1. 事業内容
日産東京販売ホールディングス<8291>の事業セグメントは自動車関連事業、情報システム関連事業、その他に3分され、自動車関連事業は新車販売、中古車販売、整備、その他に細分される。2022年3月期第2四半期における自動車関連事業の売上高構成比は96%と大半を占め、そのうち約半分が新車販売となっている。日産自動車と日産東京販売の関係は、日産東京販売が日産自動車から新車や部用品を仕入れて一般消費者などに販売するというだけでなく、EV(Electric Vehicle:電気自動車)やプロパイロット(pro-PILOT:運転支援技術)、e-POWER(日産独自のハイブリッドユニット)、4輪制御技術(e-4ORCE)といった先端技術車のPRや試乗会開催、急速充電器の拡充などを通じて、日産東京販売が日産自動車と消費者をつなぐ役割も担っている。
(1) 自動車関連事業
日産東京販売は日産自動車の新車を販売するほか、中古車の買取・販売、その他整備・車検などを行っている。もちろん取扱車種は日産車全車種である。新車を販売することで中古車販売の回転が良くなり、整備などのストックビジネスが積み上がるという安定したバリューチェーンを形成しており、新車、中古車、整備など売上バランスは取れているようだ。収益面では、整備は安定的な収益基盤、中古車の仕入れは新車販売への依存度が大きく、グループの収益をけん引するのは新車の役割ということになる。同社のシェアは長らく弱含んで推移してきたが、理由は、他社ブランド比で日産ブランドの新型車投入が少なかったこと、カルロス・ゴーン前会長の逮捕などイメージが悪化したことにある。しかしここ数年、後に詳述するが、日産自動車が新車の投入やイメージ戦略によって強烈に巻き返しを図っており、同社のシェアも上昇傾向となってきた。なお、ルノー車の販売は、現在、ルノー車専門の販売店5店舗を展開しており、ルノー車の全国販売シェアで12%(2019年度)、全国ディーラーでNo.1の販売台数という実績を誇っている。
(2) 新車以外の自動車関連事業
中古車販売については、2019年に子会社化したGTNETも扱っている。日産東京販売の中古車の扱いは新車の販売促進という側面もあるが、GTNETは中古車専業でスポーツカーをメインに買取・販売を行っている。高価なスポーツカーがメインなだけに、独自の厳しい品質基準を定めるなど安心して売買できる体制をとっている。店舗は北海道から九州まで全国に15店あり、車検センターも8拠点展開している(2021年10月末)。一方、スポーツカーを買取・販売するポータルサイトも運営しており、買取査定、中古車検索、車検の見積もりから部品の販売までを1つのサイトで行っている。車種は日産に偏らず、トヨタ自動車<7203>やホンダ<7267>などまんべんなく扱っている。
整備については、日産東京販売もストックビジネスの柱の1つとしているが、大規模総合自動車整備会社のエヌティオートサービスが、専業としての確かなサービス品質と最新鋭の設備によって板金・塗装や車検整備、納車整備などを行っており、グループの整備を集中的に扱うセンターとしても機能している。事業所は東京に8拠点、埼玉に1拠点ある(2021年10月末)。高級輸入車のアルミボディにも対応できる業界屈指の高い技術力を有し、車検整備41,559台(2021年3月期)、板金・塗装総台数17,393台(同)という実績を誇る。車検については、車検館とGTNETでも行っている。車検館は車検の専門店で、東京、神奈川、埼玉に11店舗のネットワークを展開している。全店が最新設備をそろえた指定工場になっており、国家資格を持つ検査員が顧客の持ち込んだ自動車を確かな技術で検査することをセールスポイントにしている。
このほか自動車関連事業では、損害保険・生命保険の代理店や車両輸送・登録代行業務、日産車をベースにしたキャンピングカー専門のディーラーなどを行っている。
同社は、20年以上の歴史があり高いシェアを誇る個人リース「P.O.P」も展開している。モノに対する価値観が所有から使用・シェアリングへと移る中、自動車の個人リースも急速に広がっている。中でも「頭金ゼロ・コミコミ・定額」の「P.O.P」は、特に自動車を所有するモノでなく使用するモノと考える消費者にとって、非常に利便性の高いサービスとなっている。また、同社にとっても、通常の買い替えサイクルが10年超であるのに対してリースは7割以上の顧客が3年で次の新車に乗り替えるため、販売効率の良いビジネスなのである。このため「P.O.P」は、同社収益を押し上げるドライバーの1つとして今後の成長が期待されている。
(3) 情報システム関連事業
同社の情報システム関連事業を担う東京日産コンピュータシステムは、JASDAQに上場する子会社で、全国の自動車ディーラーに向けて統合型マネージドサービス「ITte(イッテ)」を販売している。前述したように同社グループへの依存度が非常に低く、ほぼ独り立ちしている状態と言える。そのような東京日産コンピュータシステムが属するIT業界は、コロナ禍をきっかけとしたテレワークなど働き方改革の浸透により活況となっているが、社会全般のDXを背景にコロナ禍収束後も同様の傾向が続くと想定されている。このような事業環境の中、「最も安心してITインフラを任せられる企業」をビジョンに、顧客価値を創造するマネージドサービスカンパニーとして、取引先の持続的成長を支援するベストパートナーを目指している。また、社会全般のDXを背景に同社も、顧客やこれまで販売してきた自動車、様々な使用状況など、グループで集積したビッグデータをビジネスに生かしていくことが求められており、東京日産コンピュータシステムは心強い味方になると期待されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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