1. 事業内容
エルテス<3967>は、「リスクを解決する社会インフラの創出」をミッションに掲げ、リスク検知に特化したビッグデータ解析ソリューションを展開している。主力の「ソーシャルリスク関連サービス」は、SNSやブログ、検索サイトなどWeb上の様々なメディアに起因するリスクに対するソリューションを提供している。インターネットの普及やデジタルデバイスの進化により、利便性の向上と引き換えに様々なリスク(不適切な投稿等に伴う風評やネット炎上等)が顕在化するなか、ソーシャルメディアの監視から緊急対応、その後の対応まで、顧客のリスクマネジメントをワンストップで支援する独自のポジショニングにより高成長を実現してきた。最近では、情報漏えいなどを検知する「内部脅威検知サービス」(リスクインテリジェンス分野)への展開により、新たな成長軸も立ち上がってきた。また、2017年8月には戦略子会社※を設立し、需要拡大が予想されている「イベント安全サービス」(イベントセキュリティ分野)の本格展開に向けた体制構築に着手したほか、「デジタル信用調査」や本人認証技術を活用したアプリケーションの開発など新規事業にも取り組んでいる。
※イベントセキュリティサービスを提供する(株)エルテスセキュリティインテリジェンスのほか、国内外におけるデジタルリスクに関連する事業及びその周辺事業への投資事業を行う(株)エルテスキャピタルの2社を設立した。
顧客基盤は大手航空会社や食品、外食、ホテルを始め、メーカーや金融機関など幅広く、有力ブランドを持つ大手企業※を中心に累計650社を超える導入実績を誇る。無料セミナー等を通じた新規顧客の獲得と継続率の高さが同社業績の伸びをけん引してきた。特に、異物混入の疑いや従業員の不適切投稿など、ソーシャルリスクの影響を受けやすい外食や食品業界向けの売上構成比率が高い。もっとも、足元では、「内部脅威検知サービス」への展開などにより、BtoB型の大・中堅企業との取引も増えているようだ。
※資生堂<4911>、全日空(ANAホールディングス<9202>)、アサヒグループホールディングス<2502>、マツダ<7261>、サッポロホールディングス<2501>、日本航空<9201>、住友生命保険(相)、サントリーホールディングス(株)、キッコーマン<2801>、セブン銀行<8410>、ハウス食品グループ本社<2810>、永谷園ホールディングス<2899>、鳥貴族<3193>、すかいらーくホールディングス<3197>、江崎グリコ<2206>、NTTドコモ<9437>、伊藤園<2593>、ダイキン工業<6367>、富士急行<9010>、野村證券(株)、丸美屋食品工業(株)、デンソー<6902>、センチュリー21・ジャパン<8898>、YKK AP(株)、パーソルホールディングス<2181>、井村屋グループ<2209>、マルハニチロ<1333>、東急不動産ホールディングス<3289>、SBSホールディングス<2384>、JFEシステムズ<4832>、第一三共ヘルスケア(株)、アオキインターナショナル(株)、帝国ホテル<9708>、丸紅<8002>、東京メトロポリタンテレビジョン(株)、新菱冷熱工業(株)、(株)北陸銀行等(順不同)。
また、対象とするメディアはTwitter等のSNS(交流サイト)やブログ、ネット掲示板、ニュースサイトを中心に120以上に及ぶ。
事業セグメントは、ソーシャルリスク事業の単一セグメントであるが、主力の「ソーシャルリスク関連サービス」に加えて、新たな成長軸である「内部脅威検知サービス」や「イベント安全サービス」などにも注力している。
(1) ソーシャルリスク関連サービス
現在の成長をけん引している主力サービスであり、「コンサルティングサービス」と「モニタリングサービス」の大きく2つに分けられる。創業来の「コンサルティングサービス」は、ソーシャルリスクに関する危機発生後に、速やかに顧客が適切な対応を取れるようにアドバイスを行うサービスであり、リスクが顕在化している企業や組織に対しては、リスクの鎮静化に向けた緊急対応コンサルティングと事後のレピュテーション回復(及びブランド再構築)に向けたサービスを提供している。一方、「モニタリングサービス」は、ソーシャルリスクの発生を早期に検知及び把握するもので、24時間365日、Twitter等のSNSやネット掲示板といったソーシャルメディア上の投稿を分析し、リスクの予兆があれば緊急通知の実施や対応方法のアドバイスを行い、危険投稿がなければ日報で報告するサービスである(月報でのトレンド報告を含む)。同社では、創業来の主力である「コンサルティングサービス」から、リスク予防型で契約継続率の高い「モニタリングサービス」へのシフトを進めている。
(2) 内部脅威検知サービス(リスクインテリジェンス分野)
2016年2月期より本格的に開始したサービスであり、情報漏えいや不正会計など、内部脅威リスクを検知するサービスである。データ上に現れる「人の動き」を解析し、デジタルリスクの予兆を捉えるところに特徴がある。膨大な組織内部のシステムログや管理データから、同社独自のアルゴリズムによりリスクの高い行動パターンを認識し、危険度や緊急度の高いものは即時通知することで、未然防止につなげることができる。まだ、業績貢献は小さいが、「ソーシャルリスク関連サービス」とのクロスセル(顧客単価の向上)を含めて、順調に立ち上がってきた。
(3) その他
2017年8月に設立した子会社が手掛け、総合的なイベントセキュリティマネジメントを提供する「イベント安全サービス」、オープンデータから取引先企業の信用情報を分析する「デジタル信用調査」のほか、2017年3月に業務提携したCYBERNETICA(エストニア)の本人認証システム技術「SplitKey」を活用したアプリケーションの開発(スマートID※の導入や不正送金・不正アクセスなど金融犯罪の検知等)、デジタル分析領域のベンチャー投資事業など、今後の事業拡大に向けた新規事業にも注力している。
※ECサービスにおける一元的な本人認証システム(1つのIDで複数のECサービス等を利用できるもの)のこと
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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