選挙関連ビジネスを中心に既存事業を伸ばすことに注力するのは言うまでもないが、今後は特にメディアコンバート事業、業務用ろ過フィルター事業、印刷システム機材、金融・汎用システム機材、選挙システム機材の5分野に注力して業績を伸ばす方針だ。これら事業の進捗状況は以下のようになっている。
1. メディアコンバート事業
以下のような要因で、需要サイドからもメディアコンバート事業の拡大が期待できる。
(1) 民間企業の需要
民間企業では、コロナ禍の影響で在宅勤務が急増し、テレワークへの移行が進んでいる。テレワークの環境整備が進むにつれて、文書や資料の電子化需要が拡大した。アフターコロナでもこの流れは継続すると予想されている。さらに以下のような法的整備の面からも、文書のデジタル化は必須となってくる。同社ではこれらの需要を取り込むべく、営業活動を強化している。
a) 業務効率向上のためのIT化進展=財務・税務書類:電子化文書で保存可能
b) 「e-文書法」施行
c) 企業改革法(日本版SOX法)、個人情報保護法の施行:文書管理の強化
d) マイナンバー制度の運用
(2) 官公庁・自治体の需要
また、官公庁・自治体市場においても、「デジタル庁」の新設など政府が行政のデジタル化に向けて積極的な取り組みを進めており、文書や図面、資料などの電子化需要の拡大が見込まれている。政府の発表では、2026年度を目途に公文書の管理は全面的に電子化する目標となっている。実際には、官公庁や各自治体の職員が作成する文書はほぼ紙のため、そのまま紙で保存されているが、それらを電子化することで、分類や整理をする手間が大幅に省けるようになるため、大きなメリットがある。よって、行政のデジタル化推進のため、文書などの電子化に対しては優先的な予算が見込まれており、同社としても積極的に営業活動を展開する計画だ。
また民間・官公庁・自治体に共通した流れとして、「働き方改革」によってオフィス移転が増加している。これに併せて、保管文書の電子化需要が拡大しており、これも同社のメディアコンバート事業にとっては追い風だ。
2. 業務用ろ過フィルター事業
同社は、富士フイルムの業務用ろ過フィルター「ミクロフィルター」の販売代理店事業を展開している。
富士フイルムのミクロフィルターはこの市場では後発組(先発は主に外資系企業)であるが、独自の非対称膜構造による優れたろ過機能やロングライフ(長寿命)をセールスポイントに着実に販売を伸ばしている。同社の事業は2018年1月にスタートし順調に拡大してきた。残念ながら2021年3月期にはコロナ禍の影響により売上高は落ち込んだが、2022年3月期の売上高は、647百万円(前期比20.0%増)と回復し、進行中の2023年3月期は723百万円(同11.7%増)が見込まれている。特に、需要がこれまでの食品・飲料向け中心から、半導体向けなどのエレクトロニクス業界向けに広がりつつあるのは注目に値する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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