新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下で、同社には思わぬ影響があった。
「今回の事態で、飲食業界向けにテイクアウト用の容器の引き合いが増えたり、当社のPB商品のマスクや業務用の消毒液が売れたりすることは想定していませんでした」と語るのは下島和光(しもじま わこう)社長だ。「当社の扱う商品が幅広く、様々な業種のお客様に浸透していることを痛感すると同時に、『社会に貢献する』という当社の経営理念を図らずも実行することとなりました」
大正9年(1920年)、墨田区向島に包装用品問屋「下島商店」を創業。今年1月に100周年を迎えた。戦後すぐに、繊維問屋の立ち並ぶ日本橋横山町に1号店を開店し、衣料用の包装資材を販売した。下島社長はその店舗の2階で幼少期を過ごした。4代目社長、創業家としては3代目である。40年前に現在の台東区浅草橋に本社を移転した。
現在取り扱う商品は、包装紙、紙袋、紙器、レジ袋、リボン、ギフトシール、食品包材、文房具、学童用品、事務機器、商品POP、慶弔袋、オフィス用品など幅広い。下島社長によれば、業種の多様性、商品の幅広さこそ同社の強みのひとつだという。ギフト包装、店舗の装飾品にも強みを持ち、専門店を展開し、全国でラッピングの講習会なども行う。
転機の1つは、生花・園芸業界、食品流通業界向けに事業領域を拡大した1990年代だった。時代のニーズに合わせ、紙袋からポリエチレン製のレジ袋へと包装や容器の素材が大きく変わった。現在では環境保護の観点からレジ袋の有料化やリサイクル法など、同社のビジネスにとっては逆風にも思える。
「ポリエチレン製のレジ袋から紙袋に戻るかというとそれほど単純ではありません。お客様の求める環境負荷低減ニーズに合った商品を提供していきます。一方で、今回の新型コロナウイルス禍で衛生面から製菓やパン屋さん向けに個包装用のニーズも高まってきています。ピンチをチャンスと捉え、環境を通じて社会に貢献し、事業の拡大を図っていきたいと考えています。」
事業は大きく業者向け営業販売と店舗販売の2つに分かれる。売上の73%が営業販売で、店舗販売が27%だ。店舗販売は全国で展開をしているが、このところEC(インターネット通販)に押され気味だ。
そこでシモジマでは2000年に自社ECサイトを開設しているが、2018年に実店舗とインターネットの統合を掲げ、ECサイトを全面リニューアルし、包装資材業界では初となる「シモジマ型オムニチャネル構想」をスタートした。現物を確認できるサンプルサービスや、ラッピングの講習会など、実店舗でしかできないことを顧客に体験してもらい、個別対応やクレーム対応にもきめ細かく答えると同時に、インターネットでの受注に結び付ける。
今後の重点領域は、工場や物流などの工業向け包装資材への進出だ。直近では、その分野に特化している2社をM&Aした。
「お客様のニーズに応じて何でも提供する姿勢が、今回のような危機にも耐え、100年続いてきた理由と言えるかもしれませんね」と下島社長は笑顔で語っていた。
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