1.事業内容
日産東京販売ホールディングス<8291>の事業セグメントは自動車関連事業、情報システム関連事業、その他に3分され、自動車関連事業は新車販売、中古車販売、整備や車検などのその他に細分される。2021年3月期における自動車関連事業の売上高構成比は94.9%、営業利益構成比は88.4%と大半を占める。日産自動車との関係は、3販社が日産自動車から新車や部用品を仕入れて一般消費者などに販売するという関係がメインだが、日産自動車及び3販社は、後述するようなEV(Electric Vehicle:電気自動車)やプロパイロット(pro-PILOT:運転支援技術)、e-POWER(日産独自のハイブリッドユニット)、4輪制御技術(e-4ORCE)といった先端技術車のPRや試乗会開催、急速充電器の取付サポートなどにより、メーカーと消費者をつなぐ役割も担っている。
(1) 自動車関連事業
東京日産自動車販売、日産プリンス東京販売、日産プリンス西東京販売の3販社は、ともに日産自動車の新車を販売するほか、中古車の買取・販売、整備・車検などを行っている。各社とも、取扱車種は日産車全車種である。日産プリンス東京販売と日産プリンス西東京販売では23区と都下に販売エリアが分かれているが、東京日産自動車販売は都内全域をエリアにしている(8区を除く)。3販社は、1つのグループとして営業を続けることにより不必要な競争を回避する一方、互いに切磋琢磨し、ベストプラクティスを共有して補完し合うことで、事業の効率性を上げてきた。また、整備子会社のエヌティオートサービスの集中工場を活用したり、共同で物流子会社エヌティ陸送(株)を利用したりすることで、スケールメリットを生かすこともできる。今般の3販社統合により、そうした効率性やシナジーをより広範囲に発揮することができるようになる。
3販社の売上は、それぞれ新車、中古車、その他のバランスが取れているようで、新車を販売することで中古車販売の回転が良くなり、整備などのストックビジネスが積み上がるという安定したバリューチェーンを形成している。収益寄与の面では、整備は安定的な収益基盤、中古車の仕入れは新型車への依存度が大きく、グループの収益をけん引するのは新車の役割ということになる。しかし、ここ数年、同社のシェアは弱含んでいる。理由は、他社ブランド比で日産ブランドの新型車投入が少なくなっていたことにある。日産自動車の完成検査工程における不備やカルロス・ゴーン前会長の逮捕などによって、風評が全国の日産系ディーラーにも及んだことも一因と思われる。ただし、後に詳述するが、日産自動車は2021年3月期に入って強烈に巻き返しを図っている。なお、ルノー車の販売は、現在、日産プリンス東京販売の直営でルノー車専門の販売店5店舗を展開しており、ルノー車の全国販売シェアで12%(2019年度)、全国ディーラーでNo.1の販売台数という実績を誇っている。
(2) 3販社以外の自動車関連
中古車販売については、3販社及び2019年に子会社化したGTNETが扱っている。3販社での中古車の扱いは新車の販売促進という側面もあるが、GTNETは中古車専業で、スポーツカーメインに買取・販売を行っている。スポーツカーがメインなだけに、独自の厳しい品質基準を定めるなど安心して売買できる体制になっている。店舗は北海道から九州まで全国に15店あり、車検センターも8拠点展開している。一方、スポーツカーを中心としたポータルサイトも運営しており、買取査定、中古車検索、車検の見積もりから部品の販売までを1つのサイトで行っている。車種は日産に偏らず、トヨタ自動車<7203>や本田技研工業<7267>などまんべんなく扱っている。
整備については、3販社もストックビジネスの1つの柱としているが、大規模総合自動車整備会社のエヌティオートサービスが、専業としての確かなサービス品質と最新鋭の設備によって板金・塗装や車検整備、納車整備などを行っており、グループの集中センターとしても機能している。事業所は東京に7拠点、埼玉に1拠点ある(2021年5月末)。高級輸入車のアルミボディにも対応できる業界屈指の高い技術力を有し、車検整備41,559台(2021年3月期)、板金・塗装総台数17,393台(同)という実績を誇る。車検については、車検館とGTNETでも行っている。車検館は車検の専門店で、東京、神奈川、埼玉に11店舗のネットワークを展開している。全店が最新設備をそろえた指定工場となっており、国家資格検査員が顧客の持ち込んだ自動車を短時間で検査することをセールスポイントにしている。
このほか自動車関連事業では、損害保険・生命保険の代理店や車両輸送・登録代行業務、日産自動車をベースにしたキャンピングカー専門のディーラーなどを行っている。
同社は、20年以上の歴史があり高いシェアを誇る個人リース「P.O.P」も展開している。モノに対する価値観が所有から使用・シェアリングへと移る中、自動車の個人リースも2018年度から2022年度で市場規模が4倍になるという予測がある。中でも「頭金ゼロ・コミコミ・定額」の「P.O.P」は、特に自動車を所有するモノでなく使用するモノと考える消費者にとって、非常に利便性の高いサービスとなっている。また、同社にとっても、通常の買い替えサイクルが10年超であるのに対してリースは7割以上の顧客が3年で次の新車に乗り替えるため、販売効率の良いビジネスなのである。このため「P.O.P」は、同社収益を押し上げるドライバーの1つとして今後の成長が期待されている。
(3) 情報システム関連事業
同社の情報システム関連事業を担う東京日産コンピュータシステムは、JASDAQに上場する上場子会社で、全国の自動車ディーラー向け統合型マネージドサービス「ITte(イッテ)」を特徴としている。前述したように同社グループへの依存度が非常に低く、ほぼ独り立ちしていると言える。そのような東京日産コンピュータシステムが属するIT業界は、コロナ禍をきっかけとしたテレワークなど働き方改革の浸透により、ソリューションへの需要が高まっている。この傾向は、DXを背景に新型コロナウイルス感染症収束後も続くと想定されている。このような事業環境の中、「最も安心してITインフラを任せられる企業」をビジョンに、顧客価値を創造するマネージドサービスカンパニーとして、取引先の持続的成長を支援するベストパートナーを目指している。また、同社にもDXの風は吹き付けており、顧客や販売してきた自動車、様々な使用状況など、グループで集積した膨大なデータをビジネスに生かし、効果をあげている。今後、東京日産コンピュータシステムは、同社グループにとって心強い味方になると期待されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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