ASIAN STAR<8946>は1979年に神奈川県に設立された不動産会社で、横浜と上海を中心に事業展開している。設立以来長年にわたって自社マンションブランド「グリフィンシリーズ」の開発・販売を主力とする不動産販売ビジネスを手掛けてきたが、現在は収益及び居住用マンション・新築戸建の販売、不動産管理及びその関連事業を行う総合不動産サービス企業へ転換している。東京証券取引所スタンダード市場に上場している。
1. 2023年12月期業績の概要
2023年12月期の連結業績は、売上高が前期比14.6%減の2,125百万円、営業利益が同10.8%増の53百万円、経常利益が同11.8%増の47百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同26.0%減の40百万円だった。売上高に関しては、不動産販売事業と不動産賃貸事業が減収だったことが響いた。不動産販売事業では建築資材の高騰などを背景に、適正な利益を確保するために開発を慎重に吟味したことなどにより販売実績が伸び悩んだ。一方、利益面に関しては、同社が注力する中国人富裕層向けの不動産仲介事業・不動産販売事業が順調に推移したことが寄与した。特に、不動産販売事業に関しては、海外富裕層向けのマンション買収再販事業が順調に進捗し、営業利益は2ケタ増となった。なお、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に計上した特別利益の反動で減益となった。
2. 2024年12月期業績の見通し
2024年12月期の連結業績は、売上高が前期比73.0%増の3,678百万円、営業利益が同76.2%増の94百万円、経常利益が同86.5%増の88百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同151.5%増の75百万円と増収増益を見込んでいる。引き続き主幹事業である不動産管理事業で安定的な収益獲得と新規の管理受託件数増加を目指しながら、不動産販売事業と不動産仲介事業の業績拡大に注力する。特に、日本の不動産に対する中国人富裕層の投資ニーズが旺盛であることから、中国人富裕層をターゲットにしたマンションの買取再販と大型物件の斡旋に注力し、業績回復スピードを加速させていく方針だ。都心部の物件を中心に取り組んでいく方針であり、タワーマンションの仕入れに関しては都心部の不動産情報に精通している企業と合弁会社を設立する。これにより、都心部での不動産ネットワークを強化していく。組織面でも、中国人富裕層向け買取再販専門のチームを立ち上げ、同事業に注力する体制を構築した。その他、不動産賃貸事業に関しても増収増益を見込んでいる。賃貸事業関連では、中国人留学生をターゲットにした新規事業の立ち上げも検討している。
3. 成長戦略
同社は、事業基盤である不動産サービス事業のさらなる強化拡大とともに、「付加価値創造事業分野」と位置付ける5分野(生活・娯楽(ライフスタイル)、医療・健康(ヘルスケア)、教育(エデュケーション)、観光(インバウンド)、エネルギー(再生可能エネルギー))における成長企業とのコラボレーションによるアジア展開を推進することで、企業価値・株主価値の向上を目指している。この方針の下、観光や医療ツーリズム分野で高まる外国人の日本旅行需要を見据えて、2022年7月に旅行事業会社ASIANSTAR LIFE CREATION(株)を非連結子会社として設立した。また、2023年7月には第三者割当による新株式発行により、400百万円の資金調達を実施した。「付加価値創造事業分野」において同社の事業拡大と企業価値向上に資する企業を選定し、アジア各国の事業パートナー及び各分野の成長企業と協働しながら積極的な投資を実行していく構えだ。
このほかにも、2022年5月に代表取締役会長兼社長に就任した呉文偉(ごぶんい)氏の下で、新規事業の創出を推進している。各社との戦略的提携を活用しながら中国人富裕層とインバウンド需要に対してサービスを提供していく方針である。足元では海外富裕層をターゲットにしたマンション買取再販事業を新たな収益基盤とするべく注力しているほか、中国人留学生向け賃貸サービスや中国の超富裕層向け不動産ファンド組成などの検討・準備を進めている状況だ。また、既存の不動産関連事業に関しても、さらなる効率化を追求し収益性を高める方針である。
4. 株主還元策
同社は収益基盤のさらなる強化を見据えて無配を続けているものの、安定的な収益を確保することで、将来的には配当を予定している。2022年1月には、株主優待制度「ASIAN STARプレミアム優待倶楽部」を導入した。保有株式数(5,000株以上)に応じて優待ポイントを贈呈し、ポイントは食品や電化製品など2,000種類以上の商品から交換できる。
■Key Points
・2023年12月期は不動産仲介事業・不動産販売事業がけん引役となり営業増益を確保
・2024年12月期は海外富裕層向けのマンション買取再販・仲介事業に注力
・代表取締役会長兼社長である呉氏の下で新規事業創出に注力
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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