率とは自社株買いと配当支払いの総額の株主資本に対する比率のことですが、これをJALでは概ね3%にするという方針です。この手法は資本コストを下げるための大変優れた手法です。ブレやすい期間利益を基準とせず、ブレにくい株主資本を基準とします。結果として、配当が安定するのです。
株主資本の額は期間利益ほどは動きません。総還元率が3%であれば現状の配当が大きく下振れするリスクは小さいのです。これが単に配当性向だけの指針では、利益のブレによって配当が大きく変化してしまう可能性があります。減配になる企業の資本コストはそうではない企業のそれに比べて高いはずですから、私はJALの株主資本をベースにした還元手法を高く評価します。多くの他の日本企業にも取り入れてほしい考えです。
日本企業でこの株主資本還元率を採用している企業はまだ少数派ですが、明確に株価のボラティリティを下げる役割があるでしょう。
破綻前のJALの株価のボラティリティは30%程度でしたが、再上場後の株価のボラティリティは劇的に低下し、5年平均で20%程度です。経営者は資本コストを低減することに成功しています。
わたしの希望としては、総還元ではなく、配当のみを株主資本還元率の対象としてもらいたい。自社株と配当とでは、配当の方を優先してほしいと思います。理論株価では、そちらの方が株価は高くなるからです。
でも、そんな卑しさの中で、人は幸せになれません。充実感は得られません。人のためにいつも全力を尽くす。できることはやる。当事者として、責任を持つ。それが実は幸福への近道なのですが。
自社のエアラインを選んでいただいた顧客に感謝する。だからこそ、何かあれば、率先して顧客の困りごとを全力を尽くし解決する。それが生きがいにつながり、やりがいにつながります。こうした社員ひとりひとりの当事者意識がエクセレント企業の根幹をなすのです。JALの場合、トップが無報酬で利他のこころで経営に取り組むことで、「おや、こんどの経営者は違うぞ」と社員の心に火を灯すことになったのです。
大幅な人員削減とコストカットによる利益率の向上
もちろん、きれいごとだけではなかったのです。破綻したのですから、多くの社員、株主、債務者が泣きました。当時のグループ人員1/3にのぼる人員整理も断行しました。JALは多くの元社員や株主や債権者の多大な犠牲の上に事業再生を果たしたのです。
再生案により、大幅な人件費の削減を達成し、有形固定資産の評価減による減価償却費の大幅な削減をしたからこそ、短期の間に高い利益率が出せるようになった側面もあるのです。JALの破綻前の営業利益率はゼロ近辺でした。再上場後は15%程度でした。固定費がそれだけ下がったのです。しかし、飛行機の簿価が大きく切り下がりましたが、古くなった機種を新機種に入れ替えていけば簿価は上がり、費用構造は徐々に元に戻ります。それが近年のJALの利益率の低下傾向の要因です(再上場直後からみれば減価償却費は400億円弱悪化しています)。
経営破綻後、稲盛マジックで再生
かつて、JALは放漫経営から2010年に経営破綻をしてしまいます。山崎豊子の代表作のひとつ『沈まぬ太陽』に、あの痛ましい御巣鷹山の墜落事故の前後の会社の様子が生々しい「フィクション」の形で丁寧に描かれています。一言でいえば、無責任体制、悪い意味で官僚的な組織の会社でした。経営陣や政治家の私物と化してしまった。それがかつてのJALでした。
その後、無私の経営者である稲盛和夫氏が無報酬を条件にJALの再建に取り組みました。2013年に再上場しますが、まさに稲盛マジックと呼ぶしかない手法で再生を果たしたのでした。その秘訣は、社員のモチベーションの向上でした。
破綻までのJALはとても官僚的な組織でした。上からの命令を下が実行する形式的な組織でした。稲盛さんたち新経営陣は、その企業カルチャーと人心を一新したのです。一人一人の社員の誇りと使命感という無形の財産を大切にすることからスタートしたのです。
お客様から選ばれ愛されるためには、まずは社員が誇りを持って働ける組織でなければならない。
それが稲盛さんの考えでした。改革の成果が思ったよりもはやく出ました。組織は見違えるほど風通しが良くなりました。わたしの個人的な意見ですが、経営で重要なことは、社員がいかに「当事者意識」を持てるかどうかです。独りよがりの考えしかなければ、困っているお客さんがどうなろうが関係ない。なぜならば、自分の今月の給料は人を助けても助けなくても短期的な違いはありません。
だから、世の中は、どこをみても、見て見ぬ振りをする人が多数います。人間とは、とても悲しい生き物なのです。
原油価格低迷、ビジネスクラスならば空港のラウンジで飲み放題、食い放題
言うこと無し
低下価格の航空会社は安かろう悪かろうだ
自粛で巷には金がダブついておる
此れからは南半球以外の海外旅行はお勧めだ
だからJALは買い推奨だ
エコノミストの判断はいつも誤る
目標株価は3700円
ビジネスクラスならば手足を伸ばして眠れる
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