日本ライフライン<7575>の品目領域は、リズムディバイス、EP/アブレーション、外科関連、インターベンションの4つに大別される。売上構成比は2019年3月期で、リズムディバイス12.9%、EP/アブレーション50.7%、外科関連25.8%、インターベンション10.7%となっている。
1. リズムディバイス
リズムディバイスでは、不整脈治療用の植込み型の医療機器を扱っている。主な商品は心臓ペースメーカ、ICD(植込み型除細動器)、CRT-D(除細動機能付き両心室ペースメーカ)など電気刺激によって心臓の動きを正常に保つ医療機器である。そのほか、AED(自動体外式除細動器)なども扱っている。リズムディバイスはほとんどが仕入商品であり、心臓ペースメーカと関連商品について独占販売契約を締結したMicroPortから供給を受けている。MicroPortは、徐脈(脈拍が正常よりも少ない)の症例に使用される心臓ペースメーカを得意としている。しかし、これまで特に頻脈(脈拍が正常より多い)分野でのMRI対応の遅れや遠隔モニタリング装置の供給力不足など、製品開発力の面で課題があった。また、CRM(Cardiac Rhythm Management:心調律管理)市場では、頻脈の治療に使われるICDなどのニーズが増している。このため同社は、MicroPortとの独占販売契約を2019年8月31日の契約期間満了をもって終了することを決定、代わって、ボストン・サイエンティフィック ジャパン(株)と、Boston Scientific(米国)の製造するCRM関連製品に関して日本国内における長期の独占販売契約を締結、2019年9月より販売を開始する予定である。
Boston Scientificは世界最大級の医療機器メーカーで、同社が長年の課題としていた、頻脈治療領域において優れた医療機器を有している。このため同社は、今回の契約によりCRM全域を十分にカバーできることになったため、販売規模拡大や販売戦略高度化につながると期待される。また、Boston Scientificは、既に日本国内に事業拠点を展開、国内の医療関係者との緊密なネットワークを築いてきた。しかし、一貫した販売戦略を立案・実行するため、2019年9月以降はCRM関連の販売体制については同社に一本化し、同社が独占的に販売を行うことになった。これに伴い、同社は日本国内におけるCRM製品の取り扱いに関して、ボストン・サイエンティフィック ジャパンから営業人員を引き継ぐことになっている。特に、ボストン・サイエンティフィック ジャパンがこれまで培ってきた専門知識を有する経験豊富な人材から、徐脈より高度な専門知識が求められる頻脈治療領域の製品群の営業支援を継続的に受けることで、早期に販売体制の構築を図るとともに、患者や医療関係者への安定継続的なフォローアップを可能にする方針だ。加えて、Boston Scientificの製品パイプラインを確保することによって、中長期的にCRM事業における継続的な成長が期待される。ただし、2020年3月期は、MicroPortからBoston Scientificへの移行期にあたり、2019年8月までは医療機関の買い控え等の影響から、収益面では踊り場となる見込みである。
引き続きAF症例数は高成長
2. EP/アブレーション
EP/アブレーションでは、不整脈検査・治療用のディスポーザブル式の電極付きカテーテル等を取り扱っている。2019年3月期のAF症例数は前期比17%増であり、近年、急速な伸びを続けている。なお、カテーテルとは中空の柔らかく細い管であり、皮膚の表面から血管に挿入して治療を行う医療機器を広く指す。
EPカテーテル(自社)は心臓内で電位を測定し、不整脈の原因となっている部分を特定するための電極の付いた細いカテーテルのことである。心臓の中の様々な部位を検査できるよう、先端のカーブ形状や電極の数・位置、細さなど種類が豊富にある。また、手元のグリップレバーで先端をカーブさせるシングルディレクショナル(片側に曲がる)タイプとバイディレクショナル(両側に曲がる)タイプがあり、それぞれに様々なカーブのバリエーションがある。アブレーションカテーテル(自社)は、頻脈の原因となっている刺激伝導経路を、高周波電流で局所的に焼灼して治療する電極付きカテーテルである。EPカテーテルと同じく、心臓の中の様々な部分を焼灼できるよう種類が豊富にある。また、イリゲーションカテーテルはアブレーションカテーテルの1つで、カテーテルの先端に生理食塩水を射出させる穴が開いており、先端の電極を冷却しながら焼灼を行うことで体内での血栓の発生を軽減する機能を持つ。
心腔内除細動カテーテル(自社)は、アブレーション治療中に発生した心房細動などに対し、心臓内で除細動を行うシステムである。体外からの除細動に比べて低いエネルギーで効果があるため、より低侵襲(患者の身体的負担を小さくする)に行うことができる。心房細動に対するアブレーション治療は、特に致死率が高い左房と食道が貫通する食道ろうを始め、食道炎や食道潰瘍といった合併症の発生率が、その他のアブレーション治療に比べて高くなる。食道温モニタリングシステム(自社)は、アブレーション治療中に連続的に食道温度のモニタリングを行うことで、このような合併症の発生を防いでいる。2018年7月に上市した内視鏡アブレーションカテーテル「HeartLight」は、内視鏡を内蔵したバルーン型のアブレーションカテーテルで、治療目的部位である肺静脈付近の心筋にバルーンを密着させ、内視鏡で直視しながら出力調整可能なレーザーを照射、異常な電気回路を焼き切ることにより、不整脈(心房細動)の根治治療を行う。画期的なものだったが、競合製品に比べて手技時間のかかることがネックとなり、出足が想定ほどにはならなかった。立ち上がりはややゆっくりとなったが、同社は手技を指導できる医師の十分な確保と販売施設数の拡大により、拡販を計画している。また、手技時間を大幅に短縮できる「HeartLight X3」を2022年3月期には投入する計画になっており、この次世代モデルは販売開始後、売上増加に大きく寄与する見込みである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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