1. 2023年3月期の業績見通し
ウェーブロックホールディングス<7940>の2023年3月期の連結業績は、売上高で前期比16.2%増の24,400百万円、営業利益で同9.2%減の590百万円、経常利益で同34.1%減の595百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同225.2%増の2,130百万円となる見通し。売上高はマテリアルソリューション事業、アドバンストテクノロジー事業ともに増収を見込むものの、原材料価格高騰の影響を受け、営業利益は減益を見込む。なお、原材料価格の指標となるナフサ価格は70,000~80,000円/kl、為替は125円/USDを前提としている。
また、営業外収支が前期から249百万円悪化する計画となっているが、これは持分法適用関連会社であったWITの株式を2022年5月にすべてサンゲツに譲渡したことにより、前期に計上していた持分法投資利益237百万円がほぼなくなることが主因である。ただ、特別利益として投資有価証券売却益約2,528百万円を計上する見込みとなっているため、親会社株主に帰属する当期純利益は大幅な増益となる。
(1) マテリアルソリューション事業
マテリアルソリューション事業の売上高は前期比19.2%増の19,500百万円と2ケタ増収を見込んでいるものの、営業利益は同6.3%減の890百万円となる見通し。増収要因としては、2022年4月にイノベックスが子会社化したエイゼンコーポレーションの業績寄与が挙げられる。エイゼンコーポレーションは群馬県に本社を置き、主に土木工事や水道施設工事等を行う建設会社である。子会社化の目的は、重点戦略事業となる地中熱ビジネス※の拡大に向け、関連設備工事を受注できる元請事業者となる必要があったためだ。2021年5月期の売上高は978百万円、営業利益は15百万円の規模だが、2023年3月期は地中熱ビジネス(400百万円)が加わることで1,395百万円の売上を計画している。なお営業利益は、のれん償却後でも利益増に若干貢献する見込みだ。
※地中熱を利用した高効率エネルギーシステム「ヒートクラスター®」の設計・施工、販売事業。
顧客ターゲットについては、北関東に限らず全国をカバーしていく方針だ。高効率の空調システムが必要なビニルハウス農園を経営する農業法人や、公共施設、オフィスビル等の一般の施設も対象としていく。脱炭素社会に取り組む企業や自治体が増えるなか、地中熱を利用した高効率エネルギーシステム「ヒートクラスター®」の引き合いは増えているようで、売上目標である400百万円は達成可能な水準と同社では見ている。実際の工事は下請け企業を活用するため、施工能力について問題はないものと思われ、地中熱利用システムの構造計算を行う建築士や施工管理者の増員を図るべく、採用に注力している。なお、2022年3月期の地中熱ビジネスの売上高は27百万円であった。
その他のソリューションビジネスについては、アグリソリューションが前期に伸長した反動で微減を見込んでいるものの、ビルディングソリューション及びインダストリアルソリューション、リビングソリューション、パッケージングソリューションについては、いずれも値上げ効果で増収を見込んでいる。ただし、原材料価格高騰の影響により営業利益はいずれも減益となる見通しだ。同社では原材料価格高騰という逆風のなかで、マテリアルソリューション事業の収益基盤を筋肉質なものに変えていくため、各製品の収益性や付加価値について見直し、自社で継続していくべき製品であるのかも含めて社内で議論を進めていくことにしている。課題を抽出して改善策を打ち出し、市況が好転した際の収益回復力を高めていく。
(2) アドバンストテクノロジー事業
アドバンストテクノロジー事業の売上高は前期比4.9%増の4,900百万円、営業利益は同12.8%増の390百万円となる見通し。デコレーション&ディスプレー分野における金属調加飾フィルムは、北米リビアン向けに加え、2022年5月に発売予定であるGMのEV車「キャデラック・リリック」でも光透過エンブレムや内装パーツ等に採用されており、北米向けの売上拡大が見込まれている。中国向けについては上海のロックダウンにより足元の受注は減少しているものの、ロックダウンが解除されれば受注も急回復することが期待される。一方、高透明二層シートについても欧米自動車メーカー向けを中心に販売増を見込んでいる。金属調加飾フィルムについては、成長基盤強化のための投資も進めていく予定で、減価償却費も増加する見通しとなっている。
そのほか、医療用不織布のコーティングビジネスを中心としたコンバーティング分野については前期並みの売上を見込み、仕入販売品となる液晶ディスプレー用拡散板については減収減益の見込みとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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