同社では「連結売上高50,000百万円を達成し、世界のコンタクトレンズ市場でプレゼンスを発揮するための生産基盤の確保」を目標として、新中期経営計画を策定している。経営目標としては、2027年3月期に売上高41,000百万円、営業利益2,800百万円、営業利益率6.8%、EBITDA6,020百万円、ROE10.7%を掲げている。利益構造の改善により、営業利益ベースでの増益を継続することで、連結売上高50,000百万円を達成するための足場固めを行う。国内コンタクトレンズ市場は、コロナ禍から回復し再度成長を続ける見通しであり、生産力の増強を背景に既存商品の拡販と新規商材の投入を計画している。同社の中期経営計画では、生産力の引き上げや多品種少量生産への対応、国内外のロジスティックサービスの強化などの成長戦略を明確に掲げており、競争力の強化による持続可能な成長の実現に高い期待が持てるものと弊社では見ている。
1. 位置付けと主要施策
同社では、世界のコンタクトレンズ市場でプレゼンスを発揮するための生産基盤の確保を目標として、連結売上高50,000百万円の達成を掲げている。売上及び業容拡大の足枷となっている商品供給力の不足を補うため、積極的な設備投資を行い、世界に伍する生産能力の整備を行う。また、省人化生産を実現し、競争力を維持できる生産体制の構築を目指している。さらに、品質の向上を進め、安心安全を追求することも重要な目標である。コーポレートブランドの再構築による企業価値の向上や、環境経営の推進も計画に含まれている。人的資源の強化を通じた事業基盤の整備も重要な施策の1つである。
主要施策としては、「Made in Nippon」と「Japan Quality」のプライドを通じて、安全で高品質な製品とサービスを提供することを追求していく。生産力の抜本的引き上げによる収益力の強化を図り、国内外のマーケットに対応するサービスの強化と提供を行う。また、市場のニーズに合わせたモノづくりを推進し、内部基盤の強化・人材確保と育成を行うことも重要な施策である。SDGsの推進や安定した株主還元も主要な施策として掲げられている。
2.成長戦略
(1) 生産力の抜本的引き上げによる収益力の強化
生産力の抜本的引上げを通じて収益力の強化を目指している。まず、省人化投資による生産性の向上を図り、新たな製造施設の建設によって生産キャパシティを拡大する計画が進行中である。具体的には、2024年4月に竣工し、10月より本格稼働が開始した2号棟別館が加わったことで、既存の1~3号棟と2号棟別館を合わせて月産6,500万枚の生産能力を持つ。さらに、新製造施設の4号棟については2024年11月に着工しており、2026年1月の竣工に向けて進捗している。当初、4号棟の第一期計画では、月間生産枚数を1,000万枚増加させる予定であったが、商品供給の安定性確保と成長戦略の実現を視野に入れ、月間生産枚数を1,400万枚に拡大する方針に変更した。また、今後の市場拡張や製品多様化への対応を目的に、処理能力の強化と設備仕様の見直しを行い、その結果、総投資額は当初計画の131億円から173億円に増加した。この第一期計画が完了することで、同社の生産能力は現状の月産6,500万枚から月産7,900万枚にまで引き上げられる予定である。新製造施設の設計に際しては、極めて高いレベルの省人化生産体制を構築するために、導入する設備だけでなく、建屋から省人化を想定した工場設計を行っている。AIを導入し、製造・検査工程の自働化運転を実現し、最新のラインのノウハウを既存ラインに横展開することで、更なる省人化を進め、生産能力の向上を図る。
また、グループ内の生産ラインを活用し、更なる生産能力の向上を実現するとともに、海外市場に向けてはグループ会社を含む現地委託生産の多様化を図っている。原価低減を通じた利益率の向上にも取り組んでおり、製造工程の改善によって歩留まりを向上させるとともに、省人化により全体の設備稼働率を向上させている。省エネルギー設備の導入によりエネルギーコストを削減する施策も実施している。さらに、多品種少量生産への対応拡大を進めており、多様なニーズに応じた生産ラインの増設を行うことで、海外向け商品や乱視用コンタクトレンズの生産効率を向上させることを目指している。特殊レンズの商品化やOEM商品への受託生産の最適化を進めることで、更なる生産性向上と廃棄ロスの削減を実現しようとしている。
(2) 国内外のマーケットに対応するサービスの強化と提供
国内外のマーケットに対応するサービスの強化を重要視しており、同社の存在意義を発信し、多様なステークホルダーに共感されるコーポレートブランドを構築することを目指し、企業そのものの価値を高めている。この取り組みにより、企業認知度やイメージの向上が図られ、社会全体へのアプローチが実施されている。また、同社にシンパシーを持つユーザーを創出することで、セールスの円滑化を図り、社内エンゲージメントの強化により労働生産性とサービスレベルの向上を実現している。
「B to B to C」を意識した販売・デリバリーサービスの拡充にも取り組んでおり、オンライン発注システム「らくらくシステム」において新サービスを構築している。新たな定期・定額制サービスのリリースと、それに伴う管理用専用ソフトの開発・運用を開始し、ケア用品とのカップリングサービスの展開も行っている。また、国内外のロジスティックサービスの強化も進めており、国内外の在庫管理を一元化する体制を整備することで、在庫状況の同期化を実現し、販売機会と在庫ロスの削減を図っている。生産管理や在庫管理、国内外の受注管理を高度化し、ラストワンマイルサービスの強化や改善も進めている。さらに、96枚入りパックのエコ化推進も重要な取り組みとして位置付けられている。加えて、各国に対応した施設向けの啓発ツールも作成しており、同社製品の安全・安心な装用のために各国のレギュレーションに沿ったツールの作成と配布を実施している。これらの取り組みにより、国内外のマーケットにおいて競争力を強化し、持続可能な成長を実現することを目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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